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愛<自分

ドアの開かれた音に、手放しかけた意識を持ち直す。
あぁ、帰ってきた。
頬に触れた、手のひらの冷たさに酷く安心した。同時にその手から伝う香りに吐き気を覚える。勿論そんなことを顔には出さない。

口許だけでおかえり。と形をつくれば、ただいま。と音で返ってくる。そのときに見せる表情が好きだと思う。

寄せられる唇を受け止め、より強くなる香りに胸が締め付けられた。そっと首を下に動かして、触れ合っていたソレを外す。不振に思われないように、呼吸を整える振りをしていれば、コツンと額がぶつかり、頬を両手で挟まれ上を向かされた。向けられた視線に息が詰まる感覚がして、咄嗟に名前を零した。


金時は、ん。とだけ返し、黙り込んだ俺に「好きだよ。」と囁いた。

「あぁ。」とだけ返す俺に、「愛してる。」をくれた。

嬉しいはずなのに、喜べない。

「ホントだよ?」

信じてる。でも、信じてない、自分がいる。名前を呼ばれても、スキだと…愛してると言われても、抱きしめられても、キスされても、香水の香りが邪魔をする。嘘だと、偽りだと俺を嘲笑っている。


「もう、分かったから。信じてるから。」


やっと返せた言葉は、優しく、それでも確かに金時を突き放していた。揺れる瞳から逃げるように、金時の胸に頭をあずけた。


「晋助…。」


力無く漏れた俺の名前に、込上げる罪悪感や、霞む視界。背中に回された腕の生温さに、全てを委ねたくなる。


それをしないのは、傷つきたくないから。


(…なんだ、結局俺は金時を信じていないのか。)


はは、悪いな金時。俺は、自分が可愛くて仕方ないらしい。

そう謝罪をひとつして、愛する男の腕の中で自身の愚かさを嗤う。涙が頬を滑り落ちた。






愛<自分





(すきだから、はなれていかないで。)



手の冷たいホスト希望!てか、坂田さん一同手が冷たかったらいい!



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