生きることは、なんだ?
死ぬことは、なんだ?

西大陸から北大陸に来るまで何度も自問自答してきた。
自分は割と昔から運がいいほうで、何回も命が危険に晒される前に逃げ延びてきた。
西大陸人の大半が難民と移民。
砂漠化が進んでいて、他大陸人のように豊かではない。北大陸のように車なんてものはないし、学校も娯楽施設もない。
北大陸人が占領してる西大陸のランドラマなんてとくに酷い。
子どもの頃から奴隷として働かされる。
俺もその一人だ。
なんでも、車や機械を使うための素材がランドラマには備わっているみたいだ。
詳しいことは、知らない。
ただ、俺らは素材を取るだけだ。
ここの環境は最悪だ。

「はーもうダメやー」
真面目に働いては、すぐにサボるのが俺の悪い癖でもある。それに引き換え隣の男は凄かった。皆んながバテてる中でもせっせと働いてる。
身体は、細くて紫色の髪。藍色の瞳。
日焼けしている肌。
黙々と全身汗水を垂らしている。
ある日俺は聞いた。
「名前なんて言うん?」
「‥名前なんて愛着がわくだけで、明日死ぬかもしれない奴に名乗るだけバカらしい」
「ということは、名前はあるんや。ええやん。俺の名前は、1508と呼ばれとう」
「‥悪かった」
そう、俺は管轄してる北大陸人が欲求を満たすために西大陸人を抱いて、孕んだ子供だ。こういう子供は沢山居て、番号として呼ばれる。親はいないからずっとここにいる。
「俺の名前は、アザシン。妹のために働いてる」
なるほど。こいつは、契約者だ。稼ぎ者のことを、契約者と呼んでる。
「そうか、誰かのために何か出来るのは羨やましいで」
俺は、目を閉じていう。
産まれてきた意味など知らない。記号として産まれて、ただ掘って、上のいいなりなってるだけだ。自分が死んでも誰も泣かないし自分が生きても、喜び尊いものにならない。
自分は誰かのためにいることはないのだ。
「‥‥」アザシンと名乗った男は考えながら掘っていた。
只管、掘り続けて適度にサボって1年目のことだった。
トロッコに、素材を積んでいると、3人位の男が近寄ってきた。
「お前あれだろ。契約者じゃなくて番号者。産まれた時から北大陸人の狗か」
「あはははは言えてる」
「狗は、サボらずに何度も掘っとけ」
とトロッコの素材を蹴飛ばされた。
ああ、ほんま五月蝿いわ。
消えて欲しいわ。
どっか行ってほしいわ。
上の管理者であるラストアルシャは、見世物のように笑ってる。
ちゃんと食べれんし、飲めへんし。
力出ぇへんから、もうここで亡うなっても誰も悲しまへんから‥ええかな。
その時一人の男をアザシンは殴った。
「なんだお前!」
「番号者も契約者も北の狗には間違いないだろう」
「よくも。」
と今度はアザシンに殴ろうとした。
「はいはい、そこまでにしといてくれるかな。働くの?働かないの?どっち?」
目を見開いた。青の軍服を着た茶髪の少年が軍手を着てここまできてる。幼い顔立ちに驚いた。
北大陸人がこんな遠路遥々くるなんて。
今迄このかた、こんな洞窟にまで来る北大陸人は居なかった。
北大陸人は、僕の取った素材を手にとって、微笑を浮かべた。
「‥いい仕事をしてるね君達は。君達のおかげで、いい素材が手に入るんだ感謝しないといけないね」
「皮肉を言いにきたんですが?北大陸人の軍人さん」
アザシンは、睨んでる。
「いや、本当のことでしょ」
北大陸人は、軍服を脱ぎ、シャツ一枚になるとつるはしでガンガンと掘り出した。さすがのアザシンはこれには驚いた。
さっきまで、にまにまと笑っていたラストアルシャは、顔が真っ青になっていた。
「なにされてるんですか!?トゥールシャ様!貴方様のような身分の高い方がこんな所で‥お前たち!?この方に無礼を働いてないだろうな!!」
俺たちを管轄をしてる大柄の男、ラストアルシャがくる。ああ、こいつによく奴隷扱いされてたっけ。
「ああ、こんにちは。ラストアルシャ殿。
父の部下‥そのうち僕の部下になるだろう者の報告を受けて、こちらの素晴らしい西大陸人様達の働き方を見直しにこちらまでお伺い致しました。
ところが、こんな素晴らしい職をされているというのに、
見た所、奴隷者が1万人。
記号者と呼ばれる方が1900人。
契約者が、15人。
そんなに、我々が与える資本は少ないですかね?いやね、僕は軍人ですがもともと資本家ですので、ここの制度の見直しをするのも大陸国家の仕事でしてね。なんでも、ミシュルトが管轄している莫大な資本を独り占めしてるとか。
まぁ、そんなことはどうでもいいんですが。
それより、今時、休憩時間がない仕事なんて仕事効率が悪いし奴隷者が1万人なんて馬鹿ですか貴方は。古いやり方なんだよ。ちゃんとお金を与えてるのがたった15人ってどういうことなの?これは立派な仕事だ。奴隷とかってじゃあなに?僕も今してるけど、僕奴隷なの?ん?」
「〜っっ」
「ぷはっ」
アザシンはつい笑った。怒られると思った。だけど、トゥールシャは、怒らずにずっと見てる。
「今すぐ貴方を北大陸中央都市に戻して、僕の書類整理でもしてくれるかな?ん?」
「あ‥あのはい」
「あ、それと。なにこの番号?北大陸人が粗相した人間の数かな?あーそうか北大陸人の失態数だ。あー。気持ち悪いね。糞だね」
アザシンはとうとう笑い転げた。俺は呆然として、トゥールシャを見た。
トゥールシャが、俺に近付いてくる。
そして、目線合わせて頭を下げた。
「北大陸人として代表として申します。貴方達はなにも罪はありません。恥ずべき行動をしてるのは我々北大陸人だ。先人達が、大変申し訳ないことをした。申し訳御座いません。謝って済む問題ではないことは承知の上です。我々がしたことを改正していきます」
あぁ、はじめて。
はじめてだ。
人間扱いをしてくれた。
俺は。
生きてるんだ‥。
ちゃんと生きてるんだ。
俺は涙を流してひざまづいた。

トゥールシャは俺達が、ガンガン働いてるにもかかわらず短時間でトロッコ一台分に素材を乗せて俺に渡した。

「さぁて、僕の仕事は大変そうだな」

俺には、難しいことは分からないが、トゥールシャという北大陸人が来て、上の人物がラドニアールという西大陸人になってからこの町の改革がされた。まず、奴隷制度が廃止され8時間の労働と1時間15分の休憩時間が労働基準法が発案された。また、栄養バランスがある食事と水の提供と、衛生完備の整った砂漠に強い建物を建設し、働きやすい環境にした。勿論全て簡単に行くわけがない。色々問題が出て来たし、長きに渡って奴隷化した人間の心理状態や砂漠化の問題もあったが、ラドニアールが北大陸と交渉してランドラマの町が住みやすくなった。

ある日、ラドニアールが俺をみた。
「君の名前はなんというかね」
「1508番。名前なんてあらへん。やけど、名前頂いたんです」
「‥そうか‥。なんて名前?」
「フィックスです」
「君は北大陸人を恨んでるかね?」
「‥‥よくわかりません。 やけど、トゥールシャって人はなんか違います。初めて自分が息しとうってことがわかりました。
初めて人間にしてくれました。
初めてご飯と水と寝床と休息を頂きました。
後、アザシンの笑顔もみれました」
「トゥールシャ様に恩がある人間は沢山おる。世界中おる。わしもその一人はじゃ。
だから、わしは絶対この町中心に西大陸を変えていきたいと思ってる。
勿論あの方が、困っている時は手をかしたいと思ってる」
「‥北大陸。どんな所ですかね。というかどんな方か気になります」
「‥また行ってみるといい」
その後、ラドニアールから北大陸の話やトゥールシャの活躍を聞き、いつしか憧れと尊敬を持つようになっていた。

1年後アザシンは言った。
「今日で、契約が切れる。俺は、妹と一緒に違う街に行く。長いこと世話になったな」
「ああ、達者で暮らせや。なぁ、アザ」
「なんだ、フィックス」
「わいも、もうちょっと金集めて、ここにちょっと貢献出来たら北大陸に行こうと思っとう」
「‥それは?」
「お礼言おう思って。トゥールシャ様に」
「そうか‥覚えてくれたらいいのにな」
「忘れとったとしても思い出してもらうように頑張ろうと思ってな」
「頑張れ」
アザシンはそう言って去った。
その一年後、俺は北大陸へ向かう船の切符を手に入れることは出来なかった。だけど、偶然にも海賊になったアザシン‥現在はアルーラと再会し、ある北大陸人に出会った。その人は、シュワン・ド・リード・フィリファルという男だ。
シュワンに北大陸に行くことを話したら、「やめといた方がいい」と止められたが首をふって「どうしても会いたい、俺はトゥールシャ様の元で働きたい」と俺は言った。
シュワンは、渋っていたのにトゥールシャの話題を出すと喜びに激変した。
「トゥールシャ‥トゥールシャ!!ああ、それはいい!いい!あの、ミシュルトなのに、礼儀正しい子!あの子だったらいいよ!寧ろなに!?世間せっまーはは。フィックス!」と俺の肩をたたかれた。
「なにが!?」
「俺の息子に会えっ!それが一番近道だ。地図を書いてやる」

なっ?俺の、人生運がいいやろ?
その後は、極寒の寒さやったけど、ラッキーなことが何度も続いて、アッシュさんの世話役になってから憧れのトゥールシャ大佐の元で働いとう。
「俺の人生は、トゥールシャ大佐のおかげでもっと好転してるんやで」
椅子に座って目を閉じてるトゥールシャ大佐を見て俺は微笑する。

人間は単純で複雑な生き物だ。
死とは何か。
生とは何か。
それは、分からん。
やけど言えることは、
生命の源なんや。
死も、生も表裏一体。
生は、もがき苦しく
死も、もがき苦しい。
だけど。
生は、健やかに眠れ
死は、安心して永眠することはも出来る。
そうやって人は存在する。

フィックスという名前の由来。
大佐はこういった。

フィックスは、修理、修正、固定‥色んな意味があるんだよ。
君は、どんな可能性を修理し修正して心固定できる才能をもってると僕は思うよ。
無限の可能性がある。
「君の生きる場所」を見つけてほしい。

ーー


少なくとも、俺の生きる場所は、大佐に忠誠を誓うことー‥。


つづく