C01 その手が隠したものは
人の動き、現場の動き、世の中の動きと動いていくものの大きさが変わっても、その躍動感が消えない。冒頭のイタタタタ場面はいいイタさでした…そこで題名を見て、なるほどーと思いながら読了してなるほど!と合点合点。すかっと面白かったです。

C02 月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。
猫かわいい…もう目の前で踊ってる。ああかわいい。彼岸と此岸、真と贋、理解者と敵対者と様々な対比で魅せてくれる京の一画。涼やかに淡々と進められていく仕事の一挙一動が綺麗。水羊羹や南部鉄器の風鈴など小道具に粋を感じる中で飛び出る圧力釜が好き。

C03 死の手招き
年配の人の話し方そのものだ、と思いました。伝えたいことに辿り着くまでに色々な話や脱線を経る語り口。でもその脱線した先にも、その人の真意や思い出が潜んでいることがあるんだよなあと。手招きが恐怖から…と変化していくのが哀しい。

C04 なにも宿らない
…そんなことないってー!!リスト弾けるなんて凄いじゃないか。心動かす演奏というのは技術だけでなくそれを奏でる人を通して人は音楽を聞く、とも聞くけれど。「私」にとってピアノは呪縛なのだろうか。であればそれを壊しうる手は彼女なのだろうか。

C05 鏡の中にいて私の中にいなくてあなたの中にいるもの
軽快に弾むようにやってくるホラー。学友としては、のくだりも面白かったし、非日常を閉じ込めるものにどのご家庭にもあります魔法瓶が登場したことで現実と地続きのような感覚に。考えるアシの部分は、はーなるほどと目から鱗。

C06 憎たらしい愛にさよなら
さだまさしの関白宣言が流れてくる…でもマイルドになってる感…と思っていたら。家のそこここに感じる、もういない人のかつての痕跡。カーディガン、味噌汁、縁側、と追えば追うほどに溢れてくるもの。溢れだしたものをそっと包み込める手であるように。

C07 迷い子の手
こういう関係なさそうで最後にはちゃんと繋がってる系の話好き…。音に関わる描写が読んでいて心に染みつくように綺麗。熱をもって、とか、夏のにおいを、とか。それだけで色んなものを含んで感じ取れる。手によって繋がる人たちのその後が気になる。

C08 ナインティーン・イレブン
コルトってなるほど。そのコルトか。翻訳風のかっとばすような言葉の応酬がかっこいい。啖呵を切るってこういう風にするのかあ。コルトの重さ、冷たさを知っている手が誰かの手を取ることができるのなら、と光の見える終わり方に嬉しくなる。

C09 プディヤの祈りは銀の蝶になって
この文字数の中で村の仕組みや風習を凝縮して伝えられて、読み終えた後にものすごい満足感。<糸の姉妹>とか刺繍の文化だとか好き。生活の傍らにある一つの物語。プディヤの迷いと優しさがちょっと大人びて見えて、それがまたかわいいです。

C10 奇病と難病
病院のベッドから、ゲームの世界で遊ぶ。現実の自分と乖離したはずの所に、不意に差し込まれる現実。驚きと好奇心と自己嫌悪とでいっぱいになりながら、それでも進んでいった「ボク」。「彼」の言葉は毒のように薬のように、優しいと思いました。

C11 トゥルーエンド
あ〜これも話の構成が面白い。トゥルーエンドってなるほど、そういうことですね。彼女がいるからこその物語。持っている力が話の道筋まで作っちゃうのか。すごい。数多の道が数多の未来になって彼女に教えてくれる。その結果取る道の強さがとても綺麗。