遊園地の夜



 レリーは手近なベンチに座った。そして空いている方を叩いて、ロートゥに座るよう促す。一日中、休まる時間のなかったロートゥは一人分隙間を空けて腰かけた。
「暇だったんだろ」
「あんたと一緒にしないでちょうだい。毎日仕事終わりは予定で一杯よ」
「俺、仕事終わりに遊ぶとか無理だわ……体もたねえ」
「がたいに似合わずもやしなのねえ、あんた」
「それが一般的なんだよ。でもまあ、この組み合わせは謎だけどな。どう考えても相性最悪だろ」
「性格診断したわよね? あんたなに? 私、Bだった」
 ロートゥはあからさまに嫌そうな顔をし、「F」とだけ答える。レリーは口に手を当てて驚きを表した。
「あら、それは最悪だわ」
 彼らの仕事はいささか特殊で、二人一組でなければ出来ない。そのため組み合わせには慎重を期し、入社してすぐに相棒を選ぶための様々な診断をするのだった。そのうちの一つで、数ある診断の中でもかなりの重要性を誇るのが性格診断である。
 それだけを聞けば占いの本などで賑やかに楽しむものを想像されることが多いが、彼らの行う性格診断とは四柱推命と占星術を組み合わせ、百問からなる心理テストを行い、文字、人相、手相などを参考にした診断であった。あまりのごった煮ぶりに信憑性を疑う声もあるが、丸一日かけて行うこの診断が「嘘」だと言うなら、その無駄な一日を毎年行っている会社の方針にも疑問を持たねばならない。ロートゥなどはそれが面倒だから、とりあえずは信じることにしていた。
 だが、疑う余地もないほどにその精度が良いことを、彼らは仕事に従事するようになってから思い知る。相棒がいる時にはそれなりに、何らかの理由で別の人間と一時的に組むことになれば尚のこと。
 こうして相性が最悪な人間と組むことになれば、骨身に染みて思い知る。仕事のやりにくさといったらない。だから、本来ならば最悪とされる相性の組み合わせは避けて通る道なのだが、今回はどういうわけかその道を大股で歩くような状況に陥ってしまった。
 まあ、と言いながらレリーは中空に視線を投げかける。
「別に入り込むのに手間はかからなかったけどねえ。……実は相性いいんじゃない? 私たち」
「この状況で? 冗談だろ」
 ロートゥが吐き捨てるように言うと、「まあね」と納得するようにレリーは嘆息した。
 辺りは遊びに来た客で溢れかえっている──だが、これはあってはならない事象だった。本来なら、誰もいてはならないはずのこの場所に、これだけの人の存在が許されるということ自体が異常であった。
 本当なら、彼ら二人とあと一人、それだけがこの遊園地に許された人数の上限のはずだった。
「ちょっとこれは私もひいちゃうわ。あんたにこれだけの人を抱える甲斐性はないだろうし」
「そりゃどうも」
「私は全部追い出して仕事するから、せいぜい、いても数人なんだけど」

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