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ロボトミー 11月19日 10:49

:lobotomy
lobo- (前頭葉や側頭葉などの「葉」) -tomy (切除)
こめかみのあたりに小さな穴をあけ、その中に細い刃を突き刺し、手探りで円を描くようにぐりぐりと動かして前頭葉の白質を切断する手術のこと。1930年代当時、うつ病や不安神経症に効果があるとされ、盛んに行われた。日本でのロボトミー手術数は正確な統計は取っておらず、3〜12万件と幅の広い返答となっている。
(前頭葉とは思考、創造など、最も人間らしい知的活動を支配する部分と言われているが、現在でも正確にどのような機能を持った場所かということについてはいまだによくわかっていない。)


1935年、チンパンジーのロボトミー手術を行ったところ性格がおとなしくなったと発表。同年ポルトガルのエガス・モニスがロボトミー手術を始めて人に行い、精神分裂病患者(現在の統合失調症)の素行が治った事で普及。安全性よりも治療効果が重視され、ノーベル賞の受賞までされる。

しかし実際のところ、ロボトミーを受けた人は、確かに性格・感情の上での顕著な変化を示してはいたが、それはうつ病患者が楽天的で空虚な爽快感をいだくようになったり、多弁で下らないことをいうようになったりしたことで病状が改善されたように見えただけであったと、今では解釈されている。
それどころか生活態度に節度がなくなり犯罪行為に手を染める者もあれば、さらに意欲が乏しくなり、外界のできごとに対して無関心、無頓着になるなどの症状も報告され、さらに抗精神病薬が開発されるようになったこともあり、1970年代以降、ロボトミーはほとんど行われていない。

手術に関しても100%安全であるとの保証はなく(手探りで、「大体この辺だろう」と思われる部分をなんとなく切除していたのだから当然である)、資料によってまちまちだが約4〜6%の死亡例があったようだ。

こうなるとロボトミー手術を行われた人は被害者と呼ばれ、廃人化した家族をみて反対運動が起こり、ノーベル賞の取り消しを訴える人々も出て来る。資料によっては本人の許可なく手術を行った事例もあり、日本のロボトミー殺人事件は衝撃を残した。

(あるスポーツライターが些細ないざこざを起こし警察に捕まった際、精神鑑定で異常があると診断され精神病院に強制入院。肝臓検査を理由に全身麻酔をかけ、勝手にロボトミー手術が行われたとされる。その後、術後の同意書にサインする事を条件に退院したが、それから15年間、スポーツライターとしての力は失われ、職を転々としながら精神科医に恨みを募らせる。そしてついに精神科医の妻と母親を刺殺するという事件に発展した)


故ケネディー大統領の妹のローズマリーや女優のフランシス・ファーマーも本人の許可なくロボトミー手術をされ、施設を点々とする生涯を送ったとされている。

ロボトミー手術の悲惨さを描いた映画「カッコーの巣の上で One Flew Over The Cuckoo's Nest」が1975 年に公開され、アカデミー賞の主要 5 部門(作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞)を独占した。



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