話題:自殺



私はとても醜く、
何の取り柄もなく、
生きる価値のない人間だと思っているから。

自殺願望なんて、
小学生の頃からあった。

母親には虐待され、
父親には捨てられ、
学校では苛められ、

社会に出ても、
まともな人間関係を築けない。

こんな人間に、
生きる価値などあるだろうか?
生きていく意味があるだろうか?

何故、生きねばならない?

何故?

そう、ずっと思って生きてきた。

今も、そう思って生きている。







昔、働いていた会社で、
何故か自殺の話になった。

当時の私は、
それなりに人間関係を築けていて、
職場の女子達とも、仲良くしていた。

みんな普通に可愛くて、
普通の家庭で育った、普通の子たち。

それでも、死にたいと思うことはあったと、
自殺を考えたこをはあったと、
みんながそう言った。


失恋したからー
恥をかいたからー
仕事で失敗したからー


そんな理由ではあったのだけれど・・・。




その中に、一人だけ、

「今まで生きてきて、一度も死にたいなんて思ったことない」

と言う子がいた。
彼女は不思議そうな顔をして、こう続けた。


「なんで自殺したいなんて思うんだろう。信じられない」





彼女は、目を瞠るくらいにキレイな子だった。
背は低いけれど、スタイルも悪くない。

私は、芸能人以外で、
ここまでの美人を見たことがなかった。
本当に、キレイな子。
キレイなのに飾り気もなく、嫌味もなく、
素直で、サッパリした性格の子で、
社内のみんなから一目置かれていた。


聞けば、
父親は銀行のお偉いさん。
市内の一等地に家があり、
広い土地もあり、
別荘も持っている資産家。

家族とも仲が良く、
大切に育てられ、
何不自由なく、暮らしてきたらしい。

「今日は両親の結婚記念日」
「お兄ちゃんの誕生日に何を買おう」

目をキラキラさせて、
嬉しそうに話す彼女を、何度も見た。



ここまで、完璧に揃ってしまうと、
もう、嫉妬の感情すら湧かない。

ただ、ただ微笑ましく。
そんな彼女を眩しく見つめるだけで・・・。



神様は不公平だと。

世界は何一つ平等ではないと。

そう実感するだけだった。





自殺を考える人間は、
満たされない何かを抱えた人間だけだ。

全てを満たされた人間が、
死にたいなどと、思うはずもないのだ。









最近、またよく自殺のことを考える。

初めて死にたいと思った小学生の頃から、
騙し騙し、理由をつけて、
ここまで生きてきた。

もしかしたら、私にも何か出来るかもしれない。

人生を、変えられるかもしれない。

そんな、希望を抱いて。
生きてきた。


それでも、やっぱり何も変わらない。
自分なりに頑張ってみても、
頑張って目標を作ってみても、

どこか、冷めた自分がいて。
いつも、虚しさを感じている・・・。




もしも、
私が彼女のような容姿をしていても、
きっと私は幸せにはなれず、
死にたいと思う人生を送っただろう。


彼女は、容姿が美しいだけでなく、
環境のすべてにも恵まれ、
きっと彼女自身も努力をし、
沢山の人を愛し、
沢山の人に愛され、

あの彼女が創られたのだから。

何かひとつ欠けても、
彼女にはなりえなくて。




だから、
私は彼女のようにはなれず、
彼女のようには生きられず、


うじうじと、
つまらないことに悩み、
つまらない人生を送り、


きっと、

つまらなく、死んでいくのだろう。




努力で変えられるものもあれば、
努力ではどうにもならないものもあり、

私が欲しいものは、
努力で手に入るものではなく、

私は、
この虚しさから解放されることはないのだ・・・