話題:夫婦の会話
戸籍上は私が一番上で姉妹がいるが、私には別に兄弟がいる。
産まれてきていれば私は2番目だ。
親の都合で中絶された一番目。続けて中絶したらマズイだろうと中絶免れた私。そして私の次に妊娠した子は、またもや親の都合で中絶された。
そんな私だが、母は私をずっと流産しないかなぁと考えていたらしい。実際に流産しかけたらしいが、しっかりしがみついてるんだもの。って笑って話していたのを覚えている。
笑えないよね…
私は望まれて産まれてきたわけではなかった。仕方なく産まれてきた子なんだよね。
私がそれを知ったのは思春期の時。
うちの父は酒を飲むと、私に昔話をしたがる。おかげで私は両親の馴れ初めやら、まあいろいろを知っている。これは、その中の1つでしかない。
私は思春期まで死にたくて仕方なかったんだけど、これを知って死ねなくなったんだよね。二人分の生を背負ってるから。その時はもう自分の人生を勘定にいれてなかったよね。二人分生きなきゃって。

それから十年近く経って、主人に出会ったよね。
結婚前は、あまり私のプライベートには触れてこなかったけど、結婚してから話すように促されたよね。
誰にも話す気なかったんだけどね。
プライベートを話すことは弱味を握られること、恥であること。と教わってたからね。
それでも主人は、しつこく聞いてきたよね。
そのうち、長い時間をかけてポツンポツンと話すようになったかな。
死と死の狭間に産まれてきた話をした時、主人は、こう言ったんだ。
産まれてきてくれて、ありがとう。
初めて聞いた言葉だった。
私は、どんな顔をしていたのか自分ではわからない。だけど主人が泣いてるよって言った。涙は出てなかったけどね。
そして主人は言ったんだ。
君に罪はないよ。罪があるのは親だ。君が背負う必要はないんだよ。って…
そう…私は背負ってた。自身の幸せなど勘定に入れず、二人分生きなきゃって。
私が幸せになるのは罪だと思ってた。
幸せを願ってはいけないと思ってた。
二人分の生を生きるために私がいるんだと思ってた。
主人は違うよ。と言った。
君は幸せになっていいんだよ。僕が幸せにする。必ず。
また顔が泣いてるよって言われた。
相変わらず涙は出てなかったけどね。

私の生き方は間違っていた。
自身の幸せを勘定にいれない生き方など間違っている。
でも長年培った癖って直りにくいんだよね。拗らせてるからね。簡単には直らないんだよね。
それでも少しずつ直す努力はしているんだ。
今でも、二人のことを思うと泣きそうになるけど…
一歩間違えば、私がこの世にいない存在だしね。
重いよね…って主人が言うよね。
父は相変わらず、私に何がしたかったのかわからないけどね。
思春期に聞くと、けっこうキツイもんだよ。いや、思春期以外でもキツイと思うけど。
自分が死んでたかもしれないなんて、聞いてもいいことなんてないよ…