でてくるひとたち
but u say no...
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ホテルの広いバスタブにふたりで浸かって、ゆうの脚の間に座る。バスルームの照明は落として、バスタブだけが柔らかな暖色に光るようにした。
ゆうに背を向けると、うしろから両腕で包まれる。ゆうはわたしの肩に顎をのせた。右の肩にゆうの伸ばしたひげがちくちくと当たって。
何気なくお湯を手のひらですくってはこぼして、それを見ながらゆうに聞く。
「元カノは?」
「元カノ?」
「うん、ギャル?」
「は?なんで?」
「なんとなく、ギャルとつきあってそうやから」
「いやいや、ぜんぜんやで」
「写メ」
「ないわ、んなもん」
「ぜったいうそー」
棒読みで言ってみる。おもしろいほどぜんぜん見たいとは思わないしさ。
ゆうの手がわたしの胸元に向かう。
「かえこそ、元カレは?」
「元カレはいないんですよ、すみませんね」
わたしがけいたとしか付き合ったことないと知ってて言う意地悪な奴。
「ああ、そやったな!」
「いや、ええから下手くそな芝居は。いやいや、笑すぎやろ、自分」
失礼な奴。でもまあ、楽しいよね。
「ごめんごめん、本気で笑ってもうたわ。んなら、元セフレは?」
「ああん?なんて?」
「いや、なんもないっすわ」
「あ、そう?」
この、中身のない会話。
もう、中身のない女だと思われている方が楽だから。
そうしているうちにもゆうの手は、わたしの肌ををすべって。あたたかいお湯に浸かりながらそれを感じていると、ふわふわ心地いい。
「ゆう」
「ん?」
「ねむい」
「あかんで、まだ寝させへんでな」
「んー、ねむたい」
「なんそれ、可愛い」
「え?聞こえへんかった、なんて?」
「お前なあ、ぜったい寝さしたらへんからな」
「ちぇ、それはもう聞こえたやつやし」
これ以上ないくらいくだらなくて茶番な感じ。本当は可愛いなんて言ってほしいわけじゃない。
甘く懐かしい訛りで、ふざけた話をいつまでもしていて。
ねえ、あのおっきなベッドで手をつないで眠ろうよ。いかがわしいことなしで、背中を抱かれながら眠りたい。
本当はね、ゆうにはただそういうことを求めたい。でもそれでは成り立たないところまで来てしまっているから、悲しくなったり、開き直ったり。
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