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世界は ひどく 退屈だ。

あっという間に終わってしまう童歌。

あっという間に潰れてしまう喉。

あっという間に枯れてしまう花。

あっという間に終わってしまう一日。

あっという間に消える星。

あっという間に 止まる脈。

あっという間に 冷える膚。



世界が 灰色に見える。
ざらついたのど。


秘密の『イタズラ』の快感だけが、世界を赤く黒く彩る。

それでもやはり大半は
退屈のまま。

あっという間のくせに
永遠のように続く退屈。

飽きる。
厭きる。

「聡すぎる」のだと愚かな学士は言った。
この体をむしゃぶりながら。

どう動くのか
どう言い回すのか

肌の色
目の動き
足の向き
指の仕草。

体温、発汗、鼓動

それらに顕れる思惑。

見えるだろう?
匂うだろう?

何を孕み
何を願うのか。



珍妙な顔をする従兄弟達。
そのくせ誘いには容易く堕ちる。

帝王の卵でさえ、『こう』だ。

『勉学』と『遊興』にふける日々。

『輝かしい』と讃え
灰色に染める、仮面を被る臣。

彼我の没入する悦楽。

それでも、底が、ひりつく。

これが、永遠ならばーーー…



『永遠なんて、ない。刻一刻と、変わりゆく』


 赤と 黒の 世界に
真珠が一粒、転がりこむ。


「ーーーーー皇女(ひめ)?」
「………早く逝け」
「ーーー…っ」


どう動けば悦ぶのか、獣でさえ知っている。

その 種の 繰り返し。連鎖。続く轍。

永遠の。

言い換えれば
無限の。

拡大図と縮図。



それが解らないなんて どんな馬鹿だ。



「………殿下。」
 日を紡いだような瞳に、鷹のように鋭い目。
跪拝(きはい)する その頭には 真珠の飾り。

皇国から届いた数少ない宝珠。
それを身につける…つまり
『王のお気に入り』

 愚鈍な父王の方が、先に見出だしていた。



無性に腹立たしくなり、
どうしたのだったか。


ーーー真珠が散らばる。


金色の。
まだ手つかずの。
無垢な光。


汚さなければ。
今度こそこの手で。


堕とさなければ、ここまで。


「ようこそ、こちらへ。
フィーラティシーア。洸泉(いずみ)の姫君」


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