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はるまに!@+
今日、翔太さんに会った。
礼拝堂で久しぶりに、会えた。
翔太さんは、いつもとおんなじように、俺の事を見つけると、手招き…してくれた。
その手招きがあると、
「来て良いよ」
って、許してもらえたようでホッとする。
カトリック科じゃない俺が、自分から礼拝堂に行っておいてこんな事、思うのも、おかしいのって、わかってる。
でも、入ってもいいのだと、いてもいのだと許しが欲しい。ゆるしてほしい。
だから、翔太さんの手招き、安心するの。
…うれしい。
でも、その気持ちに伴う陰り。
どうしていいか分からない、陰り。
…… ああ、翔太さんの前だと上手くやれてないなって、自分でもよくわかる。
いつもみたいに、うまくやれない。できない。
言葉も目のやり場も、理性も、迷子になったみたいで何もかもが竦んでしまう。
色んな、いろんな、俺の中の色んなものが、こんがらがってしまう。
そんな俺を見て、困らせたくないのに、困った顔する翔太さん。
ほら
今日は、特にそうだった。
このほっぺ、何があったかなんて訊かれなかったけど、でも、酷く悲しそうにしていた。
差し出された手にも、反射的に、過剰に、びっくりして、余計に…。
何も、誰も、悪くない。悪くないよ。手が、向けられると、打たれるんだって思ってしまう。
いつだって、そうなの。だけど、いつもなら、うまくやりすごせるんだけど
…本当に、今日はダメダメだった。
だって、だって
見返りを求めない
「コレを…」 どうして?
あの瞳と
「お前に、」 どうして…
あの声で
「……はる」 …、…
とてもとてもきれいな十字架を、
…ひどくひどくきれいな温もりを…
与えて、くれたから。
どうして、どうして俺なのか。 たった数回、会っただけの、お互い何にも知らない、俺に。
どうしてこれを?
なんであんな、こと…
……
考えれば考えるほど、想えば想うほど分からなくて、悲しくて、不安で怖くてこわくてこわくて苦しくて、でも、…うれしくて、あたたかで、
…そして…愛おしくって、泣きだしそうだった。
「ありがとうございます」
俺はその一言が精一杯、もう、逃げるみたいにその場を去ってしまった。
一体何しに行ったの?
翔太さん、困らせに行ったようなものじゃない。
でも、…コレは…。
… ……、ああ、もっと、
もっともっと、 …居たかった。
もっともっと、言葉を交わせたら、
でも、でも、 ダメだよ。
ダメなものは、ダメなんだ。
つづく…
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