*都市伝説創造怪談シリーズ第伍譚。
*喪失を埋め合わせようとするお噺。
*悲しみと傷痕は同じ色をしている。


―…昔々、影を無くして彷徨い続けた少女がいたらしい。



【:†影送りの怪・影子さん†:】



(あなたの影を下さいませ)
(消えてしまった私の為に)


理不尽に投下された悪意が
平穏の全てを焼き付くして

出来上がったのは悔恨と悲哀
その傍らで佇む擦り切れた私

よく晴れた青空の下で
家族と影送りをしたの

きっとあの時に私たちの御霊は
空へ昇ってしまったのでしょう

瞬きもせずに壱から順に数えたら
手を繋いだ影が私たちを見下ろし

どこか寂しげに微笑んでいた
その意味が今やっと分かった

あの頃に在った私の本当の御霊は
既に青い空のお花畑に旅立ったと

此処に在るのは焼き付いた残影
生きたいと願った私の未練の形

生きながらに苦界に曝された
様々な想いが混ざり合った黒

無くなってしまった私の分身
埋め合わせる術無く泣き崩れ

青空に縫い付けられた傷痕に
消えない悲しみが重なり合う

失ってしまった存在の形と
生まれてしまった虚無感を

いつか埋めてくれる新しい影を
いつまでもここで待っているの


(よく晴れた青い空の下で)
(壱から拾を数えて影送り)

(空に昇った残像は時を越え)
(悲しみは満ちて染みて行く)

(欠けてしまった想いの形を)
(その場所で待ち続けながら)


『―…ねぇ、私と影送りしましょう?』





はい。皆様こんにちは〜。
都市伝説創造怪談シリーズ第伍譚です。
『影送りの怪・影子(カゲコ)さん』は、場所に憑いている遭遇系の怪奇です。
基本的に影子さんのテリトリーに入らなければ、何の害もない…シリーズ内でも比較的温厚な存在だと思っています。
題材にしたのは、小学校の教科書に載っていたお話です(←今も載っているのか疑問ですが)。子ども心に人の死を活字で見て、一番印象に残っていた作品ですね。
今読んだらきっと泣けると思います←

設定としては、影子さんは戦時中に死んでしまった少女です。原爆投下等の惨劇で、生きながらに壁や地面に焼き付いてしまった影の思念から生まれた怪奇ですね。
自分の影は焼き付いてしまってその場から動けないので、動ける形を持ちたくて他人の影を欲していますが、本当は誰かと遊びたがっている寂しがり屋さんです。

ちなみに、召喚法は影子さんのテリトリーの中で『影送り』をすることですが、影子さんに影を取られると、その人は近い内に死にます。影子さんと遊ぶと影を返して貰えるので比較的良心的ですが、影子さんからの遊びの誘いを断ると、二度と影を返して貰えないので、興味本意でやらないことをお勧めします。
(※ホラーフリーゲームで言うと分岐ですね。ゲームだと下手をすると詰む可能性が有るので、こまめなセーブが必要です)

『どう頑張っても絶望』タグはギリギリ回避出来そうな怪奇ですが、遭遇しないことが一番ですね。お気を付け下さいませ。


ではでは、今回はこの辺で☆


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