4/22 08:45
『炎に消える夢』…BSR片倉小十郎
貴方の言葉は、まじないの様だ。
時には私の背中を押し
時には私の胸を抉り
時には私の心を抱き
時には私を殺してしまう
それでも、私が今ここにいると言うことは、私は彼に生かされているのだろう。
それが彼にとって無意識であろうとも。
「散り逝くは、美しき花の如く…か。」
私を作り上げたのは父だが、私という人格を完成させたのは彼だ。彼が未完成だった私を作り替え、私というヒトを作り上げた。
父でさえ出来なかった…いや、父だからこそ出来なかった私というモノの形成を、彼は無意識に為し遂げたのだ。
きっと、私は彼と共にいれば幸せになれたのだろう。
だが、私を所有するのは私ではなく私の父だ。
父は美を愛す。未完成の芸術には不思議と魅力があるらしい、だからか父は私を溺愛した。歪んでいようと背徳的であろうと父が私を愛していたのは事実だ。
故に、
完成した私に父は興味を示さない。
私に足りなかったモノを、父は持っていなかった。父が持つものを、私は受け取る術を持たなかった。
完成した私は、壊される。
今、こうして、此の場所で。
「緋菜…」
「こうなる運命だった。」
「違う、お前が俺の所に来るんだ。」
「無理な話だ。」
「無理じゃねぇ!俺はまだお前を…」
「私とて、そう願うさ。」
完成していなければ、この胸の痛みも苦しさも知る事はなかっただろう。
それを愛しく思う反面、私はやはり違うのだ。
私は、そう育てられたのだから。
「幸せを、お前から貰った。」
「緋菜…ッ!!!」
「だから、生きれない。」
「なっ…?!」
完成したとしても、私の元は父より与えられている。父の思考を幼き頃より植え付けられた私は、完成したことを嘆いていた。
完成したと同時に、私は父に壊された。
何故なら、完成する事で私は壊れてしまうよう父に育てられたのだから。
「愛を知った。無償の愛だ。それは暖かく心地よく愛しい感情を私に与えた。」
「………。」
「それ故に私は苦しいのだ。生き物を慈しむ感情は私には必要ない。戦場でそのような感情は必要ないからだ。私はもう戦場には立てない。そうさせたのはお前だ、小十郎。」
「戦場に立たなくてもいい…俺は、お前が隣にいてくれれば…ッ!!!」
あぁ、愛しいヒト。
この感情も全て、忘れてしまえたら。
どれだけ幸せで
どれだけ愚かなのだろう
「戦場に立てぬ私に、何の意味がある」
少なくとも、父はそう言うだろう。
いや、これは言い訳だ。
私はそう思っていなかった。
戦場に立つ事に意味など持たなかった。それなのに理由を求める…これは、私が完成した故の事。
理由を持たずに殺していた。父のため等と言う大義名分も無く、ただ殺していた。それが当たり前だと思っていたからだ。
だが、今は死に逝く者の顔を見ると、戸惑ってしまう己がいる。
家族がいたのだろうか
未練があったのだろうか
何を残し此処で朽ちるのか
その思考すら、戦場では命取りだというのに私はもうただ殺すという行為が出来なくなってしまった。
理由を求めてしまう。
事有る毎に、求めてしまう。
私は何のために、ここにいるのか。
「お前を殺せば、元に戻れるのかもしれない。だがそれは不可能だろう…そんな事は承知だ。」
「………。」
「私の自己満足に過ぎない、私の…我儘だ。お前と戦い、朽ちるのか。お前を殺して元の私に近い私になるのか…ただ、それだけだ。」
「緋菜…それだけのために…ッ?!」
「そうだ。それだけだ。」
望みも全て打ち砕けば、貴方は怒るだろう。大人のようで、貴方は少し単純なのだから。
片倉、小十郎…いや、影綱。
「それだけの為にお前の斥候を奪い、焼き、炙り、痛め付けた。お前を誘き寄せる為に、な。」
「………ッ!!!」
「まだ話の意図が読めないか?ふ、ははは…お前は私を愛した故に崩壊するのだよ。」
「俺は…ッ、お前を………」
「あぁ、愛しているよ…だから殺す。私は満たされてはならなかった。」
完成してはならなかった。
(私は漸くヒトになれた)
私に幸せなど、必要なかったのだ。
(殺してきた奴等の怨さの声が響く)
だから、全て無くし壊してしまおう。
(全てが、貴方から与えらた感情故に)
(こうして最期は、ヒトとして逝ける。)
「炎獄帰姫、松永緋菜…推して参る。」
「…緋菜………。」
「赦せ、小十郎。そして私を………」
ころせ。
(しあわせに、なりたかった)
―――――――――――――――
end
松永娘フラグだとどうしても幸せになれない(´;ω;`)
この後ガチでやり合い→松永より手出し→あああよくもやりやがったな多分するとは思ってたけど→END
になると思う(´・ω・`)
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