髭膝(R18)




シャツのボタンを外す手が震えそうだ。しかし、姉の手をわずらわせるわけにはならない。

さあ、自分でお脱ぎ? いいこだから、できるね?
ああ、そんな声で誘惑しないで。はやくはやくと、身体が急いてしまう。一番下のボタンを外す。そのままシャツを脱ぎ去る。姉と比べては物足りない胸を、控えめなレースがあしらわれた白の下着が包んでいる。
「あは、かわいい」
顔が熱くて、目の奥が熱くて、身体はもっと熱い。羞恥に俯きながら、下着のホックを外そうとする。しかし、それは遮られた。
「ここからはお姉ちゃんに任せてよ。恥ずかしがるおまえの顔が見たかっただけだから」
「あっ、姉者……!い、意地が悪いぞ」
「ええ、意地悪されるの好きでしょ?それにね」
ぐっと腰を寄せられ、すらりとした姉の脚が膝丸の脚を割り、タイトスカートの中に手が潜り込む。膝丸は慌てて姉の手を掴むが、もう片方の腕に肩を押され、シーツの上に押し倒された。同時に唇を塞がれると、制止の声も出ない。布越しにそこを擦られ、湿り気を帯びたショーツからじわりと愛液が染み出した。
「んっ、んう……っ!」
「ん……ふふ、すごい、濡れてるよ?」
くちゅくちゅと小さな音が聞こえ、膝丸は羞恥と刺激にいやいやと首を振る。腰までずり上がったスカートは、もはや衣服の意味をなさない。
「やぁ、だっ、姉者……!」
「シャツを脱いだだけなのにねぇ、僕に見られてそんなに興奮した?」
耳元で囁く声は甘く艶を帯び、膝丸はもうたまらない。きゅんと腹の中が疼き、愛液が溢れ出すばかりだ。
「あぁ、あ……! それ、やっ、いやだ……ッ!」
布の上から陰核を引っ掻かれ、何度かそれを繰り返されると、いとも簡単に果ててしまう。びくびくと跳ねた身体は余韻を残したまま不規則にぴくりと動き、膝丸は目元を覆って鼻をすすった。
「ありゃ……怖かったかい? よしよし、泣かないで」
「泣いて、ない……ただ、姉者が、いきなり、んぅ……」
先ほどよりも深く、やわらかなキス。弁解は聞いてもらえない。舌を合わせ、絡み、蕩けるように甘い渦の中に落ちてゆく。
これから始まることも、知らないで。



「あね、あねじゃ、あ、あっ、も、やめ、」
「僕もかわいい妹にこんなことはしたくないんだけどね。答えて、膝丸?」
胎内に埋まった細い指先が、膝丸を犯す。膝丸、耳元でそう呼ばれ、また果てた。陰核を親指で捏ねられる。過ぎた刺激に涙が溢れて止まらない。
一糸まとわぬ姿の膝丸とは対照的に、髭切は首元のリボンひとつも乱していない。一方的な行為。抵抗しようと思えばできたのかもしれない。けれど、そんな思考は、母親の腹の中に置いてきた。
はずだった。
「最後にあの子に会ったのはいつ?」
「………もう、覚えて、ない」
「うそつき。悪い子は好きじゃないなぁ」
「やああッ、あ、ぅ、ほんとう、に」
「大体予想はつくけど、おまえの口から聞かなきゃ意味がないんだ。素直におなり?」
「姉者に嘘など、つけ、な、あっ、あぁ、また、また、」
「うん、いってからでいいよ」
「ああああっ」
くちゅくちゅとわざと音を立て、二本の指が、何度目かの絶頂を与える。膝丸の身体に変化が訪れると、髭切の口元が笑った。いや、いやだ! 髪を振り乱し、シーツを握り締めた膝丸は、がくがくと腰を震わせる。愛液ではない透明な液体が小水のように溢れ出て、髭切の手にも、服にも飛沫がかかった
「ごめ、ごめ、なさ、あぁ、ああ……!」
うそだ、うそだと膝丸は泣いた。粗相をしたのだと思ったのだろう。それでもいいと、髭切はまた、膝丸の中を抉る。
「ほら、言わないと、また僕の服が汚れちゃう」
あの子に会ったのは。
「ううっ……うぅーーッ……」
今剣に、会ったのは?
「……っは……半月、まえ……」
「へぇ、そっか。はー、おまえも頑固だねぇ。時間がかかったけど、いいこには、ちゃあんとご褒美をあげるよ」
髭切は膝丸をぐずぐずの快楽から解放し、真っ赤に染まった目元に軽く口付ける。汚れた服などどうでもいいとばかりに、リボンを解いて脱ぎ捨てた。



温く設定したシャワーがさあっと湯を降らし、淡い湯気が立つ。一緒にお風呂に入ろう。たったそれだけの褒美に、ああまでされた妹は喜ぶのだ。
「さ、おいで。背中を流してあげる」
「姉者にそのようなことは、むしろ俺が」
「そんなにフラフラで? ま、僕のせいだけど」
「姉者……!」
はいはい。耳まで赤くした膝丸を椅子に座らせ、ボディソープのポンプを押して手に泡を出す。もちろん背中を流すなんて嘘だ。
「ひんっ」
油断していたのであろう、膝丸の胸を泡で包み、頂を摘んだ。そのまま揉みしだくだけで指が突起を擦るようで、大層気持ちが良さそうだ。
「ぁ、んっ……っ、う、うそつき、」
「最初のうそつきはおまえだよ?」
「ーーっあぁん……!」
片手で腹を撫で、散々弄ってぷくりと膨れた突起に泡を塗りつける。思いのほか良い反応に気を良くした髭切は、ぱっと思いついたようにシャワーヘッドを手に取った。
「脚開いて、ここ、自分で持っててね」
「え……っ」
脚を開かせたそこへ、シャワーの湯を当てる。仰け反った膝丸の背中を支えるついでに、もう片脚も広げさせた。ごぽ、と排水口が水を吸う音がする。
「どこかなぁ」
「ひっ、やぁ、湯が、な、なかにッ」
「ナカに入っちゃうって? エッチだなぁ、僕の妹は」
「やだあっ……ッア、」
ぴん、と脚が引き攣る。ここか。良い場所を探してシャワーを傾けたり回したりするうちに、当たったようだ。少しだけ水圧を強くして小刻みに揺らすと、かたかたと脚が震える。
「気持ちいいんだ?」
「ひあっ、あっ、あっ、ダメ、あねじゃ、こわい、こわいいっーー」
ぷしゃあ、とシャワーに負けない勢いで潮が吹き出し、弧を描いて床の湯と混ざる。あーあ、とわざと落胆の声をかければ、何度も謝罪が返ってきた。
「ご、めん、なさい、ゆるして、あ、姉者……っ」
「ダメだなぁ」
もっと虐めたくなっちゃう。


ベッドで寝息を立てる妹の頭を撫でながら、煙草を咥える。ああ、かわいい妹。僕の気も知らないで。

あれは三日月の差し金だと、嘘を教えてやらなくちゃ。