- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:09:39.45 ID:CLG3dS4ZO
- 20世紀当初、子供達にとってサンタクロースはごく当たり前の存在でした
クリスマスの前にサンタクロース宛の手紙を書いて、プレゼントをお願いすると、
サンタクロースはそのプレゼントを持ってその子の家に現れ、
決して誰かに姿を見られることなく、子供の枕元にプレゼントを置いて行ってくれたのです
しかし21世紀になり、子供達はサンタクロースを信じなくなりました
文明も発達し、夜寝ない子供も増えました
クリスマスの前にサンタクロース宛に手紙を出す子ももうほとんどいません
いつの間にか子供達にとってサンタクロースは『おとぎばなしの住人』でしかなくなってしまったのです
その結果サンタクロース達の仕事は減り、彼らはサンタを辞めざるを得なくなりました
サンタを辞めた人々は今どうしているのでしょうか?
じつは彼らは私達と同じ町で、一緒に生活しているんです
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:12:11.68 ID:CLG3dS4ZO
ほら、あそこにも一人……
('A`)は子供達に夢を与えるようです
* * * * *
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:20:28.09 ID:CLG3dS4ZO
- (;'A`)「びゃっくしょい!!」
彼の名前はドクオと言いました
彼は元サンタクロースですが、サンタを辞めてからはなかなかいい仕事が見つからず、
今日までずっと働かないで、家も持たずに暮らしてきました
('A`)「……今年ももうクリスマスか……」
そう言ってドクオは白いため息を漏らします
毎年クリスマスになると彼は悲しい気持ちになるのです
街を歩いているとクリスマスプレゼントを母親にねだる子供の声が耳に入ってきます
テレビではなにも知らない人々が妄想で作り上げたサンタクロースがアニメの中で動き回ります
しかし、今晩やってくるはずのサンタクロースについて話す子供はいませんでした
でも仕方ありません
今やサンタクロースを期待する子供なんていないし、
事実、今晩サンタクロースがやってくるなんてことは有り得ないのですから
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:31:58.26 ID:CLG3dS4ZO
- ('A`)「はぁー……」
ドクオはさらに深いため息をつきます
騒がしい街を歩いていると、なんだか自分が空気のように感じられました
もう、この世界にサンタクロースは……自分は必要ないものとされているのだと思うと、
なんだかとてもいたたまれない気持ちになるのでした
ドクオはコンビニでおにぎりを三つだけ買うと、それを持って近くの公園に行きました
ベンチに腰掛けておにぎりをかじっていると、近くで子供の言い争う声が聞こえます
('A`)「クリスマスイヴだってのに、ケンカだなんて無粋だなぁ」
残りのおにぎりを袋に戻し、ドクオは立ち上がりました
そしてゆっくりと声のする方向へと歩いて行きます
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:39:17.68 ID:CLG3dS4ZO
- ( ・∀・)「やーい、嘘つきー」
ノハ#゚听)「嘘じゃない!!」
<ヽ`∀´>「往生際が悪いニダ!サンタなんていないニダ!!」
(‘_L’)「そうだ!サンタは朝鮮人だったんだ!」
<;ヽ`∀´>「なんでそうなるニダ!」
ノハ#゚听)「サンタはいるもん!お母さんが信じてればきっと会えるって言ってたもん!!」
( ・∀・)「サンタなんて嘘っぱちだい!それにプレゼントだってお父さんやお母さんが買ってくれるもん!」
<ヽ`∀´>「そうニダ!サンタなんて必要ないニダ!」
(‘_L’)「わかった!サンタはスンナ派だ!」
<;ヽ`∀´>「だからなんでそうなるニダ!!」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:47:44.98 ID:CLG3dS4ZO
- 声の発信源では小学生くらいの子供達が言い争いをしていました
しかし男の子三人に対して女の子一人では、女の子が敵うわけありません
とうとう女の子は泣き出してしまいました
ノハぅ;)「嘘じゃないもん……」
( ・∀・)「泣いたー泣いたー。泣き虫ヒート」
<ヽ`∀´>「泣き虫ニダ!」
(‘_L’)「そうか!サンタは弱虫なんだ!」
<ヽ`∀´>「お前もう黙れ」
泣きはじめた女の子を見ても、男の子達は悪びれる様子もなく、さらに女の子をからかいます
女の子はその場に疼くまって泣き続けています
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 22:56:31.85 ID:CLG3dS4ZO
- もちろん、そんな現場を見て黙っているドクオではありません
例え腐っても元サンタクロース、子供のことは大好きです
('A`)「こらこら君達。女の子を泣かすとは何事だ」
(;・∀・)「うわ!だ、誰だコイツ!逃げろー!!」
(;'A`)「あ、コラ。ちょっと!?」
男の子達三人はドクオの姿を見るや否や、慌てて逃げ出してしまいました
ドクオはやれやれと肩を落とします
その時、女の子と目が合いました
涙で赤くなっていましたが、綺麗な目をしていました
('A`)(懐かしいな。昔の子供の目だ。それに……誰かに似てるな……)
('A`)(ああ、そうだ。クーだ)
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:04:57.39 ID:CLG3dS4ZO
- ドクオの言うクーとは、ドクオの元恋人で、サンタクロースでありました
しかしサンタクロースが解散する際に、別々の場所へ飛ばされてしまったため、
それ以来二人は会うことはできなくなってしまったのです
ノハぅ听)「……おじさん、だぁれ?」
('A`)「……え?ああ、おじさんの名前はドクオだよ」
ノパ听)「変な名前だなー」
('A`)「君は正直な子だね」
ドクオはそう言って笑いながら女の子の頭を撫でました
すると、同時に
グーキュルルル……
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:12:34.52 ID:CLG3dS4ZO
- ('A`)
ノパ听)
('A`)「……おにぎり食べる?」
ノハ*゚听)「うん!」
よっぽどお腹が空いてたのか、女の子はあっという間に残りの二つのおにぎりを平らげてしまいました
('A`)(晩ご飯どうしよう……)
ノハ*゚听)「ごちそうさまでしたぁぁぁぁぁ」
しかしドクオは残り百数円の金で今晩の夕食をどうしようか悩みながらも、
女の子の満足そうな顔を見て、幸せそうな表情を浮かべていました
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:20:04.16 ID:CLG3dS4ZO
- ノパ听)「ねぇおじさん。おじさんはサンタっていると思う?」
('A`)「えっ……?」
唐突な質問でした
おそらく、さっき男の子達に言われたことが気になっているのでしょう
('A`)「ああ、いるさ。……今でも」
ノパ听)「……お母さんもそう言う。でも、毎年毎年手紙を書いてるのに、一度も家に来てくれたことがないんだ」
(;'A`)「それは……きっと手紙を受け取る係の奴が偶然気づかなかったとか……」
ノパ听)「3さいの時から5年生になった今まで、毎年偶然気づかなかったの?」
(;'A`)「じゃ、じゃあトナカイが風邪引いちゃってるんだよ。あいつら案外デリケートだから」
ノパ听)「毎年風邪引くの?」
(;'A`)「それは……」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:27:02.74 ID:CLG3dS4ZO
- (;'A`)「じゃあ最近のサンタはみんな方向音痴なのかもしれない。日本のサンタの本部は樺太にあるから迷いやすいし……」
ノパ听)「おじさんってサンタに詳しいんだなー。おじさんはサンタかー?」
(;'A`)「俺が?サンタ……?」
ドクオは驚いて女の子を見ました
女の子は少し首を傾げた状態でドクオを見つめ返します
その目はガラス玉のように澄んでいて、とても綺麗でした
('A`)「……だったら、どうする?」
ノパ听)「え……?」
ドクオが逆に女の子に聞き返します
どうせ信じるわけがない、こんな薄汚れた格好をした男がサンタだなんて……などと考えながら
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:36:49.90 ID:CLG3dS4ZO
- ノハ*゚听)「おじさん!サンタなのか!?」
(;'A`)「えっ!?」
女の子はドクオの予想の斜め上を行く反応を示しました
ガラス玉のような目をキラキラと光らせ、ドクオの顔を見つめています
('A`)(ああ、まだこんな子もいたんだな)
文明が発達し、子供達の子供らしい感性が失われ、サンタが消えた世界で
なんの信憑性のない男の戯れ事に真剣に耳を傾け、失われたサンタに夢を馳せる少女がいる
ドクオは何か胸に込み上げて来るものを感じました
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:45:28.37 ID:CLG3dS4ZO
- ('A`)「君は……サンタを信じてくれるかい?」
ノハ*゚听)「信じるぞ!!」
('A`)「大人になっても、誰にどんな事を言われても、サンタを信じるかい?」
ノハ*゚听)「うん!大人になっても信じ続けるぞ!」
その言葉を聞いてドクオはたまらなく嬉しくなりました
サンタクロースを、自分の存在を認めてくれる人がここにいるのですから
('A`)「じゃあその気持ちを忘れちゃいけないよ。今の君の言葉を聞いたおかげで、
きっとサンタも今夜は君にプレゼントを持っていくはずだから」
ノハ*゚听)「ホントか!?」
('∀`)「もちろん。オレが保証するよ。だから今日は早く寝るんだよ」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/25(金) 23:55:04.16 ID:CLG3dS4ZO
- ドクオが女の子に微笑みかけると、女の子も嬉しそうな顔で返事をしました
そして、笑顔で
ノハ*^竸)「ありがとう!ドクオおじさん!!楽しみにしてるからな!!」
と、言って走り去って行きました
さて、女の子が公園が出て行ったのを見送ったドクオは、途端に真剣な表情に変わりました
ゆっくり自分の手を見つめて、フッ、と小さく笑います
('A`)「楽しみにしてる、か」
ドクオは何かを決意したかのように拳をギュッと握り、走り出しました
空はよく晴れ渡っていました
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:04:18.46 ID:CLG3dS4ZO
- * * * * *
ドクオがたどり着いたのは町のはずれにある乳即山でした
その山の中には小さな木造の山小屋があり、そこにはドクオのよく知る人物が住んでいるのです
( ^ω^)「また、珍しい客がきたおww10年ぶりかおwwww」
('A`)「ん、そんなもんかな」
彼はブーンと言いました
そして、ドクオと同じサンタクロースでありました
ただ、彼は子供達にプレゼントを配るサンタクロースではありませんでしたが
('A`)「今年も手紙は来てるか?」
( ^ω^)「来てるお。……相変わらず少ないけど」
ブーンの指さした方向には日本中から送られてきた、サンタクロース宛の手紙が並べてありました
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:13:35.04 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「11通か」
( ^ω^)「……そのうちの半分がサンタ批判の手紙だお」
たった11枚
しかも、そのうち6枚は『サンタ死ね』などの手紙でした
('A`)「今年は実質5通なんだな」
( ^ω^)「去年は6通、一昨年は8通、その前の年は11通だったお。数は順調に減少しているお」
全盛期には何万もの手紙が届いていたのですが、年を重ねるごとにその数は減少し、
サンタ解散の年にはすでに百通を下回っていました
( ^ω^)「でも……、たった五人でも、サンタを信じてくれてる子がいて嬉しいんだお」
('A`)「そうか」
ドクオは素っ気ない返事を返しながら、最近10年分の手紙を漁り始めました
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:20:44.63 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「あった……これが3歳の時の手紙か……」
ピンクの紙に汚い文字で書いてある手紙を見て、ドクオは薄く笑みを浮かべました
そして、同じ差出人からの手紙を引っ張り出し、今年のも合わせて計8通の手紙が集まりました
( ^ω^)「お、ヒートちゃんの手紙かお?
その子は3歳の時から毎年欠かさず手紙を書いてくれてるお」
('A`)「毎年欠かさず、か。今ではそんな子供はこの子だけなんだろうな」
( ^ω^)「その通りだお」
ドクオはまた「そうか」と素っ気ない返事をブーンに返して、ヒートの手紙を開けました
3歳の時の手紙はとても汚い字で読むのに苦労しました
('A`)「お、か、あ、ち、ん、に、げ、ん、さ、を、く、だ、ち、い……か」
まだ3歳にもかかわらず、自分のプレゼントではなく、母親の元気を頼むとは
ドクオはとても驚きました
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:30:30.95 ID:VnlVli1KO
- 4歳の手紙の内容も同じです
しかしドクオはなんで母親に元気がないのか、うっすら理解していました
続いて5歳の手紙
('A`)「おとうさんにあいたいです……か」
切実な内容でした
ドクオは胸の奥がなにかに強く締め付けられるような感じがしました
そして6歳、7歳、8歳、9歳と同じ内容の手紙が続きます
唯一変わったところは漢字を使っているかどうか、という点でしょうか
ドクオもブーンも言いようのない哀しさに言葉が紡げませんでした
ドクオに関しては最後の手紙を握る手が震え、目には涙がたまっていました
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:39:03.78 ID:VnlVli1KO
- 今年の彼女の手紙の封を開けます
その手紙の中身を見た時、とうとうドクオの涙腺が崩壊しました
『サンタさんへ
サンタのお仕事は大変だと思いますが、頑張って下さい
私はいつまでも待ってています』
手紙には綺麗な字で、そうとだけ書いてありました
(;A;)「……この子は、ずっと、俺達の事を待っててくれてるんだ」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:47:38.32 ID:VnlVli1KO
- ( ^ω^)「……」
(;A;)「今年の手紙はそれぞれどこから来てるんだ?」
( ^ω^)「東北から一通、関東から二通、中部から二通だお」
(っA`)「……なら、今夜中に回れない事もないな」
(;^ω^)「なっ!!?」
ブーンは驚きました
なぜなら今の時代、サンタクロースの仕事はかなり危険なものなのですから
(;^ω^)「お、おまっ!馬鹿かお!!」
('A`)「電話借りるぞ」
(#^ω^)「聞いてんのかお!!」
(#'A`)「うるさい!!」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 00:56:34.72 ID:VnlVli1KO
- (;^ω^)「っ……!?」
サンタクロースだった時代から一度も聞いた事のないドクオの怒鳴り声を聞いて、ブーンはたじろぎました
(#'A`)「……俺達の事を信じて待ってる子がいるんだ……!
子供達に夢を与える事がサンタの仕事なのに、俺達が子供達の夢を壊してどうするんだよ!」
(;^ω^)「うっ……」
ブーンは何も言い返さずに奥の部屋に入って行きました
ドクオは無言で電話をかけはじめます
プルルルル……
プルルルル……
ガチャ
『もしもし?』
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:05:10.76 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「もしもしシャキンか?ドクオだよ」
『おお!久しぶりだな!どうした?』
シャキンと言うのは、やはり元サンタクロースでトナカイの世話をしている人でした
サンタが解散した時に、トナカイを置いてはいけないと、一人サンタクロースの本部に残ったのです
('A`)「ショボンは元気か?」
『おう!みんな元気だぞ!声を聞くか?』
('A`)「いや、いい。とにかく、ショボンにそりと俺の服と袋を持たせて、乳即山に寄越してくれ」
『なんだなんだ!?またサンタでもおっぱじめる気か?ガハハハハ!!』
('A`)「ああ、そのつもりだ」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:13:19.14 ID:VnlVli1KO
- 電話の向こうからシャキンの笑い声が消えました
『……お前、正気か?』
('A`)「もちろん」
『……お前なぁ!人間に見つかったらどうなるか忘れたわけじゃないんだろうな!!』
('A`)「覚えてるさ。雪になるんだろ?」
サンタクロースと言うのは普通の人間とは違います
どちらかと言うと妖精とか精霊の部類で、人間に正体がバレると、体が雪に変わってしまうのです
そのため、昔からサンタは誰にも見つからないようにしていたのでした
『雪になるんだろって簡単に言うけどな……。それは実質的に死ぬ事になるんだぞ!!』
('A`)「その覚悟はできてる」
『それにな!!お前の正体がバレるとトナカイにかかった魔法も解けちまうんだ!!
そんなこt『シャキンさん、シャキンさん』ぞ!!』
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:21:32.34 ID:VnlVli1KO
- 受話器の向こうで、シャキン以外の声が聞こえました
ドクオの、よく知ってる声でした
『ショボン……?うおなにするやめr《ドガッ!!》』
(;'A`)「……」
『もしもしドクオ?一体どうしたんだい?』
それはドクオがサンタクロースだった時代、一緒に仕事をしていたトナカイのショボンでした
ドクオは懐かしさに胸がいっぱいになりましたが、懐かしんでる暇はないと、さっさと本題に入りました
('A`)「そりと、俺の服と袋を持って、今すぐ乳即山に来てくれ」
『唐突だね』
('A`)「無茶なことはわかってる。でも俺達の事を信じてくれてる子供達のためにも、もう一度サンタクロースが必要なんだ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:30:33.56 ID:VnlVli1KO
- 『信じてくれる子供達のために……ね。君らしいや』
('A`)「頼む……ショボン」
『断るわけないでしょ?昔のパートナーの頼みだもん
乳即山に着くのは9時頃になるけどいい?』
(*'A`)「あ……ああ!ありがとう!」
『うん。じゃあシャキンさんが起きないうちに準備してくるね』
受話器を起き、ドクオも準備のために外へ走り出しました
時刻は正午をちょっと過ぎたくらいでした
* * * * *
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:38:07.65 ID:VnlVli1KO
- ドクオが山小屋に戻った時には既に日は暮れていました
時刻は8時
ショボンが到着する予定の1時間前です
ドクオが山小屋の扉を開け、中を覗くと、ブーンが地図を見ながら何かをしている姿が目に入りました
('A`)「ブーン……?」
( ^ω^)「ドクオかお!丁度よかったお!!」
('A`)「これは……」
机の上に広げられた日本地図
それには赤い矢印で、関東にある乳即山からスタートして、手紙をくれた五人の家まで行くためのルートが細かく書かれていました
( ^ω^)「このルートを通れば、出来るだけ人目を避ける事ができるお」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:47:29.39 ID:VnlVli1KO
- (;'A`)「ブーン、お前……俺のために……?」
( ^ω^)「友達だからおね」
(;A;)「うっ……ブーン……ありがとう……ありがとう……」
(;^ω^)「泣くなお!泣かれるとなんか困るお」
(ぅAと)「ああ……」
涙を拭い、もう一度地図に目をやります
そんなドクオを見て、ブーンはルートに関する説明を始めました
( ^ω^)「まず、関東地方は夜に外を出歩く人が多いから、出来るだけ後回しにするお
だからここをスタートしたら山脈沿いに東北地方へ、
プレゼントを置いてきたらまた山脈沿いに移動して、関東をスルーして先に中部に行くお
幸い中部にある二軒の家は山間部にあるから見つかる心配はほとんどないお
そしてまた山脈沿いに移動して、関東に入るお
この時点で午前3時がベストだお」
('A`)「……後は俺の腕次第……か」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 01:55:14.26 ID:VnlVli1KO
- ブーンの考えたルートに異論はありませんでした
しかし、問題は時間です
9時にここを出発して、6時間で東北、中部を回ってここに戻ってこれるかどうか
それだけが心配でした
('A`)(……出来るだけ時間をロスしないようにしないと)
あまり時間が遅くなると、また多くの人々に見つかる可能性が高くなります
もし朝日が昇るまでにプレゼントを配り終えられなければ、ドクオは雪に変わってしまうでしょう
そんなことを考えているうちに、いつの間にか時刻は9時になっていました
* * * * *
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:04:02.05 ID:VnlVli1KO
- (´・ω・`)「……久しぶりだね。ドクオ」
(*'A`)「ショボン……!」
ドクオは今すぐショボンを抱きしめたい衝動にかられました
なんせ何十年も一緒に働いたパートナーとの10年振りの再会でしたから
しかし如何せん時間がありません
ドクオはすぐに着替え、ショボンのそりに乗り込みました
('A`)「本当ならここで久しぶりの再会を喜びたいんだが……」
(´・ω・`)「わかってるよ。時間がないんだろ?」
('A`)「……うん。ここを出発して、6時間以内に東北、中部を回ってここに戻って来なきゃならないんだ」
(´・ω・`)「6時間……。君は本当に無茶が好きだね」
('A`)「……でも、やらなきゃならないんだ」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:11:31.59 ID:VnlVli1KO
- ドクオは真剣な表情でショボンを見つめます
ショボンは笑顔で、「君らしいよ」と言いました
さあ、いよいよ出発です
(;^ω^)「ドクオ!無理は禁物だお!もし誰かに見つかりそうになったらプレゼントを配るのを諦めてでも帰ってくるお!!」
('∀`)「……ああ、もちろん」
どこかぎこちない笑顔で、ドクオはブーンに返しました
そう、ぎこちない笑顔で……
(´・ω・`)「じゃあ、行くよ?」
('A`)「ああ」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:20:48.85 ID:VnlVli1KO
- ドクオは手綱をしっかりと握りしめます
ふと、サンタクロースとして初めて仕事をした時の事を思い出しました
('A`)「確か……出発のとき、バランスを崩してそりから落ちたんだったな」
(´・ω・`)「ん?ああ、初仕事の時か。あの時は正直不安になったね。『こんなのが僕のパートナーかよ』……ってね」
('A`)「でも、俺がパートナーでよかったと思ってるだろ?」
(´・ω・`)「……まあね。おかげでこうしてまた空が飛べるんだから」
言い終わると同時に、ショボンが地面を蹴ります
そして、ゆっくり、ゆっくりと浮上していきます
木々より高く上がった時、町の様子が見えました
町は、夜だとは思えないほどの明るさでした
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:29:50.63 ID:VnlVli1KO
- (´・ω・`)「雲がないね……。早く山の方に行かないとあぶないかな」
('A`)「でも山までは結構遠い。いつもより高度を上げよう」
(´・ω・`)「そうだね」
ドクオ達は更に高くまで上昇しました
飛行機が飛ぶ高さより、更に上へ
そこは普通の人間では生きていれない高さです
酸素が極度に薄い上、気圧が低く、かなりの寒さでした
(´・ω・`)「ドクオ、大丈夫かい?」
('A`)「ああ。10年振りとは思えないね」
(´・ω・`)「君がサンタになって3年目だったかな?
その日も今日みたいによく晴れてたから、かなり高くまで上昇したんだよね
そしたら君が高山病になっちゃって」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:38:37.02 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「ああ。そんなこともあったな」
(´・ω・`)「でも、君はフラフラになりながらも子供達にプレゼントをちゃんと配ったよね
『子供達は俺達を待ってるんだ。この程度で俺が諦めたら子供達はどれだけ悲しむんだ』って言って」
('A`)「あの時は必死だったからな……。何度も何度も吐きそうになったし」
(´・ω・`)「吐いたじゃないか。空の上から」
('A`)「それは別の時だよ。あの時はサンタ長に酷く叱られたな
『ゲロの雨を降らすとは何事だ!!』って」
(´^ω^`)「ははは、そうだったね」
二人は空の上で、懐かしそうに昔の事を話します
まだ子供達がサンタクロースを語り、まだ見ぬ世界への夢を馳せていた頃の話しを……
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:47:00.64 ID:VnlVli1KO
- 目的の家に着いたのは出発してから1時間半後でした
ここまでは順調なペースです
屋根の上に降り、サンタの袋を肩にかけます
('A`)「この家か」
(´・ω・`)「プレゼントは何?」
('A`)「グローブだよ。どうやらこの子は野球が好きみたいだ」
いよいよプレゼントを置く作業ですが、大抵の日本の家には煙突はありません
では、どうするのかというと……
('A`)「……魔法を使うのも久しぶりだな」
(´・ω・`)「昔はよく失敗してたよね」
('A`)「どれだけ昔の話しだよ。今はもう失敗しないさ」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 02:56:52.77 ID:VnlVli1KO
- ドクオは屋根に右手を付き、その体勢のまま屋根の上を歩き回ります
こうやって子供部屋を探すのです
('A`)「ここだな」
付いた右手を軽く押します
すると、手がゆっくりと屋根の中へ沈んで行きました
そのまま上半身の半分を屋根の中に入れます
('A`)(あの子か……)
(,,-Д-)「zzz……」
子供はぐっすり眠っているようでした
ドクオは全身を屋根の中に沈め、音を立てずに着地しました
そして慣れた足取りで、足音を立てずにその子供の枕元に行きます
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:03:07.07 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「……メリークリスマス」
小声で囁いて、男の子の枕元にプレゼントを置きました
そして幸せそうな笑顔を浮かべ、ドクオは窓をすり抜けて外に出ました
(´・ω・`)「お見事。10年経っても腕は衰えてないようで安心したよ」
('A`)「ありがとう。さ、急ごう。次は中部だ」
(´・ω・`)「うん」
ショボンは音をたてないように気をつけながら空に飛び上がりました
時刻は11時45分でした
……
ミ*゚Д゚彡「……ギコちゃーん……パパサンタがプレゼントを持ってきましたよー……」(小声)
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:12:22.87 ID:VnlVli1KO
- ミ*゚Д゚彡「パパサンタからのプレゼントはなんと!ミズプロのグローブでーす!」(小声)
ミ,,゚Д゚彡「メリークリスマ……ん?」(小声)
ミ,,゚Д゚彡「プレゼントが、ある」(小声)
ミ,,゚Д゚彡「なぜ?」(小声)
ミ,,゚Д゚彡「つーちゃんはギコと同じ時間に寝たし」(小声)
ミ;゚Д゚彡「……あれ?僕がプレゼント置いたんだっけ?」(小声)
ミ;゚Д゚彡「まさか……これが若年性アルツハイマーなのか……っ!!」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:19:59.20 ID:VnlVli1KO
- 一方その頃、ヒートはもう夜遅いというのにまだ起きていました
ノパ听)「お母さん……今日も仕事で帰ってこれないのか……」
ノハ*゚听)「でも今日はサンタさんがきてくれるんだよな!!」
ノハ*^竸)「えへへ、ドクオおじさんまだかな……」
こたつに入ってテレビをつけて、ヒートはドクオの到着を待っていました
しかしなかなか睡魔には勝てないようで、時々意識が飛ぶようです
ノハ*-听)「私が起きてたら……ドクオおじさんびっくりするかな……」
ノハ*--)「でも……サンタさんに会いたい……ってお願い……した……も……ね……」
ノハ*--)「……すー……すー……」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:27:34.41 ID:VnlVli1KO
- * * * * *
ドクオ達が中部に到着した時には既に時刻は2時を回っていました
(´・ω・`)「ちょっと遅れ気味だね」
('A`)「ああ……でも、ここの2軒は家が隣同士でよかったよ」
(´・ω・`)「プレゼントは?」
('A`)「右の家の子は夏目漱石全集。左の家の子は百科辞典だってさ」
(´・ω・`)「あらあら。勉強熱心な子達だね」
('A`)「昔の子供達は遊び道具しか頼まなかったのにな。これも文明が進んだせいかな」
そんなことを言いながら、ドクオはさっさと右の家の子供部屋を見つけていました
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:34:33.82 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「よいしょっと」
前回と同じ要領で侵入し、子供の寝ているベッドに歩みよります
( <―><―>)「くー……くー……」
('A`)「おやおや、賢そうな子だ
」
ドクオは袋からプレゼントを取り出し、枕元に置こうとしました
しかし、漱石全集はなかなかの重量があったので、枕元ではなく、机の上に置いておきました
('A`)(枕元に置くと、布団が沈んで頭の高さが変わっちゃうからな……
そうなると子供って目を覚ましかねないんだよな)
「メリークリスマス」と小声で囁き、ドクオは隣の家に移動します
隣の家の子供部屋も、あっさりと見つかりました
とりあえず上半身だけ屋根の中に沈めます
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:42:19.47 ID:VnlVli1KO
- ( ><)「スピー…スピー…」
(;'A`)(えーと……。寝てるんだよな……?)
(;'A`)(寝息も聞こえるし、寝てるな
「`」とか「 - 」いう目の奴は起きてても寝てても同じ表情だからわかりにくい!!)
寝てると信じてドクオは部屋に侵入しました
予想通りその子は寝ていたようで、ドクオがベッドのすぐ横に立っても気づきません
(;'A`)(あー……心臓バクバクしてるよ……)
プレゼントを枕元に置いて、ドクオはその部屋を後にしました
(;'A`)「ふぅ。後は関東だけだな」
(´・ω・`)「もう3時になる。急がないと」
('A`)「……ああ」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:48:37.41 ID:VnlVli1KO
- ドクオはショボンのそりに乗り込み、闇夜の空へと飛び立ちました
最後は関東
しかも、二軒とも首都圏にあるので、誰かに姿を見られる可能性は限りなく高いのです
(´・ω・`)「ねぇ、ドクオ」
('A`)「なんだ?」
ショボンが重々しく口を開きました
ショボンは、乳即山を出発する前からある違和感を抱いていました
それは、ドクオがこの仕事が終わった『後』の事を一言も話さないという事です
そして出発前にドクオがブーンに見せたあのぎこちない笑顔
この二つから、ショボンはドクオが何をするつもりか、薄々感づいていたのです
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 03:57:12.75 ID:VnlVli1KO
- (´・ω・`)「君は……この仕事で死ぬつもりなのかい?」
('A`)「……」
('A`)「はは、さすがショボン。オレの考えてることはお見通しか」
(´・ω・`)「やっぱり……」
('A`)「ああ。オレはこの仕事が終わったら自分の正体をみんなにバラして、雪になるつもりだった」
(´・ω・`)「……なんでそんなことを」
('A`)「うまくいけば多くの子供達にまた『夢』を与えることが出来るかもしれないんだ
……俺は手紙をくれたこの五人にだけクリスマスプレゼントを上げようだなんて思ってない
日本の子供達にもう一度『夢』を贈ろうと思ったんだ」
(´・ω・`)「もう一度『夢』を……」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:06:12.44 ID:VnlVli1KO
- (´・ω・`)「……僕が止めても、無駄なんだろう?」
('A`)「当たり前さ」
(´・ω・`)「だったら僕も子供達に『夢』を与える糧になるよ」
(;'A`)「な、何を言い出すんだ!!お前までこんな目に合わすわけには……」
(´・ω・`)「君の正体がバレたら、僕にかかった魔法も解ける
魔法がとけて、飛べなくなり、喋れなくなり、記憶がなくなる……
記憶がなくなったら、君の事をわすれてしまう」
(´;ω;`)「……だから、せめて最後まで君と一緒にいさせてくれよ」
(;'A`)「ショボン……」
ショボン頬を涙が伝い、風に飛ばされてドクオの頬にぶつかります
濡れた頬はなんだかとても温かくて、それでいて冷たいものでありました
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:17:22.82 ID:VnlVli1KO
- こうしているうちに、関東に到着しました
時刻は4時を回ったところ
家を出るサラリーマンの姿がチラホラと見えます
そんなサラリーマン達に見つからないように、ドクオ達は一軒目の家に到着しました
('A`)「よし、まだ誰にも見つかってないな……」
自分の手をまじまじと見つめながら、ドクオが呟きました
この家の後にもう一軒、ヒートの家があるので、まだ誰かに見つかるわけにはいきませんでした
ドクオは急いで子供部屋を探しはじめます
意外と大きな家だったので、子供部屋はなかなか見つかりませんでした
('A`)「あった!」
喜びの言葉と同時に、上半身だけ屋根の中に沈めます
その中にいたのは
( -∀-)「グー……グー……」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:24:40.95 ID:VnlVli1KO
- ('A`)(あれ?この子は……確か……)
そう、昨日の昼、サンタはいない、サンタはいらないと言っていた子供でした
サンタへの手紙はサンタクロースに届いて欲しいと書いた人が思わなければ、
サンタの元には届かない仕組みになっているはずです
('A`)(……ってことはこの子はあんなことを言いつつも、サンタを信じてくれてたんだな……)
ドクオはなんだかくすぐったい気分になりながら、プレゼントの確認をします
('A`)「サッカーボールか。君も、外で遊ぶのが好きみたいだね」
袋からサッカーボールを取り出し、男の子の枕元に置きます
そして小声で「メリークリスマス」と呟きました
その時でした
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:31:39.95 ID:VnlVli1KO
- 《ジリリリリリリリリリン!!》
(;'A`)「!!?」
突然響いた目覚まし時計の音
音の発信源は隣の部屋でしたが……
( ぅ∀・)「ん……?」
(;'A`)「あ……」
……男の子を起こすには十分な音量でした
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:41:58.36 ID:VnlVli1KO
- ( ・∀・)「あれ……。あんた昨日の……?」
ドクオがチラ、と自分の手を見ました
すると、指先から白い雪がふわりと足元に落ちて、ゆっくりと溶けていくのが見えました
しかしドクオは逃げようともせず、笑って男の子のそばに歩み寄りました
('∀`)「はじめまして、俺がサンタクロースだよ」
(;・∀・)「サンタ?あれ?プレゼント……?」
男の子は混乱しているようでした
ドクオは優しく、男の子の頭を撫でてやります
('∀`)「ああ、サンタクロースだ。君から手紙を貰ったからやって来たんだよ」
(;・∀・)「サンタって本当にいたんだ……」
('∀`)「いるよ。ここ最近、活動はしてなかったけどね」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:48:59.13 ID:VnlVli1KO
- ('∀`)「オレ達サンタは、オレ達を信じてくれる子供達がいる限り、存在するんだ」
ドクオは笑顔のまま、男の子の頭を撫で続けました
そんなことをしている間にもドクオの体は少しずつ雪になっていっています
(;・∀・)「サンタさん……?そのからだ……」
男の子もドクオの体の異変に気づいたようです
しかし、ドクオは笑顔のまま話し続けます
('∀`)「……サンタクロースはね、誰かに正体がバレちゃうと、雪になっちゃうんだよ」
( ;∀;)「ぼ、ぼくのせい……?ぼくがサンタさんのすがた見ちゃったから……?」
('A`)「君のせいじゃないよ。……誰のせいでもないんだ」
ドクオは優しく男の子を抱きしめました
ドクオの体はもう雪のように冷たくなっていました
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 04:56:43.23 ID:VnlVli1KO
- ('A`)「じゃあ、オレはまだ最後に行くところがあるから……」
ドクオは少しふらつきながら窓へ歩いて行きます
男の子は心配そうな表情でそれを見ていました
('∀`)「……じゃあね。メリークリスマス……モララーくん」
(;・∀・)「えっ?ぼくの名前……なんで……」
男の子が驚いて聞き返しますが、ドクオはその間に窓をすり抜けて外へ行ってしまいました
外へ出ると、ちょうどその下でショボンが待機していたようで、ドクオが落ちて来ると同時に空へ飛び立って行きました
男の子はその様子を、ただ呆然と見つめているのでした
* * * * *
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:05:23.39 ID:VnlVli1KO
- (;´・ω・`)「ドクオ!!大丈夫!?」
(;'A`)「ああ……まだ……だ。ヒートに……会わないと……」
ショボンは人目など気にせず、一心不乱に飛び続けます
しかしドクオはどんどん雪に変わっていくのでした
(;´・ω・`)「っ!?だ、ダメだ!!飛べない!!」
ドクオの三分の一が雪になった頃、とうとうショボンにかかっていた魔法が解けはじめました
空を飛べなくなったショボンはそのまま落下
コンクリートの地面に強く体を打ち付けました
しかもその衝撃でそりは大破し、ドクオも地面に体を打ち付けました
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:12:08.34 ID:VnlVli1KO
- (´;ω;`)「あああああ!!ドクオ!!ドクオ!!!」
ショボンはヨロヨロと立ち上がり、ドクオを背中に乗せます
ドクオは先ほどからうわごとのように「ヒート、ヒート」と何度も何度も呟いていました
(´;ω;`)「ドクオ!!しっかりしろ!!ヒートちゃんに会うんだろ!!」
コンクリートの地面を蹴り、必死に叫びながらショボンが走ります
しかし、もうほとんど魔法が解けてしまっていたので、
ショボンの叫びはくぐもった豚の鳴き声のようにしかならず、ドクオの耳には届きませんでした
ショボンは少しずつ自我が失われていくのを感じながら、一心不乱に走り続けます
ヒートの家が見えてきました
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:20:08.02 ID:VnlVli1KO
- (´;ω;`)「ドクオ!!ヒートの家だぞ!!」
ショボンが叫びますが、それはただのトナカイの鳴き声にしか聞こえませんでした
ところが、それでもショボンの言葉が通じたのか、
もうほとんど雪になっているドクオが体を起こし、ヒートの家に向かって歩き始めました
( A`)「ヒート……ヒート……」
( `)「会いに……来たよ……」
( )「ヒー……ト……俺の……」
ガチャ
ドシャッ
* * * * *
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:29:16.57 ID:VnlVli1KO
- ノハ--)「すー……すー……」
ガチャ
ドシャッ
ノハぅ听)「すー……ん……?」
ノパ听)「お母さん?」
ヒートは寝ぼけ眼のまま、玄関に向かいます
すると、驚いた事に玄関の扉が開いていました
ノパ听)「鍵閉めるのわすれてたかな……ん?」
(´・ω・`)
ノパ听)「トナカイ?」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:38:05.29 ID:VnlVli1KO
- 外からトナカイがこちらを見ています
こんなところに野生のトナカイなんているはずないのですが……
(;´・ω・`)そ
ダッ!
===(;´・ω・`)
ノパ听)「あっ……」
ヒートが一歩だけ動くと、トナカイは驚いたのか走って逃げて行ってしまいました
少しガッカリして視線を落とすと、そこには赤い服と大きな雪の塊が落ちていました
そして思い出します
ノパ听)「ドクオおじさん……?」
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:44:09.93 ID:VnlVli1KO
- サンタクロースがやって来ること、
昨晩はサンタクロースを待ってようと思っていたのに、いつの間にか眠ってしまっていたこと、
……ドクオがサンタクロースだということ
ヒートが雪の塊に近づきます
その塊は半分溶けてもはや原形をとどめてはいませんでした
ノパ听)「あれ……?手紙?」
雪の塊に埋もれた手紙
ヒートはそれをとって中を見ました
そこには少々汚い字でこう書いてありました
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:50:26.17 ID:VnlVli1KO
- Merry Christmas Heat
オレのことを、サンタクロースのことをずっとしんじてくれて、ずっとまっててくれて、ありがとう
とても
うれしかったよ
さて、じつはオレはとおいくににいくことになってしまったんだ
んーと、うんーーーーととおいくにに
よっぽどのことがないと日本にはもどってこれないんだ
りゆうはいえないんだけどね。でも、きみがサンタをしんじてくれれば、きっといつかまたあえるからね
さようなら
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 05:58:18.57 ID:VnlVli1KO
- ノパ听)「……ドクオおじさん、遠い国に行っちゃったのかー」
ノハ*゚听)「でも、今年はちゃんと来てくれたぞ!!
お母さんが帰ってくるのが楽しみだな!!」
――ただいま……ってなんだこれは!水浸しじゃあないか!
――あ!お母さんお帰りぃぃ!!今日ねぇ!サンタさんが来てくれたんだよぉぉぉ!!
* * * * *
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 06:03:08.03 ID:VnlVli1KO
- 後日、ニュースはあちこちで見られた未確認飛行物体と、
関東地方でみつかった大破した巨大なそりのような物体と、
同じく関東地方で捕獲された野生のトナカイについての話題で持ち切りでした
胡散臭いUFO評論家が『これは宇宙人の仕業であることが高い』と言ったり、
NASAが『どこかの国が新型ミサイルの試し撃ちをしたのかもしれない』などと言っていましたが、
民間の中で最も支持されたのは『サンタクロースがやって来た』説だとの事でした
さらに他府県では、自分が買ってきた覚えのないプレゼントが子供の枕元に置いてあったという親が数人いたそうで、
『サンタクロースがやって来た』説はかなりの信憑性を持つようになりました
この騒動で、人々は再びサンタクロースに興味を持つようになりました
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 06:09:30.12 ID:VnlVli1KO
- 川 ゚ -゚)「……まったく。馬鹿な事をする奴もいるものだな」
川 ゚ -゚)「……本当に、馬鹿な奴だ」
ピンポーン
「ヒートー!サッカーやろーぜー!」
「わかったぁぁぁ!今行くぞぉぉぉ!!」
川 ゚ -゚)「……まぁしかし、そんな馬鹿のおかげで子供達はまたサンタクロースを信じるようになったのだがな」
川 ゚ -゚)「君はどうだ?そう、画面の前の君だよ」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/26(土) 06:14:52.53 ID:VnlVli1KO
クリスマスはもう終わってしまいましたが、あなたのお家にサンタクロースは来ましたか?
サンタクロースはサンタクロースを信じる全ての子供達のもとへやってきます
なぜなら、彼らの仕事は子供達に『夢』を与えることなのですから
('A`)は子供達に夢を与えるようです
おしまい
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