2011/01/08 04:24
(おはなし)
声が聞こえた気がして少女は振り返る。
誰もいない。
前に向き直る。
瞬間、黒が少女を包む。辺りは暗くなって、足場が消えて、少女は抵抗も出来ずにただ落ちた。落ちて、落ちて、落ちて――。
果て、どさ、と大きな音を立てて尻から着地。閉じていた目を開けるとそこに広がっていたのはさっきと変わらない風景。なんだったのだろう、と首を傾げて、しかし少女は深く考えることもせずにゆっくりと立ち上がり尻の土埃を払う。
そうしてまた歩き出そうとしたその時、
「おい」
声がした。今度ははっきりと。
振り返る。人がいた。
どこかで見覚えのあるしっとりした黒髪と、やはり見覚えのある――しかし知っているそれよりかは幾分か低めの――鉤鼻。
少女は僅かに瞠目し、それからまじまじとその人物を見つめる。それを知ってか知らずかその人物――少年は少女に近寄り、同じ様にまじまじと見つめ返してきた。
「…レイブンクローの生徒か。見ない顔だけれど」
怪訝そうな顔つきで問うてくる少年。視線がぶつかり、少年は一瞬、ほんの一瞬少女の碧眼に見入った。澄んだ海の様な、純粋で深みのある碧だ。
「わたしはルーナ・ラブグッドって言うんだよ」
「ラブグッド……?」
怪訝な顔つきが一層深くなり、少年は首を捻る。何処かで聞いたことのあるラストネームだ。確か――
「そういえばレイブンクローの監督生におまえと同じラストネームの…」
「…もしかして、ゼノフィリウス・ラブグッド?」
「ああ、そうそう。兄妹か何かか?」
既に何と無く現状を把握し、この事態に順応しつつある少女は一つばかり頷いてみせた。それですっかり――とまでは言えないが――気を許した少年は踵を返し、校内へ戻ろうと足を進めた。しかし数歩歩いたところで少女に手首を捕まれ立ち止まる。
「……なんだ」
「…あんたはセブルス、だよね?」
多分つづく。
ルナセブ。すきすぎてつらー(´^ω^`)
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