音楽は、苦痛や疲労から気をそらせることによって運動を後押しする効果がありますが、どの運動に対しても効果があるわけではありません。その人の個性や行うスポーツによっては、気を散らすものは省いたほうがいいこともあるのです。トップクラスのランナーであるAdharanand Finn氏が、Guardianにロックンロールハーフマラソンにおける音楽の効果について書いています。彼は音楽が効果的だとは考えていませんが、他の多くの参加者達は気に入っていました。スポーツ心理学者のCostas Karageorghis氏は次のように説明しています:

Karageorghis氏は言います、「トップクラスのアスリートは、たいてい『アソシエーター』であり、つまり走っているとき、自分の内面に集中する傾向があります。その他のランナーの多くは『ディソシエーター』(もしくはその2つの中間)なのです。つまり、トップアスリート以外の人々は、刺激や、自分の身の回りの事象から気をそらせてくれるものを求めているということです。

音楽を含む気晴らしは、ディソシエーターにはありがたいものでも、アソシエーターにとっては最高のパフォーマンスを発揮する邪魔になることがあるのです(レベルが上がるにつれて、ディソシエーターはアソシエーターのような個性や戦略を吸収する必要が生じてくるかもしれませんが、それは別の機会に語ることにします)。ですから、趣味で走る人々にとっては、基本的に音楽は邪魔になるより効果的であることが多いのです。

行うスポーツのタイプとも関係があるかもしれません。音楽はランニングやサイクリングのような運動、つまりペースを調整するのがメインのスポーツに役立ちます。つまり、成績を上げるには音楽の効果でペダルをより早く踏めれば良いのです。いっぽう、もっと複雑なスポーツの場合、音楽は気を散らせすぎてしまいます。この考えに関する研究は多くありませんが、スイスのクロスフィット・ジムで行われたある研究がこの考えを支持しています。そこでは、参加者がタイムを計って懸垂、腕立て伏せ、スクワットを行う『Cindy』という運動を行いました。調査員が驚いたことに、クロスフィット参加者はAC/DC (ジムで特に気に入られている曲)のプレイリストに合わせながら運動を行うよりも、黙々とやったときのほうが多くのラウンドを行うことができたのです。

音楽が役に立たなかったのはなぜでしょうか。おそらく、そのエクササイズは適切なフォームを取るのにランニングよりも多くの注意力が必要だから。そして、参加者がもう1ラウンドもしくは2ラウンド行えるか判断するには、自分の疲労度を正確に判断する必要があったからでしょう。そういう観点では、音楽が疲労から気をそらしてしまうと、プラスよりもマイナスの効果を及ぼすかもしれないのです。

Does Music Help You to Run Faster?|The Guardian

Beth Skwarecki(原文/訳:コニャック

Photo by Kai Chan Vong.