+黒い糸の意図+



創まれた世界、生きる世界の異なる貴方。
俺ははじめ、「斎」という1人の人間の心のひとつ、そんなあやふやな存在だった。だから、貴方との出会いは奇跡に近かった。
たった一つの共通点は、俺が実体を持った時の姿が自衛官で、彼と同じ職柄であること。
ただそれだけ。
何かの偶然、一度隣り合っただけで、もうこの先逢うことなど無いと思っていた。
でも、名前と姿だけの、それ以外持ち合わせぬ心許無い貴方の事を、俺は忘れる事ができなかった。
どんな考え方を持ち、どんな生き方をしてきて、
…好きなものは、一番の思い出は…
どんな風に話し、どんな風に笑うのか。もう一度、もっと知りたい、もっと聞きたい。俺は二度目の機会を見つけた時、貴方の背を追いかけた。貴方は、そんな俺に微笑みかけてくれた。
それが、貴方と俺の始まりだった。

「ターミネーター」だと言われていた貴方は、とてもとても優しい人だった。
俺の中の病んだ心、ずっと表に出る事は無かったであろう孤独を感じ取り、包もうとしてくれた。
けれど、温かな家族も持っていた貴方の場所に、俺は…居ることはできない…怖かった。
そう逃げようとする俺を、貴方は寄り添い離れなかった。離さなかった。
俺は、避けようと思えばいくらでもできたはずだ。でも、寂しさの凍り付いたしじまの瞳を、見て見ぬふりなんてできなかった。

少しずつ少しずつ、距離を縮めていく。
貴方の掌に、心に、触れていく。
貴方の心は外郭こそあれど、中身は何処かへ忘れてきたかのように、曖昧な欠片たちが今にも千切れ消えてしまいそうな真綿の様に転がっていた。
過去があっての今。過去があるから、今の貴方がいるのだと、俺は貴方と共に、過去を、今を繋いでいった。哀しい寂しい記憶が、両手いっぱいにあった。
そして遠い昔に貴方が置いてきた、独りぼっちの小さな貴方…。
「一緒に帰ろう」
手に触れ抱きしめた時、貴方の心へ、今まで埋もれ眠ってきた様々な感情が芽吹き始めた。そして咲いた貴方の笑顔。とても綺麗な、柔らかい笑顔。

貴方を守りたい。
心も、その身も、今までたった一人誰かのために存在してきた貴方を、傍で守りたい。
俺はきっと、この「世界」において、好ましくない行為をしているのだろう。
傷付けてしまった人もいる…。けれど、俺はどうしても、貴方…鎮也さんの傍に居たい、守りたい…強く願った。
そんな俺の我儘な心を、俺の創まれた「世界」の皆は背を押してくれた。
「大丈夫だよ」と。
だから俺は今、彼の傍に居ることができる。
とてもとても遠く、だけど近く…。

明日から、また少し、貴方との距離が生まれ、このどうしようもない"間"に、患う心の重苦しい不安で潰されそうになるけれど、俺と貴方、今の今まで交わしてきた心があるのだから、きっときっと、大丈夫…。

掌を、胸に当てると聞こえてくるよ。
トントン トントン……
 生きている命の音の中に、
貴方のくれたたくさんの愛情が、
ほら、たくさん。

 ありがとう。


鎮也さんside→「黒い糸の意図*

話題:コラボ
「こころわけ」
鎮也さんと慶龍


こんばんは、めのこです。
今日はほんのり暑くなってきましたね。
朝は、近隣の学校でしょうか、運動会の合図が青空で軽やかに響いていました。

さて、先日お話していました「こころわけ」についてですが、お話の進め方の変更に伴いカテゴリも追加させていただきました。

+DIARY+
今の鎮也さんと慶龍(個々の心)
+分ち合った日々+
出会いから今までのお話

本来なら出会いから今、そして未来を繋いでいこうね、とRinaさんと話し合っていたのですがわたしの今の状況だと進行が滞ってしまいます…。なので、慶龍と鎮也さんの意志も尊重して、このような形とさせていただきました。

この二人の物語、「こころわけ」のタイトルは、わたしの大好きな上北健さんの歌「心分け」より頂いています。もともと、上北さんの作品世界は「斎」という人の考え方・心の在り方にとても合っていて、今回もそれと近しい気持ちはありましたが、この「心分け」の歌詞は、鎮也さんと慶龍を強く思わせるのです…。
これ以外、どの歌もしっくりするのですよね、二人のやり取り。不思議です。
「DIARY」もそのひとつ…。
 (他の斎達や慶龍の大切な歌い手さんを、鎮也さんにもRinaさんにも好いてもらえて嬉しいわたし達なのです*)
 
慶龍(めのこ)sideの「こころわけ」は暫く止まってしまうかもしれませんが、改めてよろしくお願いいたします。


きっときっと、みなさんも、身近なところでたくさんの人とこころわけをしているのですよ。
その心、たった一つの心…
大切にしてくださいね。

ツイキ
Thank You!
『こころわけ』*09/24 23:59
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