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はなちゃんのたまごやき おしまい+
テーブルに上に置かれていたのは、『大好きなお父さんへ』から始まるはなちゃんのお手紙と、伏せられた食器たち、そして3切れの卵焼きでした。
お父さんは、お手紙に並ぶはなちゃんの文字を大事に読んで、そしてはなちゃんの用意してくれたご飯に手を伸ばしました。
食欲などありませんでした。むしろ、お腹の中で悲しみと罪悪感が膨張し、今にも吐き出しそうなほどでした。
でも、はなちゃんの作った卵焼きを見た途端、ぐぅとお腹が鳴ったのです。
『おいしいか、…わからないけど』
そうお手紙に書かれていた、はなちゃんの卵焼き。
ぱくっとかじると、懐かしさを感じる優しい甘さが、お口の中いっぱいに広がりました。
お父さんは、箸を止めることなく、3つに切り分けられた卵焼きを一気に食べてしまいました。
「はなちゃん、おいしかったよ」
箸を置き、おごちそうさまと手を合わせた時、また、お父さんの目に涙が浮かびました。
悲しみの無い、温かな涙でした。
今日は、あの子に甘えようかな…
お父さんは鼻をすすり、お薬を飲んで、またお布団の中へ潜ります。
「ありがとう、はなちゃん」
ほぅっと頬を赤らめて、まるで子猫のように丸くなり、はなちゃんの優しい卵焼きの味を思い出しながら、お父さんは柔らかな眠りについたのでした。
おしまい。
*BGM*
「smile(piano)」youtu.be
ついき はあと書きです。
ここまで読んでくださって
ありがとうございました。
ついき
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