自作小説その18 | 箱庭の空

箱庭の空

小さな世界。

11月下旬、行き詰まった時ふと考えた話。
比喩とも取れるので、挿話にしようと考えた。
独立の短編としてここでない場所で小規模配布、不評ではなかった。

この話の一部にしてしまったことは絶対秘密だけど。

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 その昔。

 人里近くの、しかし誰も近寄らない場所に、恐れられる「神」がいた。いや、それを神と言って良いのかは分からない。
 理由はもう定かではないが、彼は、とても怒っているというのであった。何かの拍子に、人に、村に―もしかするとそれに止まらず―害を為すとされた。それを鎮める方法が様々に口伝された。

 その内の一つが供物、言い方を変えれば生贄だった。
 動物などでは「神」は満足しないというので、人間を、それも乙女を献上しようということになった。そこへ、荷物を背負った旅人が現れた。良い具合に若い娘であった。
 誰も血縁のある者、顔見知りの者を好んで「祟りなすもの」の下へは行かせたくない。赤の他人の彼女なら痛みはない。村人は、旅の娘にそれの本性は隠して、棲み処に送り込んだ。

 その後どうなったものやら、怒れる「神」は鎮まったという。しかし、そもそもそういったものがいたのかどうかも確かではない。

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摂政閣下のモデルである「大尉殿」は、自分はたたり神の一種であると思っている(作話類型的に)。
時の権力の反感を買った結果、実力のある人だが(実力のある人ゆえに)無実の罪で流罪となり、普通のたたり神はそこで死んでしまってから祟る(=敵の一族を滅亡させる)のだが、彼は現代人らしく生身を伴ったままで復讐を行った。
それでも、自分にはある一時期、カミサマみたいなものだった。
嫌われても、上からも下からも一応は評価されていて、反乱鎮圧ではめられた際も、多数の無名の人が味方して彼を逃がしてくれたわけである。
自分もそんな風だったらなぁと思って、あまりそうでもないけれど、一応尊敬はしている。
偶像として。