アブストラクト


かぜっぴき皇帝と王子のおまじない/亮吹




かぜっぴき亮と吹雪のおまじないのお話

 



完全無欠の皇帝が流行り風邪をひいたということで、其れの恋人の吹雪がからかい半分で見舞いにやってきた。

いつも静かに、だが確固たる存在感をもつ彼が不在の学園は、別段何の変化もなく動揺さえもなく稼働して終了した。
吹雪はいつも押し掛ける形で訪問する亮の個室へ向かい、今日も相変わらず「りょう〜!」と明るい声で扉をくぐる。

 

吹雪の不躾に対し呆れ顔の出迎えをする亮は、今日はいない。
今はまさに病人然として、心なしか普段よりやや寒い、暗い部屋の奥の真っ白のベッドにて眠っていた。


なんだか俄かに心細くなって、吹雪は足早に亮の許まで寄って行くと、彼の疲れて白い寝顔を覗き込んだ。


「亮、大丈夫…?」
左頬に手を遣るとやっぱり熱を持っていた。
浅い呼吸が繰り返されているだろうのをどうしても確かめたくなって、覗き込むようにして顔を寄せると、亮は重い戸の動くようにやれやれと目を開けた。

「吹雪」、と呼ばれた際の低い声で、それだけでやっと心底安堵する。よかった、と。

焦点が合わない程の近距離で。 


「キスは駄目だ。感染する」
「真面目だなあ。分かってるよ」


そう頷いて、吹雪はそのまま亮の額と自分の額とを合わせると、静かに目を閉じた。


「早く亮の熱が下がりますように、風邪が治りますように」

どんな薬より身体に沁み込んでいくような気がして、触れている額の面積を測るみたいに亮も元より重いまぶたを下す。

 

「僕の亮が前よりももっともーっと元気になれますように」

 

おまじないが終わって、二人は同じタイミングで目を開けた。語尾に含ませた雰囲気の通り、吹雪は楽しそうにいたずらっぽく笑っていた。


「しかし前よりも元気に、というのは初めて聞いたな」
困ったような笑顔を向けて、しかし内心で吹雪らしいな、とまた彼は微笑む。

 

「まあネ。僕のオリジナルだから。特製なんだよ。それにどうせなら前より元気にならなくっちゃね!」

 

 

 









アトガキ
02/21 01:40
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