昼間急に、あ、今日レムオンの誕生日じゃないか。と気付いたわけですが、
なんの準備もしておらず。。。ですが、せっかく気付いたので、たまにはお祝いなぞ。
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「雨、やまないわねぇ」
曇りがちな六月の空を硝子越しに見上げて、少女はぽつりと言った。
ロストールの貴族街でも有数の規模をほこるリューガの館で過ごしていると、激しい雨が、遠く感じる。
まるで他人事のように。
ノーブルの家では、こんな雨の日には、雨音が盛大に響いていた。
しかしこんな豪奢な屋敷では、音など、耳をそばだてなければ聞こえはしない。
「しばらくはロストールに滞在するのだろう?」
リューガ家の当主であるレムオン=リューガは、書類に目を走らせながら、帰ってきたばかりの少女に声をかけた。
領地からあがってくる数字に不審な点がないことを確認し、次々に裁定を下していく。
「ええ。配達の依頼を受けたけど、それほど急いでるわけじゃないって話だったから、二、三日はゆっくりしようかと思ってるわ。この雨じゃあね。急いだところで、ずぶぬれになって風邪でもひいたら大変だもの。ね。」
「そうか」
「みゃあ」
か細い声がした。数字を追っていた目が、ぴた、と止まる。
「今、なにか、面妖な声がしなかったか?」
「可愛い返事なら聞こえたけど」
「みゃあ」
レムオンが顔をあげると、目があった。片手におさまるちいさな頭部に、きらきらとした二つの金色の目が瞬く。黒い子猫は、好奇心に満ちた目で、逃げることなく彼を見返した。
子猫をレムオンの顔の前にずいと突き出した少女は、これ以上ない位に、にっこりと微笑んでいる。
ひとつため息をつき、眉間の皺を一段と深くしたレムオンはしぶしぶ口を開いた。
「………………小動物は、好かん」
「あら、こんなに可愛いのに」
「道理がわからぬ生き物だ。言葉も通じぬ。セバスチャンに報告はしたのか」
「お嬢様の仕事をお手伝いできるならば光栄です、って」
「仕事?」
「この子を配達する仕事の途中なのよ。ねー」
「みゃー」
子猫に頬をすりよせる少女に、なんともいえない顔になったレムオンは、また一つため息をつき、ペンを置いて立ち上がった。
執務机の脇まで移動して、子猫を掲げる少女を見下ろす。
「その小動物と共に居座る気か?」
「なにか問題がある?セバスチャンも良いって言ったんだし、何も…」
急に肩を掴まれ、むぐ、と口がふさがれる。
「みゃあ」
口づけを交わす二人の間で、かしかし、と子猫がレムオンの胸元を飾る金細工にじゃれついた。
「このまま抱きしめると、その小動物がつぶれるであろう」
「……まあ、そうね」
なあに、と言わんばかりの目をして二人を見上げる子猫は、レムオンの気持ちなど知る由もない。
指を差し出すと、くんくんと匂いを嗅ぎ、かぷ、と甘噛みをする。
「この屋敷にいる間、放し飼いにしておくわけにはいかぬだろう。セバスチャンに手頃な籠を用意させて、……どうした?」
「好かん、とか言いながら、好かれてるわね」
少女が手を開くと、子猫はレムオンの手をよじのぼりはじめ、またたく間に腕をかけあがっていく。
「……!落ちるぞ!小動物!!」
あわてて腕に手を伸ばして子猫を捕まえようとするが、俊敏な子猫はその手をすり抜け、レムオンの首筋まで駆け上がると、頬をぺろりと舐めた。
「ぷっ…く…く…」
「なんというやつだ……」
呆れた顔をして子猫を顔からひきはがし、そっと捕まえる。
「みゃあ」
「お前もレムオンが好きなのね」
少女が思わずそう話しかけると、とたんにレムオンの頬がさっと朱に染まった。
「いいから、この小動物をどこかに置いてこい」
先ほど情熱的な口づけをしておきながら、ちょっとした言葉ひとつで顔を赤らめるのだから、不思議なものだ。
「はいはい。じゃあ行こうね。……あ、そうだ。もうすぐ誕生日よね。何か欲しいものってある?」
「フン……お前がいれば十分だ」
そう言って、何事もなかったかのように、執務机に戻る。
「……うん」
頬が、熱くなる。
窓の外で、雨は慈愛のように降り注いでいた。
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というわけで、レムオン、お誕生日おめでとう!!!!
なんでいきなりいちゃついてるのかはよくわかりません!!w
きっとお祝いだからです。あと子猫にじゃれつかれるレムオンとか妄想したくなったからです。
はー久しぶりに書いたら、超書けなくて動揺しました。話が浮かばないったら。。。。。。。。
そしてぎりぎり59分にあっぷしたつもりが、日付変わってました!ぎゃーーー
なんだかんだで大好きだぜレムオン!!!