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『盗角妖伝(とうかくようでん)』 廣嶋玲子(岩崎書店)
廣嶋さんはやはり「児童文学」という感じですね。
舞台は戦国時代のはじめ。源太という少年が主人公です。源太はみなしごで、博打でその日の生計を立てています(不健全な(笑))。彼はさいころの博打で稼いでいたのですが、彼が使うさいころには付喪神・乙音が宿っていました。だから負けなしで稼げていたのです。
そんな源太だったのですが、ある町で、ある女にそのさいころを奪われてしまいます。彼の相棒であり大切な家族である乙音を奪われ、源太はその女を追いかけます。どうしても乙音を失うわけにはいきませんからねぇ。
そんな彼はひょんなことからある妖怪に出会います。少年の姿をした妖怪です。その少年には一つだけ角がありました。少年は名前を教えられないのだと源太に言います。そこで彼は真っ赤な髪にちなんで朱丸(あけまる)と呼ぶことにしました。
朱丸も源太と同じ女を追っているようで、彼もまた大切なもの…もう一つの角をその女に盗まれていました。そこで二人は渋々共に女を追うことにします。朱丸を追いかけてきたという守り役の巣守も加わり、三人で女を追いかけます。(この続きが知りたい方は追記(続きを読む)へお進みくださいませ)
・・・半分ほどかいつまんで語ってしまいましたが(笑)まさに児童文学です。角があるということから想像するのはやはり鬼ですが、なんとその正体は…という意外さもあり、適度な闘いもあり…というものです。源太は決してオールマイティではありません。どこにでもいる普通の少年です。口は悪いし文句も多い。闘うのは怖いし嫌です。面倒ごとにも関わりたくありません。すごく人間くさいです。行動を共にする妖怪とも口げんかばかりで、ちっとも仲良くなりません。けれど、そんな主人公だからこそ、魅力があるのだと思います。だって全て出来てしまったらそれはもう人間じゃないですから(笑)それこそ正に妖怪の分野です。それは妖怪が担当するべきものです。
実際朱丸はかなり強い妖怪でしたから。周りが強いから少年は弱くても構わないんですよね。それが少年らしいんですから。そんな弱い少年でも、自分が大切にしているものだけは取り戻したいと頑張るんです。
だからこそ、主人公に愛着が湧くのかもしれません(笑)
そこまで難しくもなく、適度にアクションがあり、人間の汚さ…というか欲?があり、強さがあり。ちゃんと色んな要素が含まれつつも、さらっと読めてしまう小説でした。
ファンタジーのとっかかりにはいいのかもなぁとか思います。
『まっくらな中での対話 茂木健一郎withダイアログ・イン・ザ・ダーク』 茂木健一郎(講談社)
この本は、表紙を見て手に取りました。一見すると小説のタイトルのようなタイトルです(笑)
ですが、目次を見ると全くそんなものではなくて。簡単にこの本の内容を説明してしまえば、ダイアログ・イン・ザ・ダークの魅力とは何か、が只管対談形式で語られています(笑)
ではまず、ダイアログ・イン・ザ・ダークってなんだろう?ってところから始まりました。
私にとっては初めて聞く言葉です。そうして疑問だらけのまんま、まぁいっかと本を読みはじめてみると、まずはダイアログ・イン・ザ・ダークがどのようなものなのかを説明してくれています。この本は、脳科学者の茂木健一郎さんとセラピストの志村季世恵さんの対談から始ります。
ダイアログ・イン・ザ・ダークとは「完璧な暗闇を作って、その中で遊ぼう!」というようなエンターテイメントらしいです。今の人って本当の全くの暗闇の経験がないんですって。志村さんは、日本で始めてこのダイアログ・イン・ザ・ダークを始めた人です。暗闇の中で、視覚を完全に消してしまい、他の感覚を研ぎ澄まして、物を感じる。その中には様々な発見や驚きがあるそうです。第一章の対話は、志村さんと茂木さんの二人で、志村さんがダイアログ・イン・ザ・ダークを始めたきっかけ等をお話しています。
第三章になると、その対談の人数が増えます(笑)。ダイアログ・イン・ザ・ダークでは、完全な暗闇を作った部屋を動き回ることになります。そのため、案内人として、視覚障害者の方の手を借りることになります。なぜなら、彼らは暗闇のプロだから。彼らほど暗闇で感覚が研ぎ澄まされた人はいません。そのため、安全性を考えると彼らの手助けが必要不可欠になるわけです。第三章ではそんな案内人の視覚障害者3名を加え、5人での対談になっていました。彼らが語るのは、ダイアログ・イン・ザ・ダークで擬似的に視覚を失うと見えてくるものが様々あるのだということ。勿論話題は視覚障害者に対しての考え方にも及びます。そこで言われるのが、まだまだ日本は視覚障害者が自由に生きられる国ではない、ということ。
障害者=可哀想というイメージがついて回ってしまうのが日本です。アメリカだとそうはなりませんよね?なんたって自由の国ですから(笑)本人がやりたいことは、周りが支援してでもさせるわけだし、チャレンジできる環境があります。日本ではそうは行きません。それは残念なことですよね。私自身、やっぱり障害者の方を見ると、ついつい大丈夫かな、出来るかな?と上から目線になってしまいます。それは隠せません。ですが、もっと視野を広げてみると、それは彼らにとっては普通であり、全く問題の無いことなんです。対話の中で彼らも言っていますが、「障害を持つ人は、自分を可哀想だとは思っていない」と。そうなのです。同じ人間なんです。別に目が見えていようが見えていまいが、耳が聞こえようが聞こえまいが、同じ人間です。感じることに違いはないのです。普通の人です。なので、自分が出来ることはするし、何かに挑戦したければ挑戦します。私達と何一つ変わらないどころか、感覚は恐らく何倍も彼らのほうが優れています(笑)私達健常者は、感じることに鈍感ですよね。限界を決めてしまっていますよね。
その分彼らのほうが、人生を楽しんでいるのかもしれないと私は思いました。健常者でも出来ないことは出来ないのだし、手助けが必要なときは必要です。障害者だからと言って特別なことではないんですよね。
この本を読んでつくづくそんな感じがしました。
文庫本ですが、内容は濃ゆいです。5人の対話を読みながら、共感したり、自分はどう考えているのか、などたくさん考えられる本だと思います。ですが、それほどかっちりではないのですいすい読めちゃいます。皆様の対談風景が明るいので、気楽に入れちゃいます。
この本を読んで、ダイアロク・イン・ザ・ダークに参加してみたいなぁ、とか、もっと色々やってみたいなぁと思ってしまいました。いつかは・・・と胸に秘めて生きていきます(笑)まだまだ人生楽しんでないなぁと。
そんなことをついつい考えちゃう本なのではないかと思います。今までの狭い視野から少し広い世界が見えるような、偏見とかもなくしていけちゃいそうな、そんな本なので、色んな人に読んでもらいたいなぁと秘かに思っちゃいました。