*彼岸の後の秋の夜長の怪奇譚。
*水音と輪環に纏わる擬奇怪音。
*ぐるりと廻って暗闇へ堕ちる。
*一寸先は闇よりも暗く紅い道。
【:暗闇の淵から滴り落ちる怪音:】
『流れるモノは廻る術を宿している』
『流れぬモノは暗い業を孕んでいる』
『這い出した手の行方は何処だろう』
『拭いたいのか抉りたいのか彷徨う』
◆
(ピチャ、ポタッ、ポタッ、ポタリ)
(滴り落ちるのは異形な色の浸出液)
月の光すらも届かない宵闇の水面から
崩れた輪郭の縁へと滴り落ちる音の波
歪に丸く描かれた水滴の環は廻廊の中
重なり合って情念の濁色を深めて往く
井戸の底、壁紙の裏側、台所のシンク
辺りに散った記憶の残滓は爪を立てて
(ポタリ、ポタポタッ、ピチャンッ)
(滴り落ちるのは異質な色の漏洩体)
手首の静脈、頬の上、歪んだ笑顔の端
癒えずに残る傷痕は耐えず紅を流して
揺れる水面崩れる虚像と壊れた日々と
染み込んで沁み付いて滲んで往く穢れ
浄化は消えて濁って澱む血染めの羊水
産み落とされる前に流されて丸く廻る
(ボタボタ、ビチャリッ、グチャリ)
(滴り落ちるのは異端な色の和合水)
瞳の裏側、臓腑の底、開いた足の最奥
何処にも還れずに何処までも続く環の
千切れない鎖と根付いた因果の種子は
消える術も持たずに陰影を深く刻んで
頸を掛ける縄、足首の枷、薬指の鬱血
黄泉路に響く水音は冥土の水先案内人
溶けて垂れて滴り流れ着く紅は黒へと
色を変え情を違え現世に怨みを孕んで
爛れた輪郭から溢れ出た暗闇の呪詛は
丸く重なり滴り落ちて奈落の口を開く
◆
『環は絶えず因果を巡り輪廻を結ぶ』
『流れぬモノは色濃く濁り歪み生じ』
『死色の紅を垂らして滴らせて笑む』
『水音は獲物を狩る極上の蜘蛛の絃』
◇
はい。皆様こんにちわ♪
最近一気に寒さが増して来たのに伴い厚手の洋服を少しずつ引っ張り出してます燈乃さんです。
寒い雨の日は身体の動きが鈍くなります(ヲイ)
そして記事を更新する度に『お久し振り』が常套句になりつつあるのが悲しいです(←遠い目)
あー……時間が欲しい。自由時間が欲しいっ!!
新しい仕事を覚えるのに一杯一杯で、息抜き用の時間配分が上手く行かなくて軽く瀕死です(爆)
そんなこんなで。更新速度が亀よりも遅くなってしまっている今日この頃ですが、綴りたい創作文は未々沢山頭の中で燻っているので、少しずつでも消化して行きたいですね。道程が遠いなぁ←
さてさて。前置きが長くなって仕舞いましたが、今回は夜長怪談企画の擬奇怪音譚『異』になります。水音と水滴と環(輪)に纏わる擬音のお譚。
日々の生活音の中で一番耳にする音と、音の怪談に纏わる共通点で多いのは『水音』かなぁと言う個人的な発想から生まれた擬奇怪音譚です。
一括りに『水音』と称していますが、『水音』に纏わる擬音と言うのは、もしかしたら擬音の中でもかなりの数を占めているのではないかと思われます。で、その『水音』の擬音の数だけ、或いはそれ以上の怪談・奇譚が在るかも知れません。
天気ならば雨。場所ならば河川・海辺・湖沼。
家ならば水回り。一番身近なもので自分自身。
(*鼓動は筋肉の収縮音ですが、それも含めて)
水の近くに怪談は付き物ですが、改めて掘り下げてみると妙に納得してしまう点がチラホラ(笑)
そもそもな話。人間自身が怪談(怪奇現象)を受信(或いは発信)しやすい構造になっているらしいので、その辺は中々に因縁とか皮肉めいているなぁとも感じるんですがね。陰陽の分け隔てなく。
あとは『厄を流す』と言う風習。よく河川や海辺ないしそれに類似する場所で執り行われますが、あれも『流れるもの=水』の概念から来ているので、逆に『流れずに留まる厄』と言うモノがあれば、それはさぞかし恐ろしい事なんだろうなぁと思います。その辺の風味も入れてみました〜。
取り敢えず何が言いたいかと言いますと、夢現に部屋の中で水音を聞いた時の不可思議感が半端無かったです。生首が投げ捨てられるイメージなんて、部屋の中で湧くモノじゃないんですがね←
ではでは、今回はこの辺で☆
*