Piece7



「それも機構に関する言葉ですし、噂によくある、単なる言葉遊びとは違うと思うんですよね。マトアス、って明確な地名も出てるので」
「マトアスっちゃあ……ガイアの近くか」
「エデン寄りの街で、中規模の街です」
 ギレイオは腕を組んだ。
「死んだって噂には街のことまでは出てなかったぞ」
「最終的にどうでもいい情報は消えていったんだと思いますよ。要は、「楽園機構」の「若い幹部」が「どうなった」という点だけが、噂の中において重要性を高めていったんだと思います」
「そして、俺んとこに来た時には、それが死んだ、に変わったってわけか。……随分、大胆な解釈を加えた奴がいるもんだな」
「話が流れる上で、色んな話がごっちゃになったんだと思いますけどね。誰それが死んだ、なんて聞かない日はないくらいですし。噂としては一番、害はないですよ」
 ギレイオは嘆息する。
「当人にとっちゃ害悪ありまくりだろ。外に出たらいきなり死人扱いされてるんだぞ。まともな神経してんなら、間違った噂をどうにかしようと思うだろ、普通」
「……では、普通ではない状況下にあったということだろうか」
 口を開いたサムナを、ギレイオ共々、ヤンケも見つめた。
 サムナは構わずに続ける。
「噂を正そうという気にはならなかったのかもしれないし、正せる状況になかったのかもしれない。だが、そのどちらもお前の言う普通とは、かけ離れた状態だとおれは思うんだが」
 ヤンケは吟味するようにその話を聞き、顎に手を当てた。
「そうかあ……そうすると、いくつか推論が立てられますね。噂の大本から間違っていたってことで、つまりは本当に死んでいる説。そうすると当事者による、噂への何らかの干渉は一切出来なくなりますし」
「死後そういう事が出来るような仕掛けを残しとくのは?」
「だったら、今こういう話にならないじゃないですか」
「ああ……じゃあ死んだ事実が流れることに抵抗はなかったってわけか。つーか、事実だろうが噂だろうが、自分が死んだって噂が流れることを、好都合と考えたってのは穿ちすぎか?」
「それは飛躍しすぎだと思いますけど、でもあり得ない話じゃないですよね。ただ、そこに行くまでに、まだ推論は立てられますよ。ギレイオさんが言うような仕掛けを施す前に、突発的に殺されたか亡くなった、とか。それにしても結局は、死んでいる説になるんですけど」
「そうすると「マトアスにいる」って話そのものも怪しいな。いる、っつってるだけで生死までは言及してねえんだし」

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