追加緩和、今すぐ検討しているわけではない=黒田日銀総裁

追加緩和、今すぐ検討しているわけではない=黒田日銀総裁
 5月15日、黒田東彦日銀総裁(写真)は午前の衆院財務金融委員会で、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれた状況になれば追加緩和の検討を行うという従来の考え方を繰り返した。写真は都内で2016年5月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 15日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は15日午前の衆院財務金融委員会で、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれた状況になれば追加緩和の検討を行うという従来の考え方を繰り返した。その上で「追加緩和はモメンタムが失われる状況になった時の話で、今すぐ追加緩和を検討しているということではない」とした。前原誠司委員(国民)の質問に答えた。
米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化プロセスを停止しているものの、現時点で、緩和するということではないとした上で「リーマン・ショック後のような状況とはかなり違うと思っている」と述べた。
ただ、米中貿易摩擦が長期化するなどリスクが顕在化し、日本経済に影響が出て物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれることになれば「当然、追加緩和を検討していく」と述べた。
緩和の手段については、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速などが考えられるとし「効果とともに金融仲介機能や市場機能に及ぼす影響もバランスよく考慮する必要がある」と述べた。政策のコストとベネフィットを比較考量しながら「さまざまな手段を組み合わせて対応することも含めて、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していく」とした。
また、現時点では「すぐに物価安定目標が達成される状況にはなく、しばらくは強力な金融緩和を続けることが必要」とした。
<財政ファイナンスで大幅インフレ、歴史の教訓>
MMT(現代貨幣理論)に関連して、黒田総裁は「財政ファイナンスで大幅なインフレが生じて、国民が大きな負担を負うことは内外の歴史の教訓」とし「日本を含めた先進各国では、中央銀行による財政ファイナンスは認められていない」と指摘した。
財政ファイナンスがハイパーインフレにつながる要因に関して、総裁は「通貨安がハイパーインフレの原因となり結果となる大きな要素」とした。また、無制限の財政拡張で需要超過となりインフレを引き起こすとも指摘した。
黒田総裁は「物価はいろいろな要素で影響される。常に内容、影響の持続の度合いを丁寧に見極めて、適切な対応を取る」と述べた。
例えば、原油価格が暴騰し、輸入物価が上がることでインフレとなった場合、「一切物価安定目標を超えてはいけないとすることが適切とはいえない」とした。一方で「財政や通貨の信認が失われ、将来のインフレを予想させて為替が下落する場合、国内的な要因。それによる輸入物価の上昇を認めるわけにはいかない」とした。
*内容を追加しました。

清水律子

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