自作小説その17 | 箱庭の空

箱庭の空

小さな世界。

載せたつもりで載せていなかった。
艦これ秋イベ、結婚(入籍)、友人知人との間の出来事等……
色々なことがあった。
その前に多分書いたのがこれ。

‐‐‐

 彼女は、足下が崩壊するかのような感覚に襲われた。今まで何度も味わった、しかし耐えきれないそれが、彼女の周りの空気を蝕んでゆく。

「私は提案する。君は私の目の届くところに置いておく。望むようにさせる。今まで通り何も変わらない。大学にも通える。必要なら教育も受けさせる。そして頃合いを見て適当なところに嫁がせる」

 彼はしゃあしゃあと勝手な計画を話した。それは提案でありながら、半ばもう決定事項だった。

「私を利用すればいい。折角そのつもりで来たのだから」

 普通に聞けば悪意あるその言い方は、まるで棘でなぶるようだ。彼女は答えの代わりに涙を流すこともできずに、重く固まった。

「泉の水を涸らさないように、私が満たそう」

 卑猥であった。

「そ、そんなこと言わないでくださいよ」

「神の化身と称えられる摂政閣下が、か」

 何のつもりか、彼はこれ以上ない程の笑みを口元に浮かべているけれども、事実ラリサは嫌だった。聞くに堪えない程だった。神のように敬うべき存在であることが、批判や軽口の時でさえ前提となっている彼が、汚れた言葉を吐くのが。

「そうですよ、皆にそう思わせてきたのに」

 本当に皆かね、とよく言われる突っ込みをすることもなく、彼はさらりと、かなりきついであろう酒を一杯空けて、グラスを置く。

「他人に期待しすぎるのは良くない。私は人間だよ、ただの」

 ラリサは憤った。他に感情のやり場がなかった。

「だったら、人間の証拠を見せてくださいよ」

 我ながら奇妙な物言いをしたと思った。案の定、摂政も馬鹿にして

「面白いことを言うな。人間である証拠?この体がそうだろう。それともこれ以上を望むのか」

失笑する。

「そ、それ以上……って!」

 彼女は赤面した。

「また変なことを言う」

「変なこと?私は何も言っていないのに。君が邪推をしているのだろう」

 そらとぼけているとも、本気とも取れる発言と表情。

「なら、本当に見せたらいいじゃないですか。何を見せるのか分かっているなら」

 恐れと恥じらいを彼女は勢いで吹き飛ばしてしまった。
 もう摂政のことなんて嫌いだ。そんな気持ちだった。

「私には分からないがな」

 摂政はにこにこと笑う。およそこの人にこんな表情ができるとは思えないほど楽しそうに。

「わ、私のも見たんですから、閣下のも見せてもらわないとフェアじゃないです!」

 赤面しながら、彼女はとんでもないことを口走った。