- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/15(日) 23:56:58.00 ID:5m8p/n03O
- ―――寒いね
―――はい
―――もっとこっちにおいで。体をくっつけたほうが暖かいよ
―――……いえ、結構です
―――今日も月が綺麗だね
―――そうですね
―――また明日も見に来ようね
―――……そうですね
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/15(日) 23:59:25.41 ID:5m8p/n03O
( ・∀・)雪白の月のようです(#゚;;-゚)
* * * * *
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:02:37.33 ID:YZQkYMXJO
- それはとても寒い冬の夜の事でした。
(( ・∀・))ブルルッ
( ・∀・)「うぁー……寒い」
アスファルトの上に浅く積もった雪の道を歩く小さなうすい橙色の影。
それは名をモララーと言い、しがない野良猫。
モララーは真っ白な雪の上にまあるい足跡を残しながら、せっせと歩いて行きます。
足の裏に触れる雪はとても冷たく、自然とモララーの足を早めるのです。
今、道に人の姿はありません。
その代わりに道沿いに建っている家の窓からは暖かい光が漏れ、子供達の騒ぐ声が聞こえてきます。
きっと人間の子供達は今頃暖かい暖炉の前で、
もうすぐやって来るクリスマスについて思いを馳せてるんだろうなぁ、
などと考えながらモララーはせっせと歩くのでした。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:05:10.26 ID:YZQkYMXJO
- ひらひらと舞い落ちた雪がモララーの背に乗り、ゆっくりとゆっくりと溶けていきます。
大分体が冷えてきた。そろそろ暖を取りたいな。
そう思った時でした。
(#゚;;-゚)
道の傍らで、傷だらけの雌の猫が一匹、空を眺めてぼうっとしておりました。
その猫の周りを降る雪が街灯の光を反射して、キラキラ。
なんとも幻想的な雰囲気を醸し出しているのでした。
( ・∀・)「こんばんは」
(;#゚;;-゚)「!」
モララーが声をかけるとその猫は酷く驚いて、他の猫よりいささか短いしっぽを膨らまし、
耳を倒して後ずさり、首輪についた三日月型の鈴がリンと音をたてます。
その顔には怯えたような、困ったような表情が張り付いておりました。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:07:43.87 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「こんなところで何をしているんだい?」
(;#゚;;-゚)「あ、え、ぅ、」
しかしモララーはそんなことお構いなしに猫に近づいてゆきます。
この季節になると寒さからか外に出てくる猫はほとんどいません。
このような雪の降る夜はなおさらです。
にも関わらず外に出ているこの猫に、モララーは多少の親近感が湧いたのでしょう。
モララーも、こんな寒い中外をうろつく変わった猫であったのですから。
(;・∀・)「そんな怯えなくても……。とって食おうってんじゃあるまいし……」
(;#゚;;-゚)「ご、ごめんなさい……」
モララーはなんだか自分が悪いことをしているような気分になり、黙り込んでしまいました。
二匹とも口を閉ざしてしまったものですから、なんだか重苦しい雰囲気が二匹を包み込みます。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:09:22.72 ID:YZQkYMXJO
- (#゚;;-゚)「月……」
( ・∀・)「はっ……?」
意外にも、静寂を破ったのは傷ついた猫の方でした。
確かに意外な事でしたので、モララーは素っ頓狂な声を上げました。
(;#゚;;-゚)「あっ……ご、ごめんなさい」
(;・∀・)「えっ?いや、続けてちょうだい?」
(;#゚;;-゚)「はい……ごめんなさい……」
猫は耳を折ったまま、しどろもどろに話し始めます。
白い雪がひらひらと舞い落ちて、その猫の足元に落ちました。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:13:41.00 ID:YZQkYMXJO
- (#゚;;-゚)「月……今日は……見えないです」
( ・∀・)「ああ、雪が降ってるからね……。好きなの?」
(;#゚;;-゚)「えっ……?」
( ・∀・)「月」
(;#゚;;-゚)「あ、え、その、は、はい……」
( ・∀・)「奇遇だね。僕もだ」
(;#゚;;-゚)「……はい?」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:16:05.51 ID:YZQkYMXJO
- 別にモララーは生粋のプレイボーイで、この猫の気を惹こうと話を合わせたわけではありません。
モララーも生まれつき、月が大好きだったのです。
そのため、こんな冬の寒い夜でも外をうろついているのでありました。
( ・∀・)「昔から月を見てると、心が落ち着くんだ。特に冬の月は綺麗で……」
(#゚;;-゚)「そう……なんですか?」
猫が折れていた耳を立て、少し驚いた表情でモララーを見つめます。
その目から怯えの色はもう見受けられませんでした。
( ・∀・)「うん。小さい頃は月に向かって話し掛けたりしてね。よく友達にからかわれたよ」
(#゚;;-゚)「そうですか……。私も……小さい頃から月が好きで……よく、一人で見てました」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:19:21.13 ID:YZQkYMXJO
- 照れたような笑顔で猫は顔を伏せます。
モララーはやっとまともな会話が出来たのがうれしいのか、満面の笑みを浮かべました。
( ・∀・)「僕、モララー」
(#゚;;-゚)「でぃ……です」
( ・∀・)「よろしくね」
(#゚;;-゚)「……はい」
とても簡単なものでしたが、猫達にとってはこれが精一杯の自己紹介です。
自己紹介が終わると、やはりモララーは満面の笑みを浮かべます。
そしてその笑顔を見たでぃも、うっすらと笑みを浮かべるのでした。
これが、モララーとでぃの出会いでありました。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:22:32.74 ID:YZQkYMXJO
- 次の日の事です。
モララーはいつもの寝床から起きると、すぐにいつもの街を歩き始めました。
夕べ降った雪は太陽の光を反射してキラキラと輝いております。
その眩しさに目を細めながら、モララーはせっせと歩くのでした。
夜と違って、朝には多くの人がいます。
仕事に行くお父さん、学校に行く子供達、買い物に行くお母さん。
いろんな人が歩いています。
モララーはそんな人達の間を縫うようにせっせと歩いていくのでした。
目指す場所は、昨日でぃと会ったあの場所です。
自分と同じ、月が好きな変わった猫。
もう一度会いたい、会って話がしたい。
モララーはそんなことを考えながら、せっせせっせと歩きます。
雪の道をせっせ、せっせと。
( ・∀・)「ここだ」
昨日の場所に着きました。
しかしでぃの姿は見当たりません。
家と家の間にも家の裏のごみ箱の上にも、
近くに置いてあった段ボールの箱の中にもおりませんでした。
きっと彼女の寝床はもっと遠い所にあるのだ、そのうちここにやってくるだろう。
そう思ったモララーは、その場にちん、と腰を下ろしました。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:26:01.43 ID:YZQkYMXJO
- 太陽が真上まで上り、人の通りが少なくなりました。
世間一般で言うところの、ランチタイムです。
モララーはというと……
( ・∀・)グーキュルル…
( ・∀・)「腹減った」
まだ、でぃがここに来ると信じて道の傍らに座っておりました。
しかし朝も昼も何も食べてませんので、
モララーの腹の虫はグルグルと鳴き続けているのでした。
(,メ゚Д゚)「おう、モララー」
( ・∀・)「ああ、ギコか」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:29:21.08 ID:YZQkYMXJO
- モララーの頭の上から声がします。
見上げると、屋根の上から薄い藍色の猫がモララーを見下ろしおります。
猫の名前はギコと言って、この街のボスをやっておりました。
また、モララーの数少ない友人の一人でもあります。
(,メ゚Д゚)「何やってんだ?そんなところで」
( ・∀・)「待ってる猫がいるんだ」
(,メ゚Д゚)「おーおー。こんな昼間っからお熱いことで」
(;・∀・)「なっ!そんなんじゃな……」グーキュルル…グー
(,メ゚Д゚)
(;・∀・)
(,メ゚Д゚)「メシ、食いに行くか?」
(;・∀・)「……うん」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:32:18.32 ID:YZQkYMXJO
- モララーはすっくと立ち上がり、大きく伸びをしました。
まずは上半身をぐいーと伸ばし、今度は下半身をぐいーと伸ばします。
最後に体をぶるぶると震わせ、動き出す準備は完了です。
下半身に力を込め、ジャンプ。
ごみ箱の蓋を蹴って塀の上に登ります。
そして今度は、塀の上から屋根に向かって大ジャンプ。
上半身さえ引っ掛かれば、なんとか上に登れるものです。
( ・∀・)「ふぅ」
(,メ゚Д゚)「うし、行くか」
二匹は屋根伝いに昼の街を駆けて行きます。
行き先は既に決まっておりました。
このまま屋根伝いに十件ほど行ったところにある、小さな食堂であります。
二匹で食堂でお昼ご飯と聞くと、なんだか人間と変わらないように思えますね。
しかし猫が人間のように「牛丼ネギだくください」とか注文するわけありません。
そのかわりに食堂にいるある猫が料理を取ってきてくれるのです。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:35:14.44 ID:YZQkYMXJO
- (,メ゚Д゚)「おい、ブーン」
( ‐ω‐)「zzz……」
(,メ゚Д゚)「起きろ、ブーン」
( ‐ω‐)「zzz……」
(#メ゚Д゚)「起きろ豚猫ぉぉぉ!!」
( ‐ω‐)「zzz……」
(;・∀・)「うーん。これは凄い」
ギコが大声で怒鳴っても目を覚まさず、食堂の屋根の上で寝ているのは、ちょっと太った白猫、ブーン。
この食堂で飼われている雄猫であります。
しかし飼い猫と言っても、一日のほとんどを外で寝て過ごすものですから、
ほぼ野良猫と同様な生活をしているのでした。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:38:35.92 ID:YZQkYMXJO
- (#メ゚Д゚)「てめっ!いい加減起きろっての!!」
ギコがブーンの頭を思いっきり殴ります。
柔らかい肉の感触に邪魔はされましたが、ギコのげんこつは確実にブーンの脳を揺らしました。
(;゚ω゚)「ぷるこぎっ!!」
(;^ω^)「なんだお、ギコかお……。起こすならもうちょっと優しくして欲しいお……」
くわわ、とあくびを一つしてブーンが起き上がります。
しかし動作の度にお腹についた贅肉がぷるぷると揺れて、それがギコの神経を逆なでしてしまいました。
(#メ゚Д゚)「なぁーにがもっと優しくだ!!どんだけ名前呼んでも起きなかったくせに!
耳まで脂肪で埋まっちまったのかぁ?あぁん?」
(;^ω^)「ぶひっ!?そこまで言わなくても……」
( ・∀・)「まぁ確かにそんなんじゃツンちゃんにもフラれるわけだよ」
( ;ω;)「そ、それは思い出させないでほしかったお!!ひどいお!!」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:41:25.07 ID:YZQkYMXJO
- 実はこのブーンという猫、子猫の頃から向かいに住んでいるツンという猫に惚れ込んでいまして、
何回も何回も交際を申し込んでは何回も何回も断られていたのでした。
( ;ω;)「い、いつか、いつかツンに振り向いてもらえるような猫になるんだお」
(,メ-Д-)「あーハイハイ。頑張って頑張って」
( ・∀・)「じゃあブーン、いつも通り食べ物盗ってきてよ」
(*^ω^)「ごはんかお!?いってくるお!!」
先程の涙はどこへやら。
ごはんと聞くや否やブーンはその巨体に似合わぬ素早い動きで屋根の上から姿を消しました。
モララー達がみんなで食事をするときは、いつもこの食堂の屋根の上に集まり、
ブーンが盗ってきてくれたお店の残り物などを食べるのです。
お店の料理は猫達にとってはとても味付けが濃いので、みんなでここに集まるのはほとんどありませんが。
(,メ-Д-)「いつもいつもここの料理ばっか食わされてるからあんだけ太るんだろうな……」
( -∀-)「ホント、飼い猫ってかわいそうだね……」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:44:58.83 ID:YZQkYMXJO
- (*^ω^)「盗ってきたお!!」
意気揚々と戻ってきたブーンの口にくわえられていたのは、
三匹で分けてもちょっと大きいくらいの魚の切り身でした。
( ・∀・)「どうみても調理前の魚です。本当にありがとうございました」
(;メ゚Д゚)「お前……後で叱られても知らねぇぞ」
(*^ω^)「それでもまだツーアウトだお!さ、食べるお!」
盗ってきた獲物を早速ガツガツと食べ始めたブーンを見て、モララーとギコは溜め息をつきました。
まったくブーンは食べることさえ出来れば幸せなんだな、と。
(;・∀・)(ツーアウト……?スリーアウトになったらどうなるんだ……?)
* * * * *
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:47:15.99 ID:YZQkYMXJO
- (*^ω^)「ふー。おいしかったお!」
(;・∀・)「結局ほとんどブーンが食べちゃったね……」
(;メ-Д-)「こいつの胃袋は化け物級だな」
あっという間に食事を終えると、今度は雑談タイムです。
いつもはここで仕様もないことを報告しあうのですが、今日はどうやらちゃんとした話題があるようです。
(,メ゚Д゚)「そういやモララーが待ってた猫って誰なんだ?まさかツンか?」
(;゚ω゚)「そぉい!?」
(;・∀・)「そんなわけないだろ……。昨日会ったばっかの子だよ……」
(,メ゚Д゚)「ほほぅ。雌か?かわいいのか?」
( ^ω^)「ツンじゃなけりゃどうでもいいお」
(;・∀・)「お前らなぁ……」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:50:21.81 ID:YZQkYMXJO
- (,メ-Д゚)「まぁいいじゃねぇか。いろいろ話してくれたら、こっちもお前の恋路を助けることができるんだから」
( ^ω^)「冬なのに発情期みたいなノリキモいおー」
(,メ゚Д゚)「……で?その猫って何丁目の誰よ?」
(#);ω;)
(;・∀・)「……」
(;・∀・)「何丁目に住んでるかは知らないよ。名前しか聞かなかったから……」
(,メ゚Д゚)「ふーん。名前は?」
( ・∀・)「でぃって言うんだ」
(,メ゚Д゚)「でぃ?」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:53:19.89 ID:YZQkYMXJO
- (,メ-Д-)「んー……。俺ぁこの街の猫は全員把握してるつもりだったけど
……でぃってのは聞いたことねぇな」
(;・∀・)「えっ?そうなの?」
ギコはこの街のボスですから、この街に入る猫の事はほとんど知っていました。
明後日で二十四歳になるスカルチノフから、
一昨日ワカッテマスとちんぽっぽの間に生まれた子供達の名前まで。
それほど街の猫について詳しいギコですら知らない猫がいたなんて。
モララーはとても驚きました。
(,メ゚Д゚)「名前を聞き間違えたんじゃないか?そいつの体の特徴とかは?」
( ・∀・)「特徴……?」
昨日、でぃと会った時の事を思い返します。
やはり一番印象的だったのは、体についた無数の傷でしょう。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:56:26.56 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「傷……。体中にいろんな傷がついてて……片方の耳がなかった。
あと首輪つけてたから飼い猫っぽい」
(;メ゚Д゚)「なんだそりゃ?そんな猫、この街で見たことねぇぞ?」
全身傷だらけの猫なんて、一度見たら忘れることはないでしょう。
今のギコの反応から、でぃは一度もギコの前に姿を現したことはなさそうです。
(;メ-Д-)「んー……。昨日新しく引っ越してきたか……違う街から迷い込んできたのか……」
(#)^ω^)「しかしなんでまたモララーは一度会っただけの猫に都合よく再開出来ると思ったんだお?」
( ・∀・)「……そういわれれば」
昨日、別れるときにまた明日と言ったわけでもありません。
そして、でぃが特別モララーに好意を寄せているようにも見えませんでした。
しかし、何故かでぃがあそこにいるような気がして、
あそこにいればでぃに会えるような気がして、
モララーはあそこで待つことのしたのです。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 00:59:31.15 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「わかんない……けど、会える気がした」
(#)^ω^)「ぶひゃwwwwおめでてーおwwww冬なのにめっちゃ発情期みたいな考えが二人wwww
ブーンの回りの猫は冬でも青春真っただ中かおwwwwwwwワロチwwww」
( ・∀・)「年中サカってるお前に言われたくないなー」
(,メ゚Д゚)「お前は年中食うことかツンのことしか頭にねえだろが」
(#);ω彡#)
(,メ゚Д゚)「だが、なんでまたその猫に逢おうとしたんだ?
ただでさえ雌に興味のないお前が……しかもこんな季節に……」
でぃに逢おうとした理由。
それならはっきりと説明できます。
彼女が自分と同じ変な趣味を持った猫だっからです。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:02:50.73 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「彼女、月が好きだと言ったんだ」
(#)^ω彡#)「月が?物好きもいたもんだおwwwww」
( ・∀・)「ほうほう。それは僕に向かって言ってるのかな?」
(#)^ω彡#)「ごめんなさい。月のよく見える絶景スポット紹介するんでその爪を引っ込めてください」
(,メ-Д-)「ふぅん。お前と同じ月が好きな猫……ね」
(,メ-Д゚)「夢じゃねぇのか?」
(;・∀・)「違うよ。すごい寒かったもん」
(,メ゚Д゚)「……まぁいい。とりあえずその猫について街の奴らにいろいろ聞いてみるよ。
そいつの正体がわからないままだとボスとして失格だからな」
* * * * *
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:06:31.54 ID:YZQkYMXJO
- その後少しだけ仕様のない話をして三匹は別れました。
いつの間にか太陽は沈み、白い白い月が夜空に浮かんでおりました。
モララーは溶けかけの雪の道を、のんびり歩いています。
今日はもう疲れた。早く寝よう。
大きなあくびをしながらのんびりと自分の寝床に向かってトテトテと歩いてゆきます。
突然、モララーの足が止まりました。
誰かに呼ばれた気がしたのです。
振り向いてみましたがもちろん後ろには誰もいません。
空では白い白い月がモララーを見下ろしてにっこりと笑っておりました。
( ・∀・)「……でぃ、いるかな」
あの場所にでぃがいる気がして、あの場所ででぃが月を見ているような気がして、
モララーは来た道をせっせと引き返すのでした。
溶けかけの雪の道をせっせ、せっせと。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:10:13.39 ID:YZQkYMXJO
- (#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)(いた!)
昨日と同じ場所にでぃはおりました。
月を見上げて、寂しそうな表情で。
モララーはゆっくりとでぃに近づいてゆきます。
昨日のように突然話しかけて驚かせないように。
しかしでぃはずっと月を見つめるばかりでモララーに気づきません。
仕方ないのでモララーはその場で咳ばらいを一つしました。
(;#゚;;-゚)「!!」
しかしその咳ばらいの音を聞いただけでもでぃは驚き耳を倒して、短いしっぽを大きく膨らませるのでした。
(;#゚;;-゚)「あ……モララーさん……。ビックリしました……」
(;・∀・)「うーん。あれで驚かれたら僕は君にどう話しかければいいのかわからないよ」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:13:06.52 ID:YZQkYMXJO
- モララーが冗談めかしてそう言うと、でぃはクスリと笑いました。
その笑顔を見て、モララーを小さな笑みを浮かべます。
(#゚;;-゚)「今日のお月様は笑ってます」
( ・∀・)「そうだね。何を見て笑ってるんだろうね」
それは、月を愛する二人にしかわからないことでした。
しかし、確かに月はにっこりと笑っているのです。
二人を見下ろし、にっこりと。
( ・∀・)「ああ、そうだ」
モララーが突然、何かを思い出したかのように話し始めます。
それは今日ブーンに聞いた、月がよく見える場所の事でした。
街から見る月は街灯や家屋からでる光のために、少々霞んで見えるのです。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:16:26.95 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「月がもっとよく見える場所があるらしいんだけど、行ってみない?」
(;#゚;;-゚)「え……っ?」
モララーの誘いに、でぃは戸惑ったような声を上げました。
しかしモララーはオロオロしてるでぃをよそに、さっさと歩き始めておりました。
(;#゚;;-゚)「あ……ま、待って下さい!」
でぃは慌ててモララーの後をついていきます。
かわいそうに、どうやら最初から彼女に選択権はなかったようです。
一丁目の大通りを抜け、二丁目の公園を通り、三丁目にある山を登ります。
そこからは獣ですら通らないであろう獣道をずんずん進んでゆくのです。
(;#゚;;-゚)「あの、モララーさん?本当にこっちであってるんですか?」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:20:16.39 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「あってるよ。……多分」
(;#゚;;-゚)「ええぇ……。多分ってなんですか多分って……」
( ・∀・)「僕の友人が間違った道を言ってなければ大丈夫だよ」
(;#゚;;-゚)「もしかしてモララーさん、そこに行ったことないんですか!?」
( ・∀・)「ないね。今日が初めて」
(;#゚;;-゚)「ええぇ……」
道はどんどん狭くなって行きます。
でぃは一抹の不安を感じながらモララーの後ろをせっせ、せっせとついて行きました。
一歩進むごとにチリンチリンと鈴を鳴らして。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:23:54.27 ID:YZQkYMXJO
- モララーは無言でずんずん進みます。
でぃはその後をせっせと追いかけます。
いつのまにか、道は完全になくなっておりました。
(;#゚;;-゚)「あの……モララーさん?」
( ・∀・)「大丈夫大丈夫。もうすぐ着くはずだから」
やけに自信満々な表情でモララーはそう言います。
でぃは不安の色を隠せずにいますが、それでもモララーの後ろを着いていくのでした。
そしてその不安もすぐに払拭されるのでありました。
(#゚;;-゚)「わぁ……」
鬱蒼とした雪月花の茂みを抜けると、少し開けた場所に出ました。
空を見上げると、満天の星空。
その中心で白い白い月が、にっこりと笑っておりました。
その美しさにでぃも感嘆の息を漏らします。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:26:07.80 ID:YZQkYMXJO
- 空に浮かぶ雪白の月。
モララーとでぃは言葉も忘れて、しばし月に見とれておりました。
月はにっこり笑って、二匹のことを見下ろします。
そよそよと吹く風は木の葉を揺らし、優しいメロディーを奏でます。
月にうっとり見とれているモララーには、
そのメロディーがなんとも幻想的な、サイケデリックなものに聞こえてきました。
時に優しく、時に激しくメロディーは流れます。
幻想的な、神秘的な静寂。
いつまでもこのままここでこうしていたい、
モララーはそう思いました。
もちろん、そんなわけにはいきません。
でぃに聞かなくてはいけないことがありますから。
( ・∀・)「……ねぇ。でぃ」
(#゚;;-゚)「……はい?」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:29:24.98 ID:YZQkYMXJO
- 月明かりに照らされて、憂いの篭った瞳ででぃはモララーを見つめます。
その姿がなんとも神秘的で、モララーは二の句が繋げなくなりました。
ああ、こんなんじゃブーンにバカにされるな、などと頭の中で考えながら。
(#゚;;-゚)「モララーさん?」
( ・∀・)「あ」
でぃの言葉で意識がはっきりと戻ってきました。
少し恥ずかしくなったので、モララーはでぃと目を合わさないようにして話しはじめるのでした。
( ・∀・)「君は一体どこに暮らしているんだい?」
(;#゚;;-゚)「えっ……」
でぃはモララーの問いに動揺していました。
なぜ動揺する必要があるんだろうとモララーは不審に思いましたが、
すぐに理由がわかって慌てて言葉を付け足します。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:32:19.12 ID:YZQkYMXJO
- (;・∀・)「ああ、いや、寝床を調べて夜襲をかけようというわけじゃないんだ。
ただ、気になってね。昼もどこにいるかわからなかったし……」
(;#゚;;-゚)「は、はぁ……」
やけにオタオタとするモララーにでぃが呆れたような返事を返します。
その返事を聞いて、モララーはほっと一息。
一体なにを考えていたのでしょう。
(#゚;;-゚)「あの……私の住まいについては聞かないで下さい……」
( ・∀・)「えっ?どうして?」
(#゚;;-゚)「……理由も、聞かないで下さい。お願いします……」
( ・∀・)「……あ……うん」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:35:50.57 ID:YZQkYMXJO
- 飼い猫には飼い猫なりの事情があるのだろうと、モララーは自分の中で結論づけました。
それを詮索するのは、余りにもナンセンスです。
(#゚;;-゚)「……モララーさん」
( ・∀・)「ん?なに?」
(#゚;;-゚)「……明日も、ここに連れてきていただけるでしょうか?
私の頭では……ここへの道程を覚えることは出来ませんので……」
( ・∀・)「そりゃあもう。喜んで」
(#^;;-^)「……ありがとうございます」
月明かりに照らされたでぃの笑顔はとても綺麗で、モララーはまたでぃから目を逸らしてしまいました。
でぃはどうしたのか、と首を傾げます。
月はそんな二人の様子を見下ろして、にっこり笑っているのでした。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:39:28.14 ID:YZQkYMXJO
- * * * * *
次の日の事です。
モララーはいつもよりちょっと遅めに目を覚ましました。
昨夜でぃを二匹が出会った場所まで送り届けた時にはもう東の空が若干明るくなっていましたから。
一丁目の素直さんの家の横、そこにある段ボールの中でモララーは寝ております。
起きたモララーはまず体を簡単にグルーミング。
次に段ボールの横で爪をといで身支度を整えるのです。
さて、今日はどうしようか。
でぃと会うのは、月が出てから。
それまでの時間はまだたっぷりあります。
( ・∀・)「そうだ。ブーンにお礼言わなくちゃ」
昨日の月がよく見える場所はブーンに教えてもらったものでした。
ブーン曰く、『僕がツンと付き合う事になったら、行こうと思ってる場所だお!』だそうで。
おかげででぃにも喜んで貰えたので、一言礼を入れなければならないでしょう。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:42:14.59 ID:YZQkYMXJO
- 一度だけ大きく伸びをしてモララーは歩き始めました。
道の雪はもうほとんど溶けてしまっていて、
道の隅っこや、いつも影になっている家と家の間にしか残っておりませんでした。
雪のなくなった道をモララーはせっせと歩きます。
道行く人々は間もなくやってくるクリスマスの準備に忙しそうです。
近所のケーキ屋さんも、一丁目で一番大きな八百屋さんも、
うるさい親父がいる魚屋さんまでもクリスマスカラーに染まっています。
もちろんそれはブーンのいる食堂も例外ではありませんでした。
食堂の入口脇に大きなクリスマスツリーを置いて……
( ;ω;)「おーん……おーん……」
ツリーの根本では泣きながら丸まる太った猫がいて……。
いったいぜんたいどうしたというのでしょう。
ξ--)ξ「スリーアウト。それで捨てられたらしいわよ」
( ・∀・)「スリーアウト?」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:45:33.61 ID:YZQkYMXJO
- 横から話しかけてきた猫の名はツンといいました。
くるくると巻いた亜麻色の長毛がなんともかわいらしい猫で、同時にブーンの想い猫でもありました。
ξ゚听)ξ「ええ、なんでも『店の物に三回手を出したら問答無用で捨てる』って店の主人に言われてたらしいわよ」
( ・∀・)「なるほど、だから昨日まだツーアウトとか言ってたのか……」
ξ--)ξ「ま、野良猫になれば多少は痩せるでしょ。あいつには丁度いいんじゃない?」
ごもっとも。
と、モララーは思いましたが、ずっと泣いてるブーンの姿を見ると少々気の毒にも思えました。
仕方がないのでモララーはブーンを慰めてやることにします。
( ・∀・)「おい、ブーン。いつまでも泣いてるなんてカッコ悪いぞ」
( ;ω;)「お……。モララーかお……」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:49:24.23 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「あーあー。そんなとこで寝てるから折角の白い毛が土まみれだ」
( ;ω;)「ブーンはもうダメだおー……」
( ・∀・)「なに言ってるんだ。ほら、魚屋行こうぜ。反省会だ」
モララーはブーンを無理矢理起こし、ヨロヨロと歩くブーンを魚屋まで連れていくことにしました。
いつもならご飯の話となればすごいスピードで走っていくのですが、
どうやら捨てられたのが相当ショックなようで、ブーンの足取りはひどく重いものでした。
道中、パトロール中のギコも合流して三匹で魚屋へむかいます。
魚屋に到着すると、裏口からモララーが猫撫で声で一鳴き。
すると痩せこけた店主が姿を現しました。
('A`)「おお、ギコにモララーにブーンか。なんだ?また売れ残りの魚が所望か?」
( ・∀・)「ナーオ」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:52:18.60 ID:YZQkYMXJO
- ('∀`)「よしよし。ちょっと待ってな。いいもん持ってきてやっからよぉ」
店主はそう言って慌てて店の中へ引っ込んでしまいました。
実はこの店主、魚屋のくせに無類の猫好きでありまして、
このように野良猫に売れ残った魚を振る舞ってくれるのです。
モララー達は残飯にいいものがなかったり、鳥やネズミが捕れなかった時などは決まってこの魚屋にやってくるのでした。
('∀`)「ほぉれおまえら。メバルの尾頭付きだぞ」
店主が持ってきたのはなかなかいい大きさのメバルが三尾。
一人一尾と言いたいところですが、実際一尾全部なんて食べられません。
いつもならギコとモララーの食べ残しはブーンの胃袋に収まるのですが……
( ;ω;)「おーん……おーん……」
生憎ブーンがこの様子。
三尾は少々多いかもしれません。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:55:12.25 ID:YZQkYMXJO
- 店主はモララー達の頭をそれぞれ一度ずつ撫で、店の中に消えていきました。
そのあと普段より威勢のいい営業の声が響くのは、いつものことです。
(,メ゚Д゚)「あー……。うっせぇな、あの親父」
( ・∀・)「いつものことだよ。我慢我慢」
( ;ω;)「おーん……おーん……」
店主が持ってきたメバルを食べながら、ブーンの話を始めます。
これからはブーンもモララー達野良猫の仲間入りです。
(,メ゚Д゚)「ブーン、泣くな。仕方ないだろうお前が悪いんだし……」
( ・∀・)「野良猫はいいよー。気楽だしやりたいことやれるし」
( ;ω;)「ちがうお……ブーンは……ブーンは……」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 01:58:41.54 ID:YZQkYMXJO
- (,メ-Д-)「気持ちはわかる。今までずっと飼われてたのに突然捨てられて……」
(#;ω;)「違うんだお!ブーンは捨てられたのが悲しいんじゃないんだお!」
ブーンが突然声を荒げます。
二匹ともこんなに感情を露にするブーンは初めて見ました。
ブーンは鼻息を荒くして、背中の毛を逆立てて、続けます。
(#;ω;)「ブーンは!今度のクリスマスのために食べ物を盗ったんだお!!
今年のツンへのクリスマスプレゼントのために!!」
( ;ω;)「……でも捨てられちゃったらツンにプレゼントあげられないお……
それがすごく悲しいお……」
二匹は唖然としてしまいました。
ブーンと言えばまず食べ物の事を考えていて、
それ以外の時にツンの事を考えているものだと思っておりました。
それほどブーンの食に対する執念は凄まじかったのですから。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:01:13.08 ID:YZQkYMXJO
- ( ;ω;)「おーん!おーん!ツンごめんおー!!」
(;・∀・)「な、泣くなって。まだクリスマスまで時間があるだろ?
俺達もプレゼント探すの手伝うからさ……」
幸い、クリスマスまでまだ今日も合わせて2日あります。
その気になれば、きっとそれなりのプレゼントも用意できるでしょう。
しかしブーンは納得しません。
( ;ω;)「ちがうおー!だめなんだおー!!あの食堂で作ったプリンじゃなきゃだめなんだおー!!」
(;メ゚Д゚)「プリンだぁ?」
( ;ω;)「ツンと約束したんだおー!!今年のクリスマスはプリンをプレゼントするって!!」
(;・∀・)「ちょっと待て。今プリンを確保したところでクリスマスには傷んじゃうだろ」
( ;ω;)「お……?」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:05:14.89 ID:YZQkYMXJO
- (,メ゚Д゚)「もしプリン盗ったのがばれずにクリスマスを迎えてたら……、
お前はツンに傷んだプリンをプレゼントしてたってわけだ」
(;^ω^)「あ……」
( ・∀・)「結果オーライだよ。ツンのプレゼントに関しては残念だったけどね」
(,メ-Д゚)「そうそう。ツンに傷んだプリンなんかプレゼントしてみろ」
(((;^ω^)))
(((;・∀・)))
(((;メ゚Д゚)))
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:07:44.60 ID:YZQkYMXJO
- 日は少し傾き、どこからか人間のおばさん達の笑い声が聞こえてきます。
ブーンはというと先ほどの涙はどこへやら、いつもと変わらぬ笑顔で歩いておりました。
その両隣には同じく笑顔の猫がおり、
三匹は笑いながら歩いて行きます。
( ^ω^)「ツンには明日ちゃんと謝るお。きっと許してくれるお」
(,メ゚Д゚)「あいつも鬼じゃないしな」
( ・∀・)「たかだかクリスマスプレゼントだし」
( ^ω^)「なに言ってるんだお。クリスマスプレゼントっていうのは特別なものだお」
( ・∀・)「……は?」
(,メ゚Д゚)「当たり前だろ。何たってクリスマスは聖なる夜だからな」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:10:43.20 ID:YZQkYMXJO
- クリスマスは聖なる夜。
今までずっとクリスマスも普通の休日と同じと思っていたモララーには衝撃的な言葉でした。
みんなと別れて自分の寝床に戻ろうとしているときも、モララーはそのことについて考えます。
ああ、だから人間達はクリスマスを楽しみにしているのか。
だからクリスマスが近づくと街がいろいろと飾り付けられるのか。
今思えば思い当たる節はいくつもありました。
( ・∀・)(クリスマス……ねぇ)
そんなロマンチックな夜は恋人と過ごすのが普通なのでしょう。
しかし、生憎モララーにはそのような相手はおりません。
一瞬、一匹の猫の姿が脳裏に浮かび上がりましたが、すぐに首を振ってその妄想を打ち消しました。
太陽はもう沈みそうで、空は赤く染まっております。
月が出てくるまでもう少しです。
今日の月は一体どんな表情をしているのだろう。
モララーはそんなことを考えながら夜が来るのを今か今かと心待ちにしているのでした。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:13:32.63 ID:YZQkYMXJO
- 太陽が完全に沈んだ頃、東の空から月が昇ってきました。
昨日はにっこり笑っていた月は、今日はどうやらご機嫌ななめなご様子です。
モララーは月が出たのを確認すると、せっせ、せっせと歩き出します。
待ち合わせは二匹が始めて出会った場所。
でぃは今日もそこでいつもと同じように月を見上げて、ちん、と座っているのでありました。
ただ、いつもと違ったのは……
(#゚;;-゚)「こんばんは、モララーさん」
( ・∀・)「こんばんは、でぃ」
今日はやたらとモララーの来る方向を気にしていた事くらいでしょうか。
軽く挨拶を済ませた二匹は、何か簡単な世間話をするわけでもなく、さっさと歩き出すのでした。
一丁目の大通りを抜け、二丁目の公園を通り、三丁目にある山を登ります。
そこからは獣ですら通らないであろう獣道をずんずん進んでゆくのです。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:17:15.08 ID:YZQkYMXJO
- この道を通るのは二度目です。
相変わらず道とは呼べない道を二匹はせっせと歩いています。
そうして雪月花の茂みが見えました。
あそこを抜ければ昨日のあの広場に到着です。
( ・∀・)「到着!」
雪月花の茂みから勢いよく飛び出したのはモララーでした。
でぃはその後から、もぞもぞと姿を現しました。
二匹は広場の中心に行き、今日も月を見上げます。
ご機嫌ななめな今日の月。
いったい何があったのでしょう?
モララーは考えを巡らせます。
でぃも考えを巡らせます。
しかし答えが出るわけありません。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:20:34.94 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「今日の月は機嫌が悪い見たいだね」
(#゚;;-゚)「そうですね」
( ・∀・)「何があったんだろう」
(#゚;;-゚)「私には……わかりません」
( ・∀・)「だよねー」
そこで会話は止まります。
二匹はぼんやりと空を見上げ、月に問いました。
なんで今日はそんなにご機嫌ななめなの?
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:24:30.12 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「ああ、そうだ、でぃ」
(#゚;;-゚)「はい?」
( ・∀・)「クリスマス、何か欲しい物ってある?」
(;#゚;;-゚)「……はい?」
突拍子もないモララーの質問に、でぃは目を真ん丸にしました。
なんの脈絡もなく、突然クリスマスの話をしだしたのですから。
( ・∀・)「せっかくのクリスマスなんだからさ、出来る範囲でプレゼントしてあげようと思ったんだけど……ダメかな?」
(;#゚;;-゚)「い、いえ!そんな……ダメなんかじゃ……。
ただ……その……申し訳ないっていうか……」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:28:19.90 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「申し訳ないなんてことないよ。クリスマスなんだし」
(;#゚;;-゚)「は、はぁ……」
(#゚;;-゚)「で、では……その……少々厚かましい願いではありますが……聞いていただけるでしょうか」
でぃがモジモジしながらモララーに聞きます。
一度遠慮しようとはしましたが、どうやらどうしても欲しいものがあったみたいです。
上目遣いでモララーを見て、話を続けます。
(#゚;;-゚)「その……私……友達が欲しい……です」
( ・∀・)「友達……?」
(#゚;;-゚)「はい……私には友達がいないので……」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:31:07.36 ID:YZQkYMXJO
- でぃのお願いに、モララーは驚きを隠せませんでした。
友達がいない?なんでそんなことを……?
だって、そんなわけないじゃないか……。
モララーは一歩だけでぃに歩み寄り、その目をじっと見つめながら言いました。
( ・∀・)「僕は君の友達じゃないの?」
(#゚;;-゚)「……えっ?」
さも意外そうにでぃが聞き返しました。
どうやら彼女はモララーのことを友達と思っていなかったようです。
モララーは少しへこみました。
(;・∀・)「うーん……。僕は君の友達だと思ってたんだけどなぁ」
(;#゚;;-゚)「えっ……えっ?」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:34:13.22 ID:YZQkYMXJO
- へこむモララーと、あわてふためくでぃ。
そんな二匹を見下ろす月は、やはりご機嫌ななめのご様子です。
(#゚;;-゚)「あ、あの……。モララーさん……?」
( ・∀・)「なんだよ」
おやおやどうやら困ったことにモララーもご機嫌ななめのようです。
昔から無表情な彼の顔からそれを読み取るのは難しいですが、
機嫌が悪いということは今の言葉の返し方からわかります。
しかしでぃはそれに気づいているのでしょうか、
少し嬉しそうな表情で続けます。
(#゚;;ー゚)「あの……モララーさんは……私のこと、友達って思ってくれるんですか……?」
( ・∀・)「そうだよ」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:37:17.89 ID:YZQkYMXJO
- (*#゚;;ー゚)「ほ、ほんとですか……?」
(#・∀・)「ああそうだよ!それが!?」
吐き捨てるようにモララーが言います。
友達だと思っていた相手に面と向かって友達じゃないと言われたようなものですから、
仕方ないと言えば仕方ないでしょう。多少自分勝手な気もしますが。
果たしてでぃはそれをどのように受け取ったのでしょうか。
でぃは両の目からポロポロと涙を流して泣き始めてしまいました。
さすがのモララーもこれには焦ります。
(;・∀・)「あわわわわわわご、ごめん!ちょっとキツく言い過ぎた!」
(*#ぅー∩)「?」
でぃは両の目の涙を拭い、不思議そうな顔をします。
モララーもそんなでぃの表情を見て不思議そうな顔をしました。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:40:10.37 ID:YZQkYMXJO
- (#ぅ;-゚)「どうしてモララーさんが謝るんですか?」
(;・∀・)「……え?いや、だから、その、泣かせちゃったし……」
(#ぅ;-゚)「違いますよ。私は嬉しくて泣いてるんです」
(;・∀・)「えっ……?嬉しくて……?」
(#ぅ;-゚)「はい……私がモララーさんと友達っていうのが……嬉しくて……」
( ・∀・)「……えっ?」
( ・∀・)「僕と友達ってのが嬉しくて?」
(*・∀・)「……」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:43:43.82 ID:YZQkYMXJO
- モララーの機嫌は元通り。
いや、元通りどころか上機嫌になっておりました。
でぃの両の目からはまだ涙の粒がポロポロと流れておりましたが、
彼女は間違いなく、笑顔でした。
モララーは一匹ではしゃいで跳び回っています。
ピョンピョンピョンピョン、まるでうさぎのように。
しかし跳び跳ねて着地する時、運悪く石につまづいて転んでしまいました。
びっくりしてしっぽが膨らみます。
恥ずかしそうに起き上がり、ちらと後ろを振り向くと、
ようやく泣き止んだらしいでぃと目が合ってしまいました。
それがなんだかおかしくて、二匹は大きな声で笑いました。
月は相変わらずご機嫌ななめのご様子です。
きっと仲の良い二匹の仲間に入れてもらえないからふて腐れているのでしょう。
誰もいない山の広場では二匹の猫の笑い声がいつまでもいつまでも響いているのでした。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:46:11.87 ID:YZQkYMXJO
- * * * * *
次の日のことです
(*・∀・)フンフンフン
朝早くからモララーは上機嫌で歩いておりました。
それは今日がクリスマスイヴだからでしょうか。
理由はわかりませんが、モララーは上機嫌で雪のない道を歩いていきます。
行き先はブーンの食堂……いえ、“元”ブーンの食堂です。
(*・∀・)「フンフンフン……ん?」
食堂の前から誰かの声がしました。
しかし、聞いたことのない声でした。
_
( ゚∀゚)「よーよー。お嬢ちゃーん」
爪'ー`)「かわいーねー。ちょっと僕らと一緒に来てよー」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:49:59.64 ID:YZQkYMXJO
- なんとこの時期にナンパです。
冬なのに発情期みたいなノリの奴がこんなところにもいたなんて、とモララーは唖然としました。
ところでこんな時期にナンパされてるかわいそうな猫は誰でしょうか。
モララーが建物の陰からそーっと覗き込むと、そこにいたのは……
ξ#゚听)ξ
( ・∀・)「ぶふぉっwww」
なんということでしょう。
事もあろうか猫達がナンパしてたのはツンでした。
この街でツンをナンパしようなんていう馬鹿な猫はブーンくらいしかいません。
きっとあの二匹組の雄は隣街の猫でしょう。
モララーはかわいそうな運命を辿るであろう二匹を見物することにしました。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:52:24.35 ID:YZQkYMXJO
- ところが、ここで予想外の事が起きたのです。
(#^ω^)「待つお!!」
_
( ゚∀゚)爪'ー`)「!?」
ξ;゚听)ξ「ぶ、ブーン……?」
(;・∀・)「何やってんだあの馬鹿……」
元飼い猫で太っていて喧嘩はからっきしの猫、ブーンが猫達とツンの間に割って入りました。
二匹組の雄猫は頭は悪そうですが喧嘩は多少強そうです。
そんな奴らにブーンが敵うわけありません。
モララーは慌ててブーンを助けようとしました。
しかし、後ろから誰かに首根っこをくわえられ、身動きが取れなくなってしまいました。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:55:19.15 ID:YZQkYMXJO
- (#・∀・)「何すんだ!離せ!」
(;メ゚Д゚)「落ち着け、俺だ」
背中から聞こえてきたのはギコの声でした。
モララーは振り返り様に引っ掻いてやろうと思って出していた爪を引っ込め、
その場にペタンと腰を下ろしました。
(;・∀・)「なんだギコか……。なんで止めるんだよ。このままじゃブーンが……」
(,メ゚Д゚)「いいから黙って見とけ」
言いたいことはいろいろありましたが、モララーはギコを信じてもうしばらく傍観することに決めました。
_
( ゚∀゚)「何だぁ?おめぇ……」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 02:58:02.41 ID:YZQkYMXJO
- (#^ω^)「ブーンは……ブーンだお!」
爪;'ー`)「いや意味わかんないから」
(#^ω^)「ツンに手を出すなお!!」
ξ゚听)ξ「ブーン……」
_
( ゚∀゚)「おうおう。てめー、俺達が誰だか知ってんのか?」
(#^ω^)「知らねーお!」
_
( ゚∀゚)「知らねーなら教えてやろう……。聞いて驚くな!隣街の暴れん坊、ジョルジュとフォックスってぇのは俺達のことよ!」
(#^ω^)「知らねーお!」
爪;'ー`)「知らないのかよ」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:00:34.59 ID:YZQkYMXJO
- |;゚Д゚)「ジョルジュとフォックスだと!?」
|;・∀・)「知ってるの?」
彼らの名前を聞いて唯一反応したのはギコでした。
隣街の猫の事も把握してるとは、さすがこの街のボス猫です。
|;゚Д゚)「隣街のボスから聞いた話だと、あの二匹は狩りもせず雌猫の尻を追っかけてばっかで、
この前なんか三日間食事も取らず雌の尻追っかけててぶっ倒れたとか……」
|;・∀・)「これはひどい」
|;゚Д゚)「そのくせ喧嘩は強いらしい」
|;・∀・)「誰にでも一つくらいは特技があるもんね……ってブーン大丈夫かなぁ!?」
|メ゚Д゚)「いざとなったら助けにいけばいいだろう」
|;・∀・)「ブーン……」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:03:30.86 ID:YZQkYMXJO
- モララーの心配をよそに、ブーン達の方では早くも火花が飛び散っていました。
_
( ゚∀゚)「そこどけよ、豚」
(#^ω^)「いやだお」
_
( ゚∀゚)「痛い目にあいたいのか?」
ξ;゚听)ξ「ブーン……」
( ^ω^)「ツン、大丈夫だお。ただ……こいつらとの仕合が終わったら……」
ξ;゚听)ξ(仕合……?)
( ^ω^)「ブーンと、結婚して欲しいお」
ξ゚听)ξ「!!」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:06:44.55 ID:YZQkYMXJO
- |;・∀・)「あ、あの馬鹿自分で死亡フラグ立てやがった」
|メ゚Д゚)「愛する女のために命を捨てる……。素晴らしいことじゃないか」
|;・∀・)「死なせないようにしようね」
モララーの不安は募る一方です。
ブーンは相変わらずジョルジュとにらめっこを続けておりました。
_
( ゚∀゚)「……どうやら痛い目に遭いたいらしいな」
( ^ω^)「……ツンはここから逃げるお」
ξ゚听)ξ「……うん」
いつになくブーンは真剣です。
ツンは慌ててその場から離れます。
ギコとモララーは心配そうな目でそれを見つめています。
……そして、まずはジョルジュが動きました。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:09:59.65 ID:YZQkYMXJO
- _
(#゚∀゚)「おらぁぁあ!!」
ジョルジュが爪を出し、多少大振りに見えるそれはブーンの頬を引っ掻きにきました。
あれならいくらブーンでも避けれる、そうモララーは直感しました。
(彡;ω;)「ぶひっ!?」
|;・∀・)「ちょっ」
|メ゚Д゚)「えー……」
ところがその身を包む脂肪のせいか、
それとも初めての喧嘩に緊張して体が動かないのか、
ブーンは簡単に避けられるはずの攻撃をモロに受けてしまいました。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:12:08.72 ID:YZQkYMXJO
- _
( ゚∀゚)「おらおらぁ!なんだなんだなんもしてこないのかぁ!?」
(;彡#)ω×)「おっ……おっ……」
ブーンはジョルジュの攻撃をただただ受けるだけです。
避けることも、反撃することもありません。
|;・∀・)「何やってるんだよアイツ……!!」
|メ゚Д゚)「きっと何か考えがあるんだろう。ブーンを信じろ」
|;・∀・)「う……」
モララーは飛び出したい気持ちを必死に抑えます。
しかしそんなことをしているうちにもブーンの自慢の白い毛はどんどん朱に染まっていきました。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:14:44.38 ID:YZQkYMXJO
- _
(#゚∀゚)「オラオラァ!!」
(;彡#)ωメ)「う……」
一方的に殴られ続けるブーン。
もうそろそろモララーも我慢の限界です。
なぜブーンは自分から何もしないんでしょう。
(彡#)ωメ)「ツン、言ってたお……」
_
(#゚∀゚)「ああ?」
ボロボロのブーンが口を開きます。
ジョルジュも思わず攻撃の手を止めてしまいました。
(彡#)ωメ)「暴力を振るう猫は嫌いだって……。
暴力でなんでも解決しようとする猫は弱虫なんだって……」
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:17:35.81 ID:YZQkYMXJO
- (彡#)ωメ)「僕はツン好きだから……ツンの嫌いな暴力は絶対に振るわないお!!」
_
( ゚∀゚)「……ぷ」
_
( ;∀;)「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!なんだこいつ!馬鹿だ!本物の馬鹿だ!」
_
( う∀゚)「ぶはっ……。こいつ俺にただ殴られるためにここにいるんみたいじゃねぇか」
_
( ゚∀゚)「……まぁ、それがお望みなら」
_
(#゚∀゚)「気の済むまで殴らせてもらうけどよぉ!!」
ジョルジュが再びブーンに攻撃を加えようとしました。
ですが、それはできません。なぜなら……
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:19:58.10 ID:YZQkYMXJO
- (,メ゚Д゚)「よく言った。ブーン。きっとツンもそれを聞いて喜んでるぞ」
(;・∀・)「あーあ。こんなにやられちゃって……大丈夫か?」
ブーンの前に立ち塞がる、二匹の雄猫。
その片方は隣街にまで名のしれた、立派なボス猫でありました。
_
(;゚∀゚)「その頬の傷……!まさかギコか!?」
爪;'ー`)「なんだって!?ギコだって!?」
ジョルジュとフォックスは先ほどまでの威勢も無くして、少しずつ後ずさりを始めました。
情けないことに、二匹とも両耳を倒して……。
(,メ-Д゚)「さて……、俺の友人が随分世話になったなぁ……」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:22:28.42 ID:YZQkYMXJO
- ギコが一歩歩み寄ります。
ジョルジュとフォックスは体勢を低くして服従のポーズを取りました。
しかし、そんなことをしても意味はありません。
なぜならギコは、怒っているのですから。
(#メ゚Д゚)「たっぷりと礼をしてやるから覚悟しろよ?」
_
(;゚∀゚)「や、やべっ!!逃げろ!!」
爪;'ー`)「ご、ごめんなさいーー!!」
(#メ゚Д゚)「待てやゴルァァァァ!!」
二匹の猫が雪のない道を大慌てで走って行きます。
そしてそれを一匹の猫が鬼の形相で追い掛けます。
しかし、いくらギコの足でも二匹に追いつく事はできないようでした。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 03:25:24.85 ID:YZQkYMXJO
- _
(;゚∀゚)「よし!このままいけば逃げ切れるぞ!!」
ジョルジュが叫んで更に走ります。
このままなら逃げ切れると、確信して。
確かにこのままなら逃げ切れたでしょう。
ところがどっこい、そんなに上手く行くわけがありません。
ξ゚听)ξ「逃がさないわよ!!」
ジョルジュ達の行く先を塞ぐのは、亜麻色の美しい巻き毛を持った猫、ツンでありました。
_
(#゚∀゚)「どけぇ!!クソアマァァァァ!!」
ジョルジュが右の前足をツンに向かって振り下ろします。
ジョルジュ達の後ろの方でギコの「あ……」という声が聞こえました。
ゴシャッ!
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:00:29.56 ID:YZQkYMXJO
- 鈍い音が響きました。
フォックスはその場で呆然しております。
ギコは額に手を当て、「あちゃー……」と呟きました。
音の発信源では
(;##∀メメ)
顔面を思い切り地面に打ち付けて、ぴくりとも動かないジョルジュがおりました。
ξ゚听)ξ「ふん。喧嘩を吹っかけてきたあんたが悪いのよ」
ツンは冷たくそう言い放ちました。
* * * * *
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:03:30.21 ID:YZQkYMXJO
- ξ゚听)ξ「馬鹿よ。アンタ。本当に馬鹿」
(;彡#)ω^)「おー……」
ξ--)ξ「大体ね?やらなきゃ自分がやられるって状況で、
暴力はダメだから何もしないなんて有り得ないでしょうが」
(;彡#)ω`)「おー……」
ξ--)ξ「あーあ。……こんなのが旦那だなんて、先が思いやられるわ」
(;彡#)ω^)「おっ!?」
ξ゚听)ξ「あら、アンタ言ってなかった?『この仕合が終わったら結婚してくれ』って」
(;彡#)ω^)「と、ということは!?」
ξ゚ー゚)ξ「……幸せにしてくれなきゃ、許さないんだからね」
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:06:13.20 ID:YZQkYMXJO
- (;彡#)ω^)「お……お……」
(;彡#)ω;)ブワッ
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと!なんで泣くのよ!」
(;彡#)ω;)「だって……だって……うれしいんだお……」
ξ;゚听)ξ「だ、だからって泣くことないじゃない!!馬鹿!!」
(,メ゚Д゚)「ふむ。ハッピーエンドだな」
(;・∀・)「あの二匹は気の毒だったけどね……」
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:09:35.81 ID:YZQkYMXJO
- ジョルジュはあのまま、フォックスはギコとツンに思いっきりお仕置きをされ、気を失ってしまいました。
フォックスは特に何もしていなかったのにボコボコにされて、本当にお気の毒です。
(,メ゚Д゚)「あ、そうだ。モララーに聞きたい事があってな」
( ・∀・)「ん?何?」
(,メ゚Д゚)「でぃの事なんだが……」
唐突な質問でした。
いきなりでぃの名前が出たので、モララーは心底驚きました。
同時に嫌な予感もしました。
( ・∀・)「……でぃがどうしたの?」
(,メ゚Д゚)「気になっていろんな猫に聞いて回ってみたのよ。
だけどどの猫もでぃの事を知らないんだ……。
お前……あれからでぃに会ったか?」
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:13:04.47 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「会ったよ。……でも、彼女……自分の家について聞いてほしくないみたいだった」
(,メ゚Д゚)「そりゃまた。どうして?」
( ・∀・)「理由も……聞いてほしくないみたい」
(,メ-Д゚)「……ふぅん」
……その時のギコの怪訝そうな顔は、モララーの脳裏に張り付いて、中々消えませんでした。
* * * * *
夜になりました。
モララーは体を起こし、空を見上げます。
今日の月はなんだか悲しそうな表情をしてました。
( ・∀・)「よし、行くか」
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:16:17.24 ID:YZQkYMXJO
- 誰に言うわけでもなくそう呟いて、モララーは歩き始めます。
(メ^ω^)「お?モララー……?」
ξ゚听)ξ「どこに行くのかしら……」
雪のない道をモララーはせっせと歩いて行きます。
今夜はクリスマス・イブ。
あちこちの家からは人間達の歌声が響きます。
人間達は本当に楽しそうです。
しかし、月はどうしてあんなに悲しそうな表情をしているのでしょうか。
そんなことを考えてると、すぐにいつもの待ち合わせ場所に着きました。
(#゚;;-゚)「こんばんは。モララーさん」
( ・∀・)「こんばんは、でぃ」
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:20:39.95 ID:YZQkYMXJO
- 今日はでぃは空を見上げておらず、モララーが来る方向をじっと見ておりました。
そして、モララーの姿が見えた瞬間、でぃの表情が明るくなったように見えました。
( ・∀・)「じゃあ、行こうか」
(#゚;;ー゚)「はい」
でぃが元気よく頷くと、首輪の鈴がリン、と音をたてます。
その透き通った鈴の音は夜空へスゥと消えて行きました。
モララーが笑顔で歩き始めます。
でぃは笑顔でそれに続いて行きました。
(メ^ω^)「モララー……。一人で何やってるんだお?」
ξ゚听)ξ「ブーン。私、もう帰らないとご主人様が……」
(メ^ω^)「お!送ってくお!」
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:23:23.21 ID:YZQkYMXJO
- モララー達はいつもの道をせっせ、せっせと歩いて行きます。
今日で三度目、非常に慣れた足取りで山を登って行くのでした。
獣道を抜け、雪月花の茂みを抜けると、いつもの広場に到着です。
(#゚;;-゚)「ここは本当にいい場所ですね。いつ来てもそう思います」
( ・∀・)「そうだね。静かだしねー」
二匹はいつものように広場の中心へ行き、腰を下ろします。
白く輝く月は、どこか悲しそうな表情でモララー達を見下ろしています。
( ・∀・)「ねぇ、でぃ……」
(#゚;;-゚)「はい?」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:26:24.59 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「寒いね」
(#゚;;-゚)「はい」
( ・∀・)「もっとこっちにおいで。体をくっつけた方が暖かいよ」
(#゚;;-゚)「……いえ、結構です」
あら、振られちゃったなとモララーは苦笑い。
でぃはそんなモララーを見てクスクスと笑います。
( ・∀・)「今日も月が綺麗だね」
(#゚;;-゚)「そうですね」
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 04:29:15.46 ID:YZQkYMXJO
- 月は悲しそうな表情ですが、とても綺麗でした。
しかしずっと月を見ていると、こちらまで悲しい気分になってきます。
モララーはにっこり笑って、でぃに話かけます。
( ・∀・)「また明日も見に来ようね」
(#゚;;-゚)「……そうですね」
でぃもにっこり笑ってモララーに返します。
しかし、その笑顔もどこかぎこちないものに見えました。
モララーの脳裏にギコの怪訝そうな顔が浮かび上がります。
(#゚;;-゚)「あの……モララーさん」
( ・∀・)「なに?」
でぃがモララーに話掛けます。
しかしどこか寂しそうな表情でした。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:00:13.04 ID:YZQkYMXJO
- (#゚;;-゚)「あの、ありがとうございました」
( ・∀・)「なんだよ突然……変なの」
(#゚;;-゚)「あの……私の友達になってくれて……」
にっこり笑ってでぃは話続けます。
話をする彼女の表情はとても幸せそうでした。
(#゚;;-゚)「私……昔……いじめられてて……」
( ・∀・)「えっ……?」
(#゚;;-゚)「飼い主さんに……虐待されてたから……体中傷だらけで……それで……」
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:04:00.66 ID:YZQkYMXJO
- (#゚;;-゚)「みんな私を気持ち悪いって言って避けたんです……だから、友達ができなくて……」
(#゚;;-゚)「そのうち飼い主さんにも捨てられて……私、一人ぼっちになっちゃって……」
(#゚;;-゚)「だから、モララーさんに友達だって言って貰えて嬉しかったです」
(#゚;;-゚)「本当に、ありがとうございました」
深々とお辞儀をするでぃ。
その目にはうっすらと涙が浮かんでおりました。
( ・∀・)「でぃ……」
( ・∀・)「なーに言ってんだい。友達なんて、いくらでも作れるよ」
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:07:07.57 ID:YZQkYMXJO
- (*・∀・)「そうだ!明日のクリスマス!僕の友達を連れて来るよ!」
(#゚;;-゚)「え……?」
(*・∀・)「いい奴らばかりだからね、きっとすぐに仲良くなれるさ」
(#゚;;-゚)「そ、そうですか?ありがとうございます……」
(*・∀・)「そしたらきっとさ、そんな昔の事忘れるくらい楽しくなるよ!」
(#゚;;-゚)「モララーさん……」
(#ぅ;-T)「あの……本当に……ありがとうございました……」
(*・∀・)「いーのいーの!明日を楽しみにしててね」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:09:52.90 ID:YZQkYMXJO
- ( ・∀・)「じゃあ今日はもう遅いし、帰ろうか」
(#゚;;-゚)「あ、私はもう少し残ります」
( ・∀・)「えっ……。でも、帰り道」
(#゚;;-゚)「大丈夫ですよ。三回も来たんで、もう覚えました」
( ・∀・)「でも……」
(#^;;-^)「大丈夫ですって。そんなことより、明日楽しみにしてますから」
(*・∀・)「!」
(*・∀・)「わかった!まかせといて!」
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:12:10.65 ID:YZQkYMXJO
- (#^;;-^)「はい」
(*・∀・)「じゃあね!バイバイ!」
(#^;;-^)「はい。さようなら」
(#゚;;-゚)「……さようなら、モララーさん」
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:15:08.95 ID:YZQkYMXJO
- 誰もいなくなった広場で、でぃは月を見上げます。
月を見上げて、涙を流します。
―――ああ、お月様。見てください。
こんな私にも友達ができました。
気持ち悪いと迫害され続けていた、私にも友達ができました。
たった四日……たった四日間でしたが、本当に楽しかったです。
―――これで、もうこの世に未練はありません
(# ;ー )「……本当に、ありがとうございました。モララーさん……」
最後に呟いた言葉は、モララーには届きませんでした。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/16(月) 05:17:19.43 ID:YZQkYMXJO
誰もいなくなった広場を月が見ています。
白い、雪のように白い雪白の月。
冬の光は町を優しく包みます。
しかし、今日の月はなんだかとても悲しそう。
そう、とてもとても、悲しそうでありました。
( ・∀・)雪白の月のようです(#゚;;-゚) 終わり
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