2010年8月22日 16:44
そんな晴れた夏の日〔ジョニー〕

猛暑うだるこの暑さ
彼はいったい何処に行ったのだろうか

(あいつ捜せば‥)

そうだ、彼を探せばきっと

(涼めるっ‥!)

そう思った俺はやっていた作業を適当に片付け、頭の中で思い描いた人物を探し始めた

まずは教室を
「‥ま、いないわな」

次に校庭
「一年坊主達は元気だなぁ‥」

次は長家
「ここも空振り、か」

じゃあ、合同練習場
「‥‥‥‥‥‥大量の蛸壺」

もういっそ木と草原の隙間
「っ!?‥しゃ、斜堂先生!脅かさないで下さい」

まったく何処にいるんだか、さっぱり分からない
汗が伝う感覚がひどく不快に思い、少し疲れてきたのでちょっとした木陰にしゃがみ込み休憩をとる
探しているうちに水筒の水もなくなり、少しだけ苛々してきた

「あぁっもう!!いつもならウザいぐらい目に付くっつーのに‥!!」

何だってこんなに見つからない、もうかれこれ一刻は過ぎた
独特の土と日向の匂いを纏い、細身に見えて存外、逞しく力強い体躯でくるくると跳ねるその髪の毛を今日は一度も見かけていない

「‥‥とりあえず水汲んでこよ」

ワシワシと頭を掻き立ち上がると一番近い井戸へと歩き出す
ふと裏山の沢は涼しいことを思い出し水を汲んだら行ってみようと思い立った

(最初からそうすりゃ良かった‥あほくさ)

途中で自室に戻り、手拭いをとり井戸へ向かう
汗で張り付く上着や肌襦袢を適当に日向に放り出し頭巾を外して、汲み上げた水を服に掛からぬように頭から被る

「あ゛ぁーーっ気持ちいいなぁっくそー!」

フルフルと水を浴びた顔を振ると意味もなく叫ぶ、手拭いで適当に拭った後は手拭いを濡らし体を拭くと汗でじっとりとしていた体も少しはスッキリしたようで先程よりは苛つきも収まってきた

「‥と、忘れるところだった」

本来の目的の水筒を水で満たすと放置していた服を拾い上げる
一連の動作にさして時間は掛かっていないにも関わらず、汗で湿っていた肌襦袢はカラリと乾いているのだから、今日はよほどの暑さであることが分かる
校庭で遊んでいた一年生達が倒れないか不安になったが近くで同室の友人が目を光らせていたようだから、問題はないだろうと次の目的地へと足早に歩き始めた

裏山へ続く林にはいると木々が陽を遮るお陰か学園内にいるよりも涼しかった

(あ‥打ち水すればよかった)

出て来てから思い出してしまうがここの涼しさを知ってしまうと戻るのも億劫で、より涼しさ求めようと沢へ沢へと歩みを進めた

程良い木漏れ日が暑さとは違った温かさをもたらして、木々の脇を縫うように吹く風が心地よかった

(学園内じゃ、うるせぇのにここで聞くと風流なもんだな)

じぃわじぃわ、といつもは煩い蝉の声すら涼しく感じられるのは自然のなせる技だと思い知りながら、沢の近くまで着くとふいに自然には馴染まない色が沢の大きな石の上に見えた

「あんの野郎!あんなとこに居やがったっ!!」

それは今日一日探していたはずの人物で
ガサガサと音を立てながらそばに寄ったにも関わらず、自分の相棒を上着を被せ、石に立てかけて、のうのうと仰向けで寝ているのだから忍びを目指すものとしては失格である

「たく、気持ちよさそう寝やがって」

しかし、当初考えたように彼は涼しいところにいたことは確かで自分の考えたこと自体は間違ってなかったなぁ、と石に寝転がる彼の髪を軽く梳く

「‥ん、むう」

何かが触れた感覚は気付いたのか、眉間に皺を寄せて寝返りを打つ

「はっ?!馬鹿!落ちるっ!」

慌てて彼を支えようと体が動くもその体勢に無理があった
努力空しく未だ寝ぼける彼と共に浅い川に浸かることになった

「おーい‥勘弁してくれよ」
「ぅむう、冷たい‥?」

起きあがる気にもなく腹の上に乗る彼の背を軽く叩くも彼は状況が掴めないのか掴む気がないのか、目をゴシゴシと擦っている

その姿を見ていると何だかどうでも良くなって『ああ、明日も晴れるんだなぁ』とか考えた

そんな晴れた夏の日




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今回は別に×じゃなくて+なイメージでかいてみました
あえて名前は出しません




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