ある日の会話

それじゃあ…
君は君自身の事が嫌いなんだね…?

そう言った彼女はコクンと頷いた

はい。そうです。

私自身、今まで選択してきた事が全部裏目に出てしまって…それで自分だけが損したら良いんだけど周りの人も巻き込んでしまって…



人間関係をうまく繋げられない事や現状も把握できないのも貴方の病気だって知ってる?


はい。知ってます。

でも、病気だからと言ってあんな行動とった自分が信じられなくて本当に嫌で嫌で…


そう。
で、話は変わるけどこの間、朝からxxやらの幻聴が聞こえたと言ってたけどそれに対してだけど…
大丈夫?真に受けてない?


そうなんですよ先生
本当に朝から辛くて仕事行かないといけないのに
それまでのエネルギー消費が…
でも、最近考えが変わったんです…
毎日が辛くて辛くて前まではいつ死んでやろうかとか今飛び出したら楽になるのか?と考えてばっかだったけど…
いつからか、自殺もせずに他人も殺さずに老衰か病気で死ぬ時に初めて自分を褒めようと思ったんです。

よく頑張ったね 私

って。





そう…
私はこの患者の考えに否定もしなければ肯定もしなかった。

理由はどうあれ、この患者のある意味前向きな姿勢をカルテに書き留めた。






拝啓

貴方様へ

お手紙読みました。

こんな風に私達が手紙でやり取りするなど

あの頃の私達にとっては考えもつかない事ですね

少しは貴方の事を許せたのかしら?

私は相変わらずですよ

貴方の間違った行動のお陰で私は今もあの頃の酷い記憶の中で生きています。

貴方が文面で謝罪の言葉を書いたってあの日あの時貴方がした行動が私の未来、今を奪った事には変わりありません。

でも、貴方も苦しんだんですね

貴方があの日間違った行動に至るまでに歩んだ

人生が貴方を狂わせたんですね

貴方のお母様から全部話を聴きました

涙ながらに貴方の事を許してほしいと

土下座までされていました。

そして、貴方から毎月送られる手紙と慰謝料。

もう、いりません。

これからは母親をちゃんと大事にして

生きていて下さい

本当は貴方をナイフで滅多刺しにしても

気が済まないぐらいですが

貴方は貴方が罪を犯した事を忘れず

毎日を苛まれて生きて生きて生きて生きて

死んだほうがマシだと思う事が

私の貴方に送る精一杯の復讐です。

今年も8月が終わりますね…

私もあの蝉の様に大空を舞う事が出来れば…

元気いっぱい羽ばたく事が出来たら…

いいえ。

これは私の独り言です。


では、貴方様もお元気で。




そして






元気に生きて生き延びて

どうか…どうか…







生きてる事に後悔して下さい。
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