そして私は

胸ぐらを捕まれ友に罵倒されました。

「何故、あんな事をした?!」

私は、ただ、ただ驚きを隠せませんでした

だって今日の貴方は烈火の如く怒ってらして、その形相はまるで鬼の様だ。

いつもの貴方は静かで落ち着いていて
あまり表情を出さない存在感の薄いお方だってのに今日の貴方ときたら…

友は私の胸ぐらを掴みながら俯き、こうポツリと呟いた

「どれだけ心配した事か…」

あえて私が行った愚かな行為は此処には書きませんが、この友の様子を見ると
その涙は嘘では無さそうです

成る程。
そうすると、普段から貴方が私に投げかけているあの優しい言葉も嘘では無かった様です。

私は元来、人を信じない性格なので正直
貴方が投げかける言葉は同情、又は己の優しさに酔っている馬鹿な人間の台詞だと思っていましたが馬鹿で間抜けなのは
私の方だったようですね。

この世の全てに嫌気が差し人間の裏の裏を見ては腹の中で罵倒し罵倒され全てにおいて疲れた私にこの人間のこの友が
また、そっちの世界に私を引っ張ってくれた。

「二度と…二度と…こんな真似はするな…」

友は私に体重を乗せる様に泣きながら抱き着いた

貴方が流すその涙は美しく輝いて私の真っ暗闇な世界に光る一筋の小さな小さな光になり…そしてまた私が生きる意味も
貴方が教えてくれました…






噺。

さぁさぁ、お客様、どうぞどうぞ此方へお座り下さい

今日は一体どの様な御相談で?

え?相談では無い?

では何故此処へ?

成る程。只々、話を聞いて其の質問に答えて頂きたいと?

解りました。

私が解る範囲でしたら教えて差し上げましょう。

では、どの様な御話を?

ふんふんふん。

この世にに天国又は桃源郷は在るのかと?

成る程。

私が知っている知識でお客様に仰るなら
貴方達、人間の心に天国と地獄は宿ります。

他が決める訳でも無ければ己自身の心で
生きてる境遇が天国にも地獄にもなると言う訳で御座います。

そう言う意味では貴方様の心の中に桃源郷も地獄も在るのです。



此れで御満足頂けましたか?

では。

満足頂けたのなら早く元の世界に御戻りなさい

貴方は今日、此処に来る予定では無いから早く御戻りなさい

何をそんな素っ頓狂な顔をなさっているのです?

若しかして貴方は御自身が仕出かした事に未だ気付いていないのでは?

そうか…そうか…

貴方は未だ御若い。

貴方は未だこの世界にいたら駄目なお方です

ですので、此れだけは言わせて頂きます















死ぬんなら自分の人生全うしてから死ね










そこで僕は目が覚めた。

目の前には蛍光灯が付いた天井、白いカーテン、点滴液、そして泣き腫らしたのか疲れ切った両親の顔。

そうして気付いた

そうか…そうか僕は…














フラッシュバック

嫌だあああああああああああああ!!!

またフラッシュバックだ

アレよアレよと私の頭の中でぐるぐると
どうでも良い事からトラウマになった事までゴチャゴチャと思い出す

私はその場で頭を抱え込むが私の脳みそは黙っててくれない

最近は、特に寝る前になるとゴチャゴチャ思い出す。
寝る事が恐怖になった。

私はリスパダール液と言う頓服を飲んで
暫く自分を落ち着かす。

この薬はよく効く…

暫くすると眠気が来る…

ふわふわふわふわ

やっと何も考えないで眠いと言う感覚だけが私を支配する

この感覚だけを頼りにベッドに倒れこむ

何も考えずにボーッとしてるだけで寝れる私はあの日あの頃よりはまだマシかもしれない

うつらうつらと眠気が来てやっと何も考えずに目を閉じた。


…。





空になったリスパダール液の隣に眠剤、缶チューハイの残骸があった。

そうまでしないと寝付けない私という肉体はこれまでどんな人生を歩んできたのか私がもし生きてたら貴方達に教えてあげる。

もし、私が生きてたらの話だから話の続きはあまり期待しないでちょうだい。










青い空

雲を見つめこう思った。

死にたいなぁ…

まるで吸い込まれそうな空

真っ青で雲は真っ白でとても綺麗で

何もかも許されそうな空だった


私は唄った

泣きながら

私は唄った

あの時の悲しい記憶をメロディーに書き換えて

ふと気付くと真っ青だった晴天は怪しい曇り空に変わり私の頬にポツポツと雨が当たった

それはどしゃ降りになり辺り一面を濡らし私の体も全身ずぶ濡れになった

それでも私は唄った

あの時の後悔を口ずさんで。

私は唄った

あの日の貴方の諦めた表情

私は唄った

貴方の気持ちに気付けなかった私

私は唄った

そして貴方が貴方を殺した日を

私は唄った
震える声で唄った

何も気付けなくてごめんなさい…

どしゃ降りの中、地面に跪く少女の姿を見て彼は何を思うか…



























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