Twitterで募集したアンケートお題でのお話です。
アーニメインのお話が書きたくてやったのでした←
フィアとアーニは仲が良いです。
というか、アーニがフィアのことを崇拝しているので……
アーニは世間知らずの天使。
まだ地上にもなれていない無邪気な天使です。
フィアはそれを心配しつつも、自分一人で生きていけるようになってほしいと思っているのでした。
そんなわけで追記からお話です!
柔らかな光が降り注ぐ。
穏やかな春の陽射しが常に降り注ぐ空間。
そこは、少年が幼い頃から住み続けていた世界だった。
そこはいつでも穏やかで。
そこはいつでも晴れた空。
満ちる空気はおだやかでかつ柔らかく、甘い花の香りを纏っていた。
今も忘れ得ぬその景色。
今も忘れ得ぬその雰囲気。
底が、彼の……アーニの生まれ育った世界だった。
空の上。
天上の世界。
天使たちの住む楽園……天界。
そここそが、アーニのすべてだった。
仲間は優しく。
家族はおだやかで。
不安も恐怖も何もかも、存在しない世界だった。
その場所が、アーニにとっては心地よい空間で。
まさかそこを追い出されるような事になろうとは、思わなかった。
***
美しい世界。
そこに一人の天使が"昇って"きたのは、ある日のことだった。
美しい亜麻色の髪。
凛としたサファイアの瞳。
真白の衣装がよく似合う、男装騎士だった。
第二子であるためにかつて地上に下ろされていたその天使の名はフィア。
地上では騎士の一人として活躍し、仲間を、世界を救うためにと最強の力を解放した美しい天使だった。
聖天使となりうる人物。
しかし彼……否、彼女は天使たちに拒否された。
拒絶されたのだ。
ごく僅かに堕天使の魔力が流れていると。
彼の血のつながった兄が堕天使であると。
それ故に彼女を聖天使として認める訳にはいかないのだと。
可笑しな話だとアーニは思った。
だって彼女は確かに聖天使として相応しい力を有しているのだ。
しかし一人の、子供の天使が何か言ったところで変わることなどない。
しかも、フィアは自分から、天界を降りていってしまったのだ。
美しく、高貴な天使。
その姿はアーニの目に焼き付いて、消えなくなった。
もう一度会いたいと。
そう願い、地上に降りて……翼を失ったのだ。
地上でであった悪魔に攻撃され、翼をもがれたのである。
***
翼をなくした天使は、もう天界にはかえれない。
すっかり弱ってしまった彼を拾ったのは、他でもない、フィアが所属している騎士団だったのである。
地上は知らないことだらけだった。
魔術もほぼ使えない。
翼を失ってしまった、それは天使として失格といわれるものなのだけれども……
「アーニ」
優しい声で呼ばれる。
顔を上げるとそこには亜麻色の髪の"少年騎士"の姿があった。
美しい、憧れの騎士フィア。
その姿を見てアーニは緩く笑う。
「あぁ、フィア様」
「その呼び方はやめてくれないか」
落ち着かん。
そういって頬をひっかくフィアは少し顔を赤くしている。
そんな彼を見て、アーニは笑みをうかべながら、言った。
「でも貴方は僕にとってあこがれの存在……天使たちにとってあこがれの存在なのですよ」
「……俺は堕天使だ」
肩を竦めるフィア。
それを聞いてアーニは少し困ったような顔をする。
「大人たちはそういっていましたが、貴方は確かに……」
「……お前と同じだ、"完璧"でないから、天界にいられないんだ」
きっぱりとフィアは言う。
それから彼は視線をアーニの方へ向けて、言った。
「きっと、お前が天界に帰れることもないのだろう。
……そうなると、お前はこれから、この世界で生きていかなければならない」
それはきっと、簡単なことではなかろう。
"落とされた"天使はそういう。
真っ直ぐに、サファイアの瞳で彼を見つめながら。
「今は俺たちが守ってやれる。
お前はまだ、この世界にまったく慣れていないからな。
けれど、いつまでもそういう訳にはいかない」
静かな声でそういうフィア。
アーニはゆっくりと瞬きをして、そんな彼を見つめた。
フィアはそれを見つめながら、続けて言った。
「お前が一人で生きていかなければならないんだ。
天界のように、危険がない場所ではない。
……わかるな?」
「……えぇ」
あぁ、彼はこの世界での現実を知っているんだ。
そう思いながら、アーニは静かに頷いた。
「……そうするしかないことは知っています。
だから、どうぞ……」
―― 今は僕のことをお守りくださいね。
そういって微笑むアーニ。
フィアはそれを聞いてふっと微笑んだ。
「わかっているさ。
何も知らない子供を置き去りにするような冷血漢ではない」
任せておけば良い。
そういいながらフィアはアーニの頭を撫でてやったのだった。
***
此処から先は、一人で生きていかなければならない。
傍にいてくれる”仲間”はおらず、天使という存在を狙う人間もいる世界で、生きていかなければならない。
そのことはよく、知っていた。
大丈夫。
きっと、大丈夫。
そう思い、自分を励ましながら天使は顔をあげた。
―― ここから先は一人で ――
(一人でいきていかなければならない。
一人で前を向いて進んで行かなければならない)
(不安がないといえばウソになる。
けれどももう、天界には帰れないのだから仕方ない)