Piece6



 そして、このことは決してギレイオやサムナには言ってはならんときつく言い含めた時、ギレイオがやって来て、しばらくの滞在を示唆するようなことを言ったのである。
 この時、ヤンケは起き上がっても良かったのだ。ゴルが投げつける物を顔や頭で受け止めるなど日常茶飯事で、痛みはあっても起き上がるのに支障をきたすほどの辛さではなかった。
 だが、どうしてか体を起こすのは躊躇われた。多分に、ギレイオたちに秘密で調べろ、と言ったゴルの声がそうさせたのだろうとヤンケは思った。
「倉庫ってのは」
 ゴルの声が現実に呼び戻す。ヤンケは「ああ」と言って答えた、
「ネットワーク上のデータバンクみたいなものです。でもそれほど高尚なものではなくて、誰でもアクセス出来て、誰でもデータを追加修正していけるようなものと言ったらいいでしょうか。言ってることわかります?」
「馬鹿にしとるじゃろ」
「師匠の頭を心配してるんです。それで……」
 怒気を高めるゴルの気配を察知し、ヤンケは素早く話を進めた。
 同時に、モニター上へ無数のデータが表示される。
「これがその倉庫をはしごして見つけた、楽園機構に関する噂です。ついでに名前はあがってないけど、それらしい噂も拾ってみました。ね、どれも似たり寄ったりでしょう」
「……どれも聞いたことのあるもんばかりじゃな」
「時系列に並び替えてみると、まあ、同じ繰り返しなんですけどね」
 画面が変わり、日時を基準にして噂が並び替えられる。
 ゴルはヤンケの言い方に耳を止めた。
「何か引っかかるのか」
 ヤンケは気付いてくれた、とばかりに笑う。
「これも私が見つけたからこその成果だと思いますが!」
「いいから言え」
 すぱん、と頭を叩かれ、その部分をさすりながらヤンケは口を尖らせた。
「少しは凄いとか言って下さいよーつれないなあ。……それでまあ思ったんですけど、関係ない噂が二、三立ってから、人が消える、の繰り返しですよね、基本」
「それが?」
「でも、それって逆じゃないですかね」
「逆?」
 ヤンケは何個かの噂にラインを引く。
「本当は、先に人が消えて、関係ない噂が立ってるんじゃないんですか?」
 期待を込めて聞いたゴルは、大きく溜め息をついてヤンケの座る椅子の背もたれに肘を置いた。
「……それで?」
「あ、今、馬鹿にしましたね。アホな推論とか思いましたね」

- 82 -

[*前] | [次#]

[しおりを挟む]
[表紙へ]




0.お品書きへ
9.サイトトップへ

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -