容易に泣けない僕だから




容易に泣けない僕だから
泣ける時には泣いておきたい

涙、ひとつ、零れたら
塞き止めていた
小さなわだかまり達
"出口を見つけた"と錯覚して
一斉に溢れだす

誰も止めないで
誰も触れないで
そこは鋭利な場所だから

誰も止めないで
誰も触れないで
そこはじくじく痛むから

容易に泣けない僕だから
枯れるまで、泣きじゃくっていたい

涙、いつも、閉じ込めた
鍵をなくした
薄暗い地下室から
光の下、息が出来る場所へ
一斉に解き放つ

今、涙する僕のぶんまで
すこしでも遠くへ逃げて

彼方で光を受けて
きれいな水に
還りますように