2009年9月3日 22:41
食満先輩の受難<五年留> (キサキ)

一周年&二万打アンケート企画のコメントにて『五年×留』との記述があったので、早速挑戦してみました。
久々知は初めてだし雷蔵もほぼ初めてだしで、ぶっちゃけまだちゃんとキャラクター掴めてない感じですが、まぁ大目に見てやって下さい(´・ω・`;)

五年生が食満先輩大好き!なお話です。

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食満先輩の受難



 食満先輩お暇ですか?
 長屋へと続く廊下を歩いている途中、そう鉢屋に声を掛けられ、何やら嫌な予感がして否定の意を口にした。じゃぁちょっと付き合って下さいと腕を引っ張られて、着いた先は五年長屋。
 …あれ?俺ちゃんと暇じゃないって否定したよな?


「喜べ諸君!スペシャルゲストを連れてきたぞ!」
「え、まさか豆腐?」
「兵助、豆腐はゲストになんねーだろ」
「この場合、豆腐はお夜食になるんじゃない?」
「なるほど。気が利くな三郎!」
「でも豆腐かよー。もっと景気いいモンなかったのか?」
「お饅頭とか?中身はこしあんがいいかな。でもつぶあんもいいなぁ…」
「いや待てお前ら。豆腐でも饅頭でもないから。人の話よく聞こうね?」

 では改めて、と咳払いをひとつ。

「本日のスペシャルゲストは!修理修繕後輩の扱いならお手のもの!我らがアイドル(?)六年は組食満留三郎先輩ですっ!」

 スパーン!と、半分ほどしか開けられていなかった部屋の戸が一気に開け放たれた。それに因って、丁度戸に遮られて見えなかった部屋の中部が顕になる。
 中にいるのは久々知に竹谷に不破、といういつもの面子。床の上には蝋燭が数本、円状になるように立てられていた。
 はっきり言って―――否、はっきり言わなくてもその光景は不気味すぎる。

「やっぱり帰…」
「でかした三郎!」
「ナイス人選!」
「やれば出来るじゃないか!」
「いや、俺は帰…」
「だろー?やっぱこういうのには盛り上がりが必要だからな!」
「いや、だから俺は帰りた…」
「こんなことならもっと気合い入れてネタ仕込んどけば良かったーっ!」
「食満先輩、こっちこっち!俺の隣空いてますっ!」
「ちょっと待って!ここは正々堂々じゃんけんでしょう!」
「「「「じゃーんけーん…」」」」
「お前ら人の話聞けよっ!!」
「「「「…ぽんっ!」」」」
「ィよっしゃあああぁッ!」
「えーと、八左ヱ門と三郎の間?」
「三郎、今遅出ししなかった?」
「え?何のことかな♪」
「………マジで帰るぞ‥」

 しかし、踵を返そうとしたところで鉢屋と竹谷の二人に物凄い勢いで捕まった。両腕をがっちりと組まれて。
 そのままずるずると引き摺られて部屋の中へ。用意された座布団の上へ座らされて、俺はもう逃げることを諦めた。

「…つかさ、何で五年の中に俺が混じってるわけ?明らかに場違いだろ」
「何を仰る!言ったでしょう。先輩はゲストなんですよ」
「僕たち今から百物語をするんです。まぁさすがに蝋燭を百本も用意は出来ないんで、一人一話なんですけど」
「あ、先輩は話を聞いて下さるだけで結構なんで」
「よーし、じゃぁ怖がった食満先輩に抱きつかれたヤツが勝ちな!」
「勝ち?百物語で勝ちって何!?」
「えー、それ俺たち不利じゃん」
「そうだよ。僕たちは先輩の隣じゃないだよ?」
「あ、んじゃ先輩真ん中どうですか?」
「やめて!何か居たたまれないからやめてっ!!」


 …そんなわけで。何故か俺は、五年連中に巻き込まれてしまったのだった。
 既にツッコミ疲れた俺を余所に、百物語はスタートする。



「では一番、久々知兵助行きます」

 それは、とある暑い夏の日のこと。食堂のおばちゃんは今晩のおかずにと大量の魚を仕入れました。
 そろそろ調理を始めなければならない時間になって、おばちゃんは気付きます。
「あら、これじゃぁ薪が足りないわ」
 おばちゃんは慌てて食堂を出ていきました。…戸が開け放たれたままなのにも気付かずに。
 少ししておばちゃんが戻ると、何と魚の数が減っているではありませんか!しかし、それだけではありませんでした。同じく大事な大事な今晩のおかず・豆腐には、見るも無残な獣の足跡が付いていたのですっ!

「猫か」
「猫ですね」
「おい待て兵助」
「ん?」
「それ…怖い話じゃなくない?」
「何を言う!踏まれて潰れたその豆腐の末路を考えてみろ!俺たちに食べて貰えず血肉となることも出来ずに棄てられるんだぞ!?どうだ怖いだろうっ!!」
「……お前、どこまで行っても豆腐基準なんだな」


「では、気を取り直して二番!竹谷八左ヱ門行きます!」

 それは、とある夏の夜。一年生の子が廁へ向う途中のことでした。就寝時間はとっくに過ぎているので、当然辺りに人はいません。
 しかし、背後から何者かの気配を感じます。その一年生は立ち止まり、恐る恐る後ろを振り返りました。するとそこには…!

「何と!のっぺらぼうが立っていたのですっっ!!」
「あー、ごめん」
「…んぁ?何だよ三郎、話の邪魔すんなよ」
「それ、俺」
「は?」
「だから、そののっぺらぼうっての、俺なの」
「はぁ!?」
「ちょっとちょっと、どういうこと三郎?」
「いやーお使いから帰ったらさ、びくびくしながら廁へ向う一年が見えたもんだから、つい…」
「驚かせたくなったって?」
「まぁそんなところ〜」
「……なぁ鉢屋」
「はい?」
「もし今度可愛い後輩たちを怖がらせたらどうなるか…勿論分かってるんだろうな?」
「はひ!?」
「…先輩、笑顔なのが逆に怖いです…」


「え、えぇと、じゃぁ三番。不破雷蔵行きます!」

それは、とある寒い日のk

「キャーッ!」
「ぐふっ!?」
「「「三郎オオォオォッ!!!!」」」
「僕まだ何も話してないんだけど!?」
「っていうか『キャー』とか気持ち悪いからっ!」
「つか離れろ!今すぐ先輩から離れろッ!!」
「いや〜雷蔵の話が怖くて思わず先輩に抱きついちゃった☆」
「だからまだ何も話してないってば!」
「だって先輩全然怖がらないじゃん!こっちから抱きついた方が早いって!」
「だってじゃないっ!」
「いや、今までの話の一体何処に俺が怖がる要素があったってんだよ!?」
「いいから先輩からはーなーれーろーッ!」
「いーやーだーッ!」
「ちょ、お前ら腕引っ張んな!痛い!マジで痛いからっ!」

 右からは鉢屋。左からは竹谷。お互い反対方向に引っ張るもんだから、かなり腕が痛い。こいつら俺の身体を真ん中から真っ二つに引き裂く気かってくらいに痛い。特に竹谷は一学年下のくせに相当な馬鹿力の持ち主なもんだから、半端なく痛い。つまり痛い。

「いい!お前らもう離れなくていいから!くっついてていいから喧嘩すんなっ!!」
「え?」
「へ?」
「ん?」
「お?」

 言った瞬間、一斉に集まる俺への視線。

「な…何だよ?」
「離れなくていいんですか?」
「え、あぁ?」
「くっついてていいんですか?」
「ま、まぁ…?」

 四人は顔を見合わせてニヤリと笑った。
 …限りなく嫌な予感がする。

「「「「では、失礼します」」」」
「はぃ?…って、うわあぁっ!?」

 右に鉢屋、左に竹谷、正面に久々知、真後ろに不破。
 がっしりしっかり四方からくっつかれて、身動き出来ない状態にされてしまった。
 …いや、確かにくっついてていいとは言ったが!


「先輩、今日はこのままで寝ましょーか?」
「この体勢で眠れるかーッ!」



 こうして、珍しく賑やかな五年長屋での夜は更けていくのでした。



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竹谷と鉢屋が割りと本気でアプローチしてます。書いた人の趣味で(´∀`)bグッ
しかし誰がしゃべっているのか分かりにくい仕様…。

実はこれ、昔回答したバトンのネタを持ってきました。
『五年×留』のコメントを見て思い出したので。



どうせなら四年×留とか三年×留も書きたいなァ。
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