2009年7月22日 07:57
貴方への挑戦権<竹留> (キサキ)

相方がひとり長留祭りを開催している隙にコソリと竹留を間に挟んでみる。
そして密かに拍手も変えときました。コレの続きっぽいのです。
※拍手ログはこちら。

竹谷は男前で格好良いと思うんだ。うん。
…何故か話にそれが反映されてないけど。

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貴方への挑戦権



 あぁ、言った。言ってしまった。あんなにも必死に隠し通してきた想いを、その場の勢いだけで全てぶちまけてしまった。
 全てとは言っても、要約すればたったの八文字。
 されど、八文字なのだ。


『あ な た が す き で す』


 この八文字に、一体どれほどの想いが込められているか。ほんの少しでも、食満先輩。貴方に伝わりましたか?
 好きなんです。誰よりも。
 好きなんです。どうしようもなく。
 言ってしまった瞬間、口を滑らせた己の馬鹿さ加減に頭が真っ白になったけれど、一旦口から出てしまったものを押し戻すことなんて出来やしないし、混乱した頭じゃ上手く誤魔化すことだって無理で、もうこうなったら覚悟を決めてしまおうと真っすぐに先輩の姿を見つめた。
 先輩は何か考え込んでいるようだった。ということは、脈はあるのだろうか。少なくとも、即座に拒否されるよりは。
 でも、先輩優しいからな…特に後輩相手だと。だから、もしかしたら俺を傷つけずに断る方法を探しているだけなのかもしれない。
 そんな風に考えていたものだから、次の先輩の一言は全くの予想外だった。


「三日くれ」
「……は?」
「三日後に返事する」


 それだけ言うと、食満先輩は「これから委員会があるから」とさっさとその場を後にしてしまう。俺だけが一人ぽつんと残されて、三日とはどれくらいの長さだっただろうかと暫らくの間立ち尽くした。
 それからの三日間は、ほとんど何も手に付かない状態だった。テストじゃ大ポカやらかすし、実技じゃらしくないミスを連発するし、課題は忘れるしでとにかくもう散々。
 先輩の言う『返事』が気になって、はっきり言ってそれどころじゃなかったんだ。
 ところが、実際に三日経ってしまうと、今度は返事を聞くのが怖くなった。
 食堂に行く時間を皆とずらしてみたり、休み時間は教室から一歩も出ないようにしたりして、とにかく先輩との接触を避けて回った。情けないけれど、身体が勝手に逃げを打ってしまうのだから仕方がない。あぁもう俺の意気地無しッ!
 けれど、この狭い学園内じゃ当然逃げ切れるはずもなく…。


「竹谷!」
「けっ、食満先輩!?」
「お前、あんまりうろちょろするなよ。探したじゃないか」
「…探した?」
「おう。結構探した」

 先輩が俺を探してくれた。そう考えただけで胸の辺りがぽっと熱くなった。
 だって、その間は先輩、ずっと俺のことを考えていてくれたってことだろ?
 あーヤバい、滅茶苦茶嬉しい。俺、先輩のこと好きすぎだろ。

「あのさ、三日間考えたんだけどな」
「は、はいっ」

 恥ずかしいことに緊張で声が裏返った。先輩が小さく笑う。

「よく…分からないんだよな」
「……はい?」

 よく分からない、とはどういうことだろうか?それは「はい」という意味か「いいえ」という意味か。どちらでもなかった気がするが、その場合、俺への返事はどうなるのだろう。

「いやさ、今んとこお前のことは可愛い後輩としか思えないんだけどさ」
「…可愛い後輩‥ですか…」

 『格好良い後輩』の方がまだよかった。可愛いじゃ駄目だろ。
 俺はがっくりと項垂れる。

「でも、全く脈がないわけでもないんだ」
「………………え?」

 脈がないわけでもない…ないわけでも……つまり、それって脈があるかもしれないってことか!?
 俺はがばりと顔を上げた。目の前には、俺の大好きな先輩の笑顔がある。

「そこで、だ。もし、お前が諦める気ないんだったらの話だが」
「ないです!全然ないですっ!」
「だったら…」

 先輩の笑みが、優しいそれから相手を挑発するような、挑戦的なものに変わった。
 その目がこちらを真っすぐに捉えて。



「俺が卒業する迄に、俺を惚れさせてみろよ」

「―――……っ」



 あぁ、ヤバい。
 やっぱ俺、食満留三郎先輩が大好きだ。
 …いや、違う。
 もっともっともっと。
 先輩のこと、大好きになった。


「先輩」
「うん?」
「絶対、俺のこと好きにさせてみせますから」


 取り敢えず挑戦権は得た。後はただ、一直線に挑むのみ。
 「楽しみにしてるよ」と言って先輩が笑った。



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ただ後輩に告白された留さんに「俺を惚れさせて〜」と言わせたかっただけです。
はじめは後輩を作兵衛にしようかなーと考えてたんですが、横から竹谷が乱入して役目奪っていきました。
相手が作兵衛だった場合、留さんの対応もまた違ってくるんだろうな。
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