無名日記(三代目)

主よ、人の望みの喜びを[パラレル無双/清行+村重右近]
2013.1.27 19:57

初描き行長。
マント描きづらいんじゃああああ!





★★★


久々に語ります。

ついったーにぽちぽちあげていたのですが、長くなりすぎたためこちらにまとめました。

キリシタンがひどい迫害を受ける社会で生きる、行長と右近とその他の人の話。時代は戦国〜江戸くらい。あんまり原作とは変わりません。


【主な登場人物】
小西行長…キリシタン。洗礼名はアウグスティヌス。白拍子の真似事(舞手)をして生きている。

高山右近…キリシタン。洗礼名はジュスト。行長と行動を共にし、白拍子の真似事(楽器と唄)をして生きる。潔癖症。

加藤清正…大大名豊臣家の子飼の将。熱心な日蓮宗徒で、キリシタンにはやや否定的。

荒木村重…豊臣家と親しい大名のひとり。趣味は茶器の収集。ひとつで一国が買えるほどの価値がある茶器を数多く所有する。


こんな彼らの出会いが運命を変えていく的なお話です。シリアス風味?
相変わらず文章ガッタガタ。語りなので、小説ではありません。ご了承ください。


はっじまっるよー!





《主よ、人の望みの喜びを》



白拍子(舞や唄を生業とする遊女のようなもの)の真似事をしている行長と右近。キリシタンであるために厳しい迫害を受けながら、互いを頼りに生きてきた。
真似事とはいえ白拍子、というわけで、『裏のお仕事』もしてる。しかしそれは行長だけ。
右近はそんな行長を見て、生きるためには仕方の無いことだとは分かっていても、どうしても割りきれずにいる。
「お金になると分かったら、あの人はなんでも売るのです…自分の体も」
と若干軽蔑気味。

でも実は行長は「あの子、高いから」とかなんとか言って右近を指名した客も丸め込んで相手にしてる。
お金になると言うのもあるけど、第一に右近だけは守るいう思いがある。
どんなに酷い仕打ちを受けても教えを忠実に守ろうとしている右近の姿が行長の一種の支えになっている。


で、ある日、豊臣家が野点をしているところに偶然通りかかった行長と右近。
白拍子をしてると知って秀吉が声をかける。その場で芸を披露し褒められ、しばらく豊臣家に泊まっていけと勧められる。
(主に行長が)喜んで早速転がり込む2人。

秀吉やねねは明るく迎えるが、子飼達からは敬遠される。


時間が経つにつれ、三成や吉継とは打ち解けるが、清正たちとは喧嘩が耐えず更に溝を深くしていく(主に行長が)。

行長たちが厄介になってから数日、とある戦のあと、秀吉が諸大名を招いて大茶会を催す。
行長と右近も呼ばれ、芸を披露することになる。

そこで招待客として来ていた村重が、行長の横で唄をうたう右近を見つける。


一通りの芸を終え、一息ついている行長の元へ村重が歩み寄る。

「おい…あの、唄をうたっていた男は…」

「右近のこと?相手にしよ思たらアカンで。あの子、ムッチャ高いさかいなぁ」

「…いくらだ」

「せやな…アンタが持っとる茶器くらいやなぁ」

「…それは、高いな」

「せやろ?なんなら、ワイが相手したろか?」

「…いや、よい」

そのまま人混みに消える村重。

その日はそれで終わり、行長も少し裏の仕事をこなしたあと、自分の部屋に戻ろうとする。

しかしその途中、険しい顔をした清正に出会う。


「…いつもあんなことをしているのか」

「なんや、聞いとったんか。子飼の将も、えぇ趣味持ってんなぁ」

「質問に答えろ」

「…せやで。なんか文句あるんか」

「…耶蘇教では男色を禁じていたと聞いたが?」

「銭のためや。そんなんも分からんとは、おめでたいヤツやな」

「たかが金のために教えを破るのか」

「たかが金…せやなぁ。やけど、その金がなけりゃあだァれも生きていけへん。能天気で恵まれたクソガキには難しいかもしれへんけどな」

「高山もか」

「馬鹿言いなや。あれはワイとはちゃう。二度とそんな目でジュストを見んな」

「じゅすと…?」

「右近の洗礼名や。『正義の人』…別に覚えんでえぇけど」


振り払うように清正から離れる。やっとたどり着いた自室で、行長は深くため息を吐いた。


「ジュストは…ワイが守る。それだけが…」


泣き声にも似た呟きを、清正だけが襖の向こうで聞いていた。




***




ひと月近く経った頃、突然村重が豊臣家を訪れ、白拍子たちを出せと秀吉に迫る。

騒ぎを聞き付けて表に出てきた行長と右近。
2人の姿を見付けると、村重は右近に近付き、目の前で持っていた荷物を広げる。

中には、輝くばかりの黄金の小判が山のように積まれていた。


「これ、は…?」

戸惑う右近。村重は、ややぶっきらぼうに話し始める。

「…茶器を売って作った金だ。家の蔵には、この数十倍はある」

すべてを理解した行長。言葉を遮ろうとしたが、遅すぎた。



「そなたを、買いに来た」



その一言で、行長が村重に飛びかかる。
地面に押し倒し、胸ぐらを掴んで叫んだ。


「何考えとるんや貴様ァ!!空気読めやドアホが!!貴様なんかにジュストを売るわけないやろが!!死ね!死んで地獄に堕ちろ!!貴様なんか…!!」


慌てて清正が行長を取り押さえる。それでも尚、行長は「貴様なんかに!」と叫び続ける。

一部始終を見て、守られていたのだと気付く右近。
村重に近付き、頭を下げる。


「…至りませぬが、よろしくお願いします」

それを聞いて愕然とする行長。

「ジュスト…!?」

「アウグス、今までありがとうございました。もう、貴方ばかりが罪を背負うことはないのです。私にも…戦わせてください」


そのまま村重についていく右近。その背中を見て、はじめて、行長は涙を流した。





***


《右近side》



「村重様、お聞きしてもよろしいですか」

「…なんだ」

「アウグス…行長は、私をいくらだと申したのですか」

「…私の茶器くらいだと」

「それは…高いですね」

そんな値打ちなどないのに、と右近は笑う。


村重の屋敷に到着してすぐ、右近は奥の部屋へ通された。
村重は、先程の荷物をもう一度広げながら右近に語る。


「…あの男が申す値ならば、そなたには一夜でこれだけの価値がある。先程も言ったが、蔵にはこの数十倍の金があるのだ」

「…はい」

「だから、私にはそなたを数十夜ここに留まらせる権利がある」

「…はい」

「だから…その…ゆるりとしろ」

「…は?」

「…私は、少しだが耶蘇教に理解がある。耶蘇の教えでは男色は禁忌であろう。だから…その…」

村重は少し言いづらそうに、顔を俯かせながらボソボソとした声で

「…私はそなたに惚れている。だが…無理強いするつもりはない…。…傍に、いろ。それだけでよい」

「…!」


そこまで話し終えると、村重は顔を真っ赤にして、金をそのままに部屋を出ていった。

一人残された右近。胸元に掲げた十字架を静かに握りしめて、力無く微笑んだ。


「…どうやら、また守られたようですね…アウグス」




***



《行長side》


「行長の様子はどうだ、清正」

「三成…柱に縛り付けてやっと落ち着いたところだ」

「そうか…余程、大事だったのだろう。無理はない」

「高山があの様子だから、てっきり不仲かと思っていたが…」

「否。何時如何なる時も、行長は右近に誠実なり」

「…そのようだな」

「頼んで良いか、清正」

「…あぁ」



暗い部屋。奥の柱に縛り付けられた行長。顔が、少し腫れている。


「…やりすぎや、ドアホ」

「こうでもしなきゃ、村重のところに殴り込みに行くだろう」

「ちゃう…顔や」

「顔?」

「顔は芸人の命やで。腫れが引かへんで、銭稼がれへんようになったらどないしてくれんの」

「そこまで生意気が言えるなら上等だな」


清正が、行長の目の前に腰を下ろす。しばしの沈黙の後に、ポツリポツリと行長が語りだした。



「ワイはなぁ…親も兄弟もみぃんな耶蘇教で…ヒッドイ目におうて、バラバラになって…。死にたくても…死ねへんで…ずっと、ひとりで……そこに、ジュストが…右近が……おって…。ワイは…生きるために、たっくさん教えを破ったのに…あいつは…絶対、破らんと…生きてて…むっちゃ…綺麗やって……」


「守りたかった」、と繰り返す。
涙は流れていないのに。その姿はひどく痛々しく、泣きじゃくる子供のようで。

清正はしばらく黙って聞いていたが、ふいに声をかけた。


「なぁ…さっき、『金を稼げなくなったらどうするんだ』と言ったな」

「…あ?」

「養ってやる」

「…は?」

「俺がお前を養う。それで良いだろ」

「…は!?」


行長は勢いよく顔を上げて清正を見つめる。
清正は、バツが悪そうにそっぽを向いていたが、冗談ではないとその頬が語っていた。


「村重は…少しワガママなところはあるが嫌な奴じゃない。耶蘇教についての理解もある。高山のことも悪いようにはしないはずだ。だから…お前はお前でここでゆっくりしとけば良いだろ」


ふと行長の方を見やれば、目を見開かせポカンと口を開いていた。

恐る恐ると言った感じで、清正へ声をかける。


「アンタ…馬鹿なん?」

「なっ!?」

「今までのことちゃんと覚えとるん?さんっざん喧嘩して罵倒していがみあっとったんやで?ワイら」

「覚えてる」

「やったら…なんでなん?さっきの身の上話聞いて情が湧いたなんて言わへんよな?気持ち悪いで」

「違う!黙れ!」


清正は行長の顎を掴んで柱に押し付けた。そのまま、自分の口で相手のそれを塞ぐ。
行長の目は混乱の色しか混じっていなかった。



「うまく…言えないんだよ」

「………はぁ」

「だから…ゆっくりしていけ」


清正はそのまま足早に部屋を出ていった。
残された行長は、清正が去っていった方を見ながら


「……ホンマもんの馬鹿や」


そう呟いて、深い深い溜め息を吐き出した。






***



こっからどうなるかは皆さんにお任せします☆

たぶん行長と右近が劇的な再会を果たしたり、右近と一緒にいたいために茶器を売りまくる村重に右近本人が説教したりという日々が続くでしょう。

こんな長い文章打ったの久しぶりやで…レポートでもよう書かん…


楽しかったあああ!



ではでは、ここまで付き合ってくださってありがとうございました!


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