*匣(密室・空間)にまつわる怪奇譚。
*都市伝説の中で囁かれている現象。
*カラーバーと砂嵐の向こう側の闇。
*深夜に告げられる誰かの訃報の譚。
*明日の犠牲者は○○の皆さんです。



【:†四角い匣の怪奇・伍†:】



(どうか誰かそうだと言ってくれ)
(これがただの『悪夢』であると)


丑三つ時に生まれ来る怪電波は
此処とは違う場所を映す産声で

好奇心で渦巻くなら尚更のこと
己の中に奇怪なモノが蔓延ると

その脳に刻み込まれるだろう
誰かの弔いを告げる声が響く

積み重ねられた現実の残骸の
その上に浮かぶ見知らぬ名前

閉ざされたのは現への帰り道で
足掻けど藻掻けども生き止まり

開演のベルは心停止の音に似て
凍った背筋から絶望が這い寄る

思考乖離の迷宮で手招きする
赤黒い異形の虚空が開かれた



四角く区切られた液晶の羅列は
此処とは違う場所を結ぶ装置で

高画質で多機能なら尚更のこと
現実ほど非なるモノが棲まうと

その目に焼き付けるのだろう
誰かの訃報を告げる幕が開く

垂れ下がった極色カーテンの
その向こうに見知らぬ廃棄場

開かれたのは夢現の最果てで
捨てられて棄てられた玩具箱

画面は一寸先の闇を引き寄せる
不吉は此処に手繰り寄せられた

砂嵐の隙間から浮かび上がる
無数の残像から喝采が上がる



無作為に射止められた運命は
臨時の終身宣告に挙げられて

流れて行く名前無機質な数字
生きて来た軌跡は手折られる

訃報を告げる死刑宣告を
誰も知るよしすらもない

白塗りの奇人はケラケラ笑う
滑稽で残酷な原稿引き裂いて


『次はそうだな画面の向こうの君だ』
指差し耳元で最終警告画面が歪んだら


白の字で埋め尽くされた名前が
砂嵐に呑まれて絶ち消えて逝く


(御愁傷様でしたここで臨時放送です)
(明日の犠牲者は…オヤスミナサイ…)


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続き>>>介錯的解釈文+あとがき。


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