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2020/1/25 01:57 +Sat+
ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治

話題になっている新書。
児童精神科医である筆者が、多くの非行少年たちと出会う中で、少年院には認知機能が弱く「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が多数いることに気づく。
その問題の根深さは少年院に限らず、普通の学校でも同じで、人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当てて問題を解説していく。

未成年の少年少女が起こす事件は、時々ニュースでも観る。それはセンセーショナルであったり、中身を知ると残酷だったりするものも少なくない。
そういうのを知った時、今までであれば「どんな育ち方をすれば10代の若い時にこんなに酷い事件が起こせるのだろうか」という感想を持つことが多かったけれど、この本を読み終えた今は考え方が変わった。
中には恐らくこの本で問題にされているような知能障害であったり、そもそもなかなか発見されにくい境界知能という知能障害と健常者の境目にある人も多くいたのだろう、と想像できたから。
認知機能が弱いということは、感情コントロールが苦手で、身体的にも不器用(力加減ができない等)、対人スキルの乏しさ、想像力の欠如、不当な自己評価などが挙げられる。
そういう知能障害からくる特徴が、若い頃の犯罪へと繋がることもきっと少なくない。
犯罪を起こして少年院に入る以前に、通っている学校でその障害に気づいて対処できていれば…とは思うものの、実際の現場でそういった対処をするのは難しい。専門家があまりにも少なく、知能のテストの仕方によって基準が違うことも問題だ。
何よりそういう意識を持って子どもたちと触れ合う大人が少ないことが問題なのかもしれない。面倒は避けたいし、臭い物には蓋をする。

思い返してみれば、自分が小さい頃にも、早いうちから勉強に全くついていけない同級生がいた。彼らがどうだったのかは分からないけれど、もしかしたら中には、普通の学級に入ることは支障のない程度の、境界知能の子もいたのかもしれない。
認知機能の弱さの影響で、絵の中から同じ図形を探すだとか、何かを等分に分けるだとかができない子どもたちがいる。それは漢字を覚えるだとか簡単な算数以前のつまずきなので、そこをクリアできない子どもたちに無理やり勉強させても苦痛につながるだけだ。
こんなことを考えてみたこともなかったけれど、そういう時点で救われなかった子どもたちの多くが非行に走るのだとしたら、あまり知られてはいない大きな問題だと思った。
そうして救われないまま大人になり、さらに凶悪な犯罪を起こす人も中にはいる。
厚くはないし読みやすい本だったのだけど、色々と考えてしまいとても複雑な気分になった。犯罪に走る以前に少年たちを救済したいというこの筆者の取り組みが、もっと急速に広まればいいと思った。



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