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色々ネタ置き場(主にRKRN)。 主に二次創作・夢小説系。ごく稀にオリジナルもあるかもしれない。。。
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猫の日ネタ。2012です。

主に五年。
竹孫・鉢雷?

cookieさんがTwitterで「猫の日ネタない?」と聞いてきたので「猫になった生徒視点で云々」って答えたら「そのお題で二人とも五年縛りで書こうぜ!」と来たんでこんなんなりました。


cookieさんのはこちら竹孫と双忍です。うん。愛の力だね。


ちょっとだけ手直した。
これの次浦+綾も書いてみたい。

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 六年長屋の一室で、古い文献を読みながら伊作は薬瓶を手に取る。
「…えーと、これを二、三滴入れたら粉末状に…と」
 薬瓶を傾けて乳鉢に入っているドロリとした物体に振り掛けようとした。が、腕が薬棚に当たり、上に置いていた書物や巻物の類いが落下して、伊作の脳天に直撃する。痛みに思わず薬瓶を落として、規定以上の液体が乳鉢に流れ込み、乳鉢からブワリと灰がかった白い煙が辺りに広がった。口布をし、さらに口布の間に空気を清浄にする為の仕掛けを施していた伊作は仮にこの煙が毒煙だとしても平気だが、このまま煙を部屋の中に蔓延させたままは頂けない。伊作は部屋の戸を勢い良く開けて煙を外に逃がした。

+++

「ジュンコ、何で六年長屋に入り込んだんだ?勝手に外出しちゃダメじゃないか」
 赤い蝮を撫でて孫兵は優しく諭す。シュー、と鳴きながら舌をチロチロと出すジュンコは孫兵を見上げゆっくり頭を下げた。そんなジュンコを愛しそうに撫でて孫兵は顔を上げると、不思議そうに首をかしげた。
「……先輩、なぜ六年長屋に?」
 孫兵は目の前からやって来た不破雷蔵の顔をした人物が当人なのかいつも顔を借りている鉢屋三郎なのか諮りかね、あえて名前をつけず"先輩"で対応すると、彼は面白くなさそうな表情を見せた。鉢屋先輩の方か、と心の内で呟く。
「…伊賀崎。雷蔵か私か判断しかねて名を呼ばないのは懸命だが、私が楽しくないだろう。ついでに善法寺先輩が私の読みたい本を延滞していると雷蔵に聞いたから取りに来た」
 と、隣にある部屋を指した。二人はちょうど伊作の部屋の前で立ち止まっていたのだ。
「そうなんですか。竹谷先輩はお部屋にいらっしゃいますか?」
「私が図書室に行く時にはいたな」
 そうですか、ありがとうございます。と孫兵は三郎の答えに返事を返そうとしたが、それは言葉にならなかった。ぶわりと部屋の中から煙が吹き出し、二人の視界が暗転する。次の瞬間には手足が何かに取られ、視界は暗いまま。
「伊賀崎!? 鉢屋!?」
 伊作の切羽詰まった声が聞こえ、返事をしようと声帯を震わすと、あり得ない声が出た。

+++

 部屋の中の煙をあらかた出してしまうと、ふう、と伊作は息をつき口布を外す。今日は留三郎がいなくて良かったなぁ、などと思いつつ戸を閉めようとして伊作は硬直した。
 廊下…しかも自分の部屋の前に三年と五年の装束が落ちており、さらに三年の方には赤い蝮、五年の方には鬘と変装用の薄い皮膚などが付属として落ちている。伊作の背に嫌な汗が流れた。今の煙のせいで、伊賀崎孫兵と鉢屋三郎が何らかの被害にあったらしい。
「伊賀崎!? 鉢屋!?」
 慌てて名前を呼ぶと、装束がもぞもぞと動き「にゃー…」と猫の声が聞こえてきた。伊作は恐る恐る二人の装束を摘まんで中身を改める。
「わぁーい…伊賀崎と、鉢屋で合ってるよねー…?」
 孫兵の装束の中には茶色の毛の仔猫、三郎の装束の中には三毛の仔猫が伊作を認めた途端に「み゛ゃ――――――っっ!!?」と悲鳴を上げた。

+++

 先ほどの文献を改めてみるが、失敗した場合の対処は当然のことながら書かれていない。ただの眠り薬(ちょっと強力。うっかり永眠もあり)だったのになあ、と思いながら他の類似する文献を浚うが手がかりはない。
「どうしよっかなあ。一時的なものなら問題ないんだけど」
「にゃー」
「にゃあぅ」
 不機嫌に尻尾をペシペシと床に叩きつける三郎とジュンコと機嫌よくじゃれている孫兵を見て、伊作の胸はときめいた。
「カワ……っ!! じゃない…方策を見つけないと…文献ひっくり返してたら何か見つかるかなあ…」
 うーむ、と伊作が唸っていると開け放したままの入り口から声がかかる。
「善法寺先輩、食満先輩がどこにいらっしゃるか知りませんか?」
「善法寺先輩。鉢屋来ませんでしたー? 雷蔵についでに他の延滞本回収してきてって言われてー」
 五年い組の尾浜勘右衛門と久々知兵助の二人が乱雑に散らばった部屋を見てうわーと幾分引いた表情を見せた。雪崩た書物と、さっきから探しまくっていた文献のせいで物凄く散らかっている。伊作は後で留三郎に怒られるなあ、と思いながら「延滞本ー」と探し始める。
「留三郎はさっき町に行ったよー。鉢屋は…来てないなあ」
「…そうですか。じゃあ後でいいかな」
「鉢屋どこで油売ってんだろ。あ、猫だー! 善法寺先輩の猫ですか? かーわいー!」
 ひょいっと三毛猫を抱え上げ、頭を撫でる勘右衛門に三郎がフシャーッ!と声を上げた。
「勘ちゃん。嫌がってるよ。………て言うか、この仔猫すごいな。ジュンコとじゃれてる」
 孫兵な茶色の仔猫を見て感心したように兵助は瞠目した。
「え? 俺結構動物に好かれる方だよ。兵助。確かに、ジュンコとじゃれる猫もすごいけど、見てこれ!」
 両前足を掴んでブラン、とぶら下げて腹の方が見えるように勘右衛門は兵助に向かって三郎な三毛猫を見せる。
「可哀想だからやめなって。で、何がすごいのだ」
「オスの三毛猫だよ! 生まれる確率低くてついでに生殖能力がほぼゼロなんだよ!」
「へー」
「八ちゃんに見せよ! 珍しー! って喜んでくれるよ! ジュンコとじゃれる仔猫も! 連れてっていいですか?!」
 伊作を振り返ると、「うんいいよー」と簡単に了承したので、それぞれが仔猫を抱え上げ、ジュンコは勘右衛門の頭に鎮座する形で五年長屋に向かった。

+++

「八ちゃーん! 見てー! オスの三毛猫とジュンコと平気でじゃれる仔猫~!」
 スパーン! と戸を予告無しに開け放つと「見て見てー」と勘右衛門が雪崩込む。虫かごを修繕していた八左ヱ門がきょとんとした顔で友人を見上げた。
「オスの三毛は珍しいなー。で、ジュンコとじゃれる…というか、ジュンコがじゃらす仔猫も珍しいな。勘ちゃんどこで見っけたんだ?」
「善法寺先輩の部屋」
 頭からジュンコを下ろし、兵助が下ろした仔猫がジュンコに駆け寄る。ジュンコが仔猫の頭に自分の頭を擦りつけるのを見て八左ヱ門は「おー」と感嘆の声を上げる。仔猫は優しそうな眼差しを向ける八左ヱ門を見上げて「なぁう」と甘えた声を出した。

「…………孫兵?」
「にゃあ」

「え?」
「は?」

 八左ヱ門から出た名前に勘右衛門と兵助が素っ頓狂な声を上げた。

「八ちゃん頭大丈夫?」
「伊賀崎にほんの数刻会わないだけで猫が伊賀崎に見えるなんて八左ヱ門。お前相当なのだ」
「お前ら地味に酷いな! いやでもこいつ孫兵っぽくないか? 孫兵、って言ったら返事したし」
 にゃあ、と再度返事をした仔猫を指差す八左ヱ門をイタイモノを見る目で眺める二人。声音も非常に冷ややかだ。
「ジュンコとじゃれるから? 八ちゃん。非科学的だよー」
「でもこいつ善法寺先輩のとこにいたんだろ?」
 八左ヱ門が伸ばした掌に喉をゴロゴロと鳴らしながら仔猫が擦り寄る。
「善法寺先輩が何かしら謎の物質を作るからと言って人を猫にするなんて…」
 三毛の頭を撫でながら兵助は「ありえないのだ」と勘右衛門と目を合わせた。
「にゃー!」
 と三毛猫が鳴いて暴れ、びっくりした勘右衛門が手を離すと、間抜けにも三毛猫はぼとりと尻から落ちる。
「この三毛運動神経悪いね。猫なのに」
 勘右衛門の一言に「フシャー!」と毛を逆立てて唸った。

「あれ何で猫がいるの?」

 穏やかな声と共に雷蔵が八左ヱ門の部屋に入って来る。「あ、ジュンコもいる」と目を丸くし、茶色の仔猫と仲良くじゃれていることにも驚いて「すごいね」と呟いた。

+++

 孫兵は猫の姿なのに自分の名前を正確に当ててくれた八左ヱ門に感激して「にゃあ」と鳴いた。それに対してい組の二人は「頭大丈夫?」と言ったが、三郎は孫兵と当てた八左ヱ門を目を丸くして見つめる。常々、一年上の暴君と似ているな、とは思っていたがここまでとは。野生の勘、侮りがたし。
 ぴくり、と耳が動く。猫になったお陰で人である頃よりも五感が鋭くなっている耳が聞きなれた足音を拾った。暴れて勘右衛門の腕から逃れるが、猫の体に慣れていないため無様に落下する。勘右衛門に呆れられ、照れ隠しに唸っていたら、足音の主が八左ヱ門の部屋にやって来た。

「雷蔵、オスの三毛だよー」
「珍しいね。三郎いた?」
「善法寺先輩のところには来てないって。でも、延滞本って言ったら探し始めたよ」
「うん。延滞本はちゃんと返却されて、中在家先輩にお説教されてたよ」
「にゃあ」
 と勘右衛門と雷蔵の会話を遮るように三郎は鳴いた。雷蔵は視線を三毛猫な三郎に落とし、頭を撫でる。
「そうだ。何で猫がいるの?」
「善法寺先輩のとこにいたんだ」
「にゃあう」
 雷蔵に擦り寄る三郎に、勘右衛門と兵助は目を丸くした。雷蔵が三郎を抱え上げると余計に擦り寄る。
「雷蔵すごいね。その猫、めちゃくちゃ愛想悪かったのに」
「三郎みたいなのだ」
「あはは。本当に三郎だったりしてね」
「こいつも本当に孫兵かもしれねぇよな」
 茶色の仔猫を八左ヱ門が示すと、雷蔵は「そうだねぇ」と頷いた。そしてふと思い出したように雷蔵は視線を遠くに向けた。
「何の話だったかな…南蛮の方の話だったか…呪いをかけられた時の解き方がその対象に口付けをするってのなんだけど…」
 雷蔵はじーっと三毛猫な三郎を見つめる。三郎は「にゃー」と期待を込めた声で鳴いた。
「三郎になったら面白いよね」
「じゃあやってみたら良いじゃん。素っ裸の鉢屋が現れるかもよ?」
「毛皮が装束だったら素っ裸じゃないのだ」
 茶々を入れるい組に雷蔵は苦笑する。
「まあ、ものは試し」
 ちゅ、と軽く触れるだけの口付けをするとボフンという音と共に白煙が上がる。と同時に勘右衛門の上衣が引ったくられた。煙が晴れると猫の代わりに頭部を勘右衛門の装束で覆い隠した素っ裸の男が現れる。風呂に入る度に見る体つきで四人はそれが三郎だということを確認した。
「何してるの、三郎」
「鉢屋俺の装束返してよー」
「ダメ! 今は返せない無理ダメでもこのまま部屋に戻れないし…っ!」
 必死の抵抗で勘右衛門の上衣を死守しようとする三郎を眺め、兵助はポツリと己の考えを零した。
「…………三郎、お前今、素顔なんだろう? 猫になっていて、素っ裸に戻ったとしたなら鬘も顔もない状態だものな」
 その言葉に三郎はビクリと肩を揺らし、勘右衛門と八左ヱ門の目が光る。が。
「鉢屋ー! 伊賀崎ー! 元に戻る方法わかったよ!!」
 部屋に飛び込んで来た伊作によって、三郎は事なきを得た。
「あの文献の最後が米粒でくっついてたみたいでね! 剥がして頁を開いたら“尚、失敗作による効能は口付けにより消える”だって! あの文献一部呪術も織り込んであるからその影響が失敗作に及ぼすみたいで、南蛮の方だと結構有名な呪いの解き方みたいだよ。 あ、鉢屋は元に戻ったんだ。じゃあ後は伊賀崎だけだね」
 伊作が抱えていた己の装束と変装セットを素早く奪い、いつものように雷蔵の姿になっている三郎を認め、伊作は「ごめんね」とすまなそうな表情を見せた。
「まさか人がいるとは思わなかったんだ。あの時間は大抵僕が実験をしているのを知っている者ばかりだから近づかないし。はい竹谷、伊賀崎の装束。じゃ、僕は部屋の片付けが残ってるから!」
 と手を上げて伊作は去っていった。
「……じゃあ、孫兵も戻してやるか」

 無事に人間に戻った二人は、以後あの時間帯には決して六年長屋に近づくことはなかった。
 ちなみに伊作は騒動を知った留三郎にこってりと絞られたらしい。

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この好きは『好き』でいいのでしょうか?(次浦+綾)
私は彼女が幸せであるよう希う(再録:私が彼を嫌いな理由。&ハッピーエンドをつかみとれ!)(次浦+綾)
海に関するetc.(次浦+綾(タカ綾))
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最近ハートの国のアリスシリーズにハマったらしいです。
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