男同士でバージンなんて意識するのも馬鹿馬鹿しい話で。
ただ言いようのない黒い感情が俺を支配する。
「…え、初めてじゃないの?」
「はい」
「そう」
平常心、平常心、へいじょうしん。
こんな時覆面に感謝する。きっと今、真っ青か真っ赤な顔が出来上がっているはずだ。
何もかもがタイプで性別なんて関係ないくらい好きになって、生まれて初めて告白なんかして(告白は山ほどされていた)、友達から…って清らかなお付き合いが始まって、飲みに誘ったり誘われたり、お互いの家で過ごす時間が増えて、再度交際を申し込んだら俺も好きですって言ってくれて、手を繋いで、触れるだけのキスをして、同棲始めて……半年。
知識が無かったのもあったけど、やっぱりヤるなら抱くのは俺。そこは譲れなかったから大事に大事にして待った。
イルカ先生を怖がらせないように、ゆっくり馴らしていこうって。
なのにさー…、
「えーと、いつ?」
「え?」
「初めてシたのって」
「…去年のイヴです」
「あー、そう」
去年のイヴってさー、絶対恋人だよね。
じゃあ俺は何番目の男?そいつとはいつ別れた?俺の方が好き?嫌いだから今までヤらなかった?
聞きたい事と知らない奴に対する嫉妬が無限に沸き起こる。
…余裕なんて持ち合わせていない。
「あの、カカシせんせ…」
「ごめん、ちょっと構わないで」
二人とも全裸で、これから愛し合おうって時に一番してはいけない質問をしてしまった。
倒していた体を起こし、ベッドの脇に座る。イルカ先生に背を向けるようにして。
「聞かなきゃよかった」
タバコを手にしながら、無意識に呟いてしまった一言にはっとする。
振り返った先にイルカ先生が泣いていたから。
「っ…ごめ、なさ…い…!ごめん…な、さい…っ!」
「何で、謝るんです?泣かないで、イルカ先生…」
「だって…俺が、初めてじゃ、ないから…っ!カカシ、せ…せー、怒ら、ない…で。俺の事…嫌いに、ならないで…」
イルカ先生、今なんて言った?
――俺が怒ってる?
「怒ってなんか、ないですよ。ただ、少しショックだったんです…餓鬼じゃないのに、バージンなんて意識して。俺の方こそ、ごめんなさい。だから泣かないで下さい、お願い……大好きだから」
「うー…、カカシ先生!カカシ先生!俺も好きです!大好きです!こんな俺でもいいですか?初めてじゃなくてもいいですか?」
「当たり前です!貴方は俺の大事な恋人なんですから」
ぶわっと涙を次から次へと溢れさせながら、イルカ先生は俺を抱きしめてきた。
震える、傷だらけの体を抱きしめ返した。
暖かくて、離したくないと思った。
イルカ先生の元カレにざまーみろと言いたくなった。
――こんなに可愛い人を手放すなんで、お前は世界一の馬鹿だよ。だから俺は、世界一の天才で幸せ者だ。
「続き、してもいいですか?」
「…はい」
こんな聖夜も悪くない。最高のプレゼントを貰ったから。
*後記*
ぎりぎりクリスマスに間に合いましたー。
クリスマス関係ないじゃんと言われればそれまでなんですけどね;;
結局は二人とも好き合ってるって事ですよね^^
甘ーい一夜を過ごして欲しいものです。
もう少しで25日、終わってしまいますが、
Merry Christmas!
あー、彼氏ほしい…。(笑)