タイトルなし

症候群本編【73話】
時は戻り、現在―――――
アンデグラウンド王国都心部上空。戦闘空域外の此処に対峙しているのは、イギリス軍戦闘機1機とアンデグラウンド軍戦闘機1機。やはりまだお互い、戦闘機パイロットがロゼッタとバッシュである事には気付いていない。バッシュ機の赤い光を纏った二刀のサーベルを拡大してモニターに映すロゼッタは目を細めて眉間に皺を寄せる。
「何じゃあれは…ただ光を纏っているだけか?いや、それだけでは…ぐあっ!」
ドン!ドンッ!!考察している時間すら与えてはくれないバッシュ機が2発砲撃してきた。すぐに回避した為命中は免れたロゼッタ機だが、空中で爆発した砲撃の爆風により機体が大きく揺れてしまう。体勢を立て直すその僅かな時間すら隙と見てついてくるバッシュ機の猛攻に回避する事でしか対応できないロゼッタ。ドンッ!ドン!
「チッ!この私を馬鹿にしおって!!私の道に立ちはだかるというのなら、アンデグラウンドの名も知らぬパイロット!貴様を葬らせてもらうぞ!」

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症候群本編【73話】
「あれ?おーい姐さん?」
「まだ許可を出していないというのに」
「え?」
「全くお前という奴は」
「あ!やべ!すんません」
口に手の平をあてて汗を掻きつつ明るく笑う。くるり。立ち止まってようやく、バッシュへ顔を向けたロゼッタ。
「これからまたよろしくなバッシュ」
今日初めて会ったばかりなのに"またよろしく"と言うロゼッタに疑問を抱くよりも先に、今日初めて笑顔を見せた彼女の笑顔が一瞬、13年前のあの日シャングリラ宮殿でバッシュが出逢った初恋相手エリザベス女王と重なった。

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症候群本編【73放話】
「ロゼッタさんも大変っすよね。女性なのにこんな面倒くせー代表もやって、家に帰ったら家事もやってるんすよね。夕飯は旦那さんが作っているんすか?」
「面倒くさいとは何じゃ。別に。この仕事が気に入っているし、結婚もしていないから苦ではない」
「え?そうだったんすか。何か…すみません。でもロゼッタさん怖いけど美人だし強そうだからきっと良い奥さんになれそうっすよ!ほら!やっぱり男から見たら女性は仕事に一途になるより、良い人を見つけて幸せになってほしいし!あ。別に差別しているんじゃないっすよ!ロゼッタさんって姐御肌って言うんすか?そんな感じです!あ!じゃあ姐さんって呼んじゃっても良いっすか?」
「……」
13年前の人物がロゼッタだとは気付きもしないバッシュ。ロゼッタはずっと男の中で軍人として生きて女性らしい人生など歩まず、両親が存命時に紹介された見合い相手からも、女性らしくないからと婚約を断られ、周囲からも"姉のエリザベス女王と違いロゼッタ様は男勝りで女性らしさが欠如している"と言われてきた過去を思い出す。だが、13年前も今日もバッシュはちゃんと自分を女性扱いしてくれるから…、

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症候群本編【73話】
「ほう。もしやそれはエリザベス女王陛下か?」
「えっ何で分かったんすか!正解っすよ!だから俺ずーっとエリザベス女王に一途なんです!あ。もしかしてロゼッタさん初対面なのに俺の事をバッシュって呼んだのって、エリザベス女王から俺の呼び方を聞いていたからとかっすか?」
「聞いていたからとか、じゃ」
「えー!マジっすか!冗談で言ったのに!それマジっすか!嬉しくて死にそう!まさかエリザベス女王が、まだガキだった俺の事覚えててくれたなんてこれは運命以外の何ものでもないっすね!ロゼッタさん!俺達の恋のキューピットになってくれませんか!?」
「死んでもならん!!」
顔を真っ赤にムキになってバッシュの方を振り向いたロゼッタ。
「?」
「…ハッ!」
ーーなっ、なななぁ?!私は何故こいつ如きにこんなにムキになっておるのじゃ!?くそーー!体が熱い!イライラする!何故じゃ!?べ、別にこいつの事などどうも思っとらん!!こいつが、女子(おなご)とくっつこうが、私には何も関係無いじゃろう!?なのに…なのに!!くっそーーーーー!!ーー

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症候群本編【73話】
「あまりそうやって誰構わず愛想を振りまいていると後で痛い目にあうぞ」
「えー!俺そんなチャラい奴に見えま、」
「見える」
「マジかー!超ショック!こう見えて10歳の時からずーっと一途なんすけどね〜」
ピタッ…、ロゼッタが一瞬立ち止まる。
「ほう。意外じゃな。そんなに美人と逢ったのか」
「あっ。やっと話に食い付きましたね?」
「別にそんなんじゃない」
「まぁまぁ照れないで下さいって!聞いて下さいよ!俺母国の王様の幼馴染みなんすけど、よく宮殿でそいつと遊んでて。あっ。もう王様だからそいつなんて呼べないか。ま、取り敢えずそいつと遊んでたら調度イギリスがアンデグラウンドに同盟を結びに来た日だったみたいで、俺の前にそれはそれはもう絶世の美女っていうかどっちかって言うと可愛い系?のイギリス人の女性が現れて、俺10歳ながらにドストライクでしたよ!」
その"絶世の美女"が、まさか自分だとは言えないし言わないロゼッタだが、彼に背を向けているからこそ頬を赤らめる。まさかバッシュが当時の事を覚えていたとは思わなかったから、密かに嬉しいロゼッタ。
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