話題:最近観た映画
※ネタバレあり



終電を逃したことで知り合って、共通の趣味がおおくて、似たような価値観や感性を持っていたふたりが恋に落ちるまでに時間はかからないし、つきあい、同棲していくのも自然なながれ。
なにげない恋人たちの日常を丁寧に描くことでリアリティがあり、共通のすきなものをだいじにしてたのしく過ごしていた時期はほんとうにかわいらしく、花束のようなきれいさがあった。
サブカル好きなひとには絶対的に刺さるし、元ネタがわかるとなおさらたのしくなる。坂元裕二特有のセリフの言い回しがすきなあたしはよりたのしかった。

恋人たちのつきあってから別れるまでの話、ただそれだけの話なのにこんなにも惹かれ、観終わってから何日経っても余韻から抜け出せないのはそれだけじぶんに刺さるものがあったからなのだろう。こんな恋を経験したことがあるひとは、きっとおおいはず。

就職し世間に揉まれ、彼は仕事に、彼女はときめきを、生活のため、お金のため、いろいろな現実的な要素がふたりのこころを離れさせてゆくのもまたわかるなって共感した。喧嘩することもなくなって、どうでもよくなってきて、空気のような存在、セックスレスだし、たのしむとかよりも合わせる、感情的になることもなくなって期待もしない、それでも結婚しているひともいるしって彼は言うし、実際そういうひとたちもたくさんいる、けれど。
価値観が合わないのを我慢してまで結婚したいのか一緒にいつづけたいのか、そこの選択でふたりが妥協やあきらめでつながりあうことでつづく関係もわるくないし、別れを選ぶのもまたわるくない。
なにをだいじにするか、揺るがないものはなんなのか、価値観のちがいを我慢してくか諦めていくかおわりにするか、恋はいつも悩みが尽きない。
悩んで、迷って、保留にして、すきだと思って、きらいだなって思って、一喜一憂しては過ごした数年の執着から別れがたくて、いいところだけをピックアップする思い出から離れたくなくて、それでもさいごは笑ってお別れしたいって、麦くんと絹ちゃんが選んだ人生もまたわるくない。そんなふたりの恋を見届けられてしあわせでした。