Piece1
それが合図のようにあちこちで戦闘が始まった。剣で、棍棒で、槍で、斧で、あらゆる武器が方々で奮戦する。
中でも異人と金髪の戦いぶりには目を見張るものがあった。鋭く切り込む異人の剣に容赦というものはなく、彼の通った後には死体の山が築かれた。
対して金髪の戦い方は何とも豪快だった。その大剣を一振りするだけで、何十匹も絶命を余儀なくされる。応戦しながら、ギレイオは目の端で二人の戦いぶりを窺った。
──ただ者じゃねえな。
異人はともかく、金髪の大剣には聞き覚えがあった。光に包まれた大剣を操る、ベイオグラフという男。
「あいつがね」
口笛を鳴らし、迫るオークへ跳躍して首に手をかけ、頭上で逆立ちすると、着地しながら首の骨を折った。ごき、と嫌な音をたてて倒れるオークの向こうでは、サムナが剣の重さを感じさせぬ動きで何匹ものオークを地に臥している。
そんなことを何度繰り返したかわからなくなってきた頃、ギレイオは手の甲で汗を拭った。
「応援はいつ来るんだよ!」
苛立ちが募り、誰にともなく声を張り上げた。
武器を持ち合わせていないギレイオの体力とて、無尽蔵ではない。人相手ならば何十人でも相手してやる自信はあるが、装甲の厚い“異形なる者”相手には骨が折れる。一息で倒さなければ、やられるのはこちらだ。
襲い掛かるオークへ拳を叩き込み、振り向きざまの一撃を与え、ふらついたところで連掌を見舞うが致命傷には至らない。装甲の厚さが災いした。
軽く舌打し、うめく。
「ったく、難儀だな。硬いぜ」
瞬間、倒れこむオークに漆黒の剣が振り下ろされた。寸分違わぬ正確さで頭蓋を叩き割り、脳漿が辺りに大輪の花を咲かせる。
思いがけない助け舟にほう、と一息つく余裕を貰い、ギレイオは剣の持ち主に向かって言った。
「サンキュ!」
「得物も無しに大した自信だな、リーダー」
穏やかに異人は応じる。先刻、追及し損ねた結果か、語尾を飾るリーダーという言葉がどうにも気味悪く聞こえてならない。戦闘の隙間の如く生まれた時間を逃さない手はなく、ここで事をはっきりさせようとギレイオは異人に向き直り、腰に手を当てる。
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