嘘つきの旅人




嘘をつくことに
慣れていた旅人が
溢れる愛に導かれ
一つの所にとどまった

しかし嘘をつくことに
慣れすぎた旅人は
その愛の半分ほど
信じることが出来なかった

真っ直ぐに向けられる
温かな言葉の数々は
傷つかないために築き上げた
くすんだフィルターに邪魔され
目前で 斜め下に落ちた

愛に溢れる人は
跳ね返されたそれを見て
寂しげな顔で背を向けた

その瞬間、初めて旅人の瞼から
滝のように溢れだした愛、愛に
ようやく、くすんだフィルターは
決壊した


(背を向けたあの人にそれを知る術はないが、旅人は伝えきれなかった溢れる愛と感謝を詩にして行き着く街々でうたいつづけた)