SPEAK/24

clap res words book
2021/9/15 15:15 +Wed+
すべて忘れてしまうから/燃え殻

著者の燃え殻さんのことは一切知らなかった。
本屋で見かけて、タイトルや装丁やぱらぱらと開いてみた感じに惹かれて購入してみた。
エッセイなのだけど、気張ったものではなく、ふっと零すつぶやきに近い。
結果、独特のシニカルな目線からくる悲哀みたいなものにしっかりとはまってしまった。

ひとつのエピソードが3ページと短く、ひとつひとつのエピソードの後に、長尾謙一郎さんという方の絵が据えられている。その絵がまた不思議な哀しさを秘めている雰囲気でいい。

たくさんの小さな抽斗が並んでいるような本だと思った。
大きな出来事などめったにない日々の中で、少し嬉しかったり少し悲しかったり少し腹が立ったり、時間が過ぎれば忘れてしまいそうなのになぜか忘れられない小さな出来事は案外たくさんある。
そのささやかなエピソードたちが入った抽斗が並んでいるような本。
感じるアンテナの感度が高い方なのだと思う。
現在のエピソードから過去の思い出に飛んでまた現在に戻ってきたり、小さな今の出来事を過去とつなげるのもとても巧い。

シンプルに面白かったので、このエッセイの続きになっている1冊も読みたいし、小説も出されているようなのでそれも読みたい。
明るくはないが、けして暗いというわけでもない、フラットな雰囲気がとてもよかった。



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