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それは…何の気無しに出た言葉だった…はず… それとも…本当はずっと知りたかった事だったのかしら…? 展望室で…隣に並び、星を眺める彼の横顔にユキは一つの疑問を投げかけた… 「怖く…ないの?」 と。 戦いになると率先して飛び出していく彼。 でも、勇気があるとか…戦闘班長だからとか…そんな言葉だけじゃ片付けられない狂気じみたものを感じる事が時折あるのも事実で… だから聞いてみたかったのかもしれない… 「そんなに無茶ばかりして、怖く…ないの…?」 彼の無茶が勝機をよぶ事もある…これもまた事実。 でも…だからこそ私達はあなたを失いたくない… (私は…失いたくないの…あなたを…) なんて自分勝手な私の想い… みんなが死と隣り合わせのこの旅に…私情でただ一人の無事を願うなんて… ユキは己の言葉に恥じ入るかのようにそっと目をふせた…。 「怖いとか…言ってられないだろ?」 はっきりと。 でもどこか自分に言い聞かせたかのような… そんな微かな迷いを気付かれただろうか…? ガラスに写る、自分の顔を叱責するかのように睨みつける。 「…それに…俺には何もない…」 まるで…自分にとどめをさすかのように… 自らの傷口に塩を塗るような言葉をガラスに映る自分に投げつけた。 暗く、未来から目を背けようとしている瞳がガラスの向こうからこちらを向いている… 改めて自分の中に確かに存在する闇を自覚すると… まるで未練を断ち切るかのように目を閉じた。 暗闇が心を…想いを、支配する… (何を今さら迷うって言うんだ…) (そうだ!父も母も…兄さんも死んだ…誰も俺の帰りなんて待ってはいない…) 「何も無いからこそ俺はおくする事なく戦場に飛び出していける…」 「何も無い事が俺の強さだ!」 再度、前を睨みつけると… ガラスの…自分の顔に向かって宣言する 「そう… でも…とても悲しい強さだわ…」 …彼は驚いたような顔をして振り向いた。 さっきまでの、強い意志を持っていた瞳が途端に動揺したものへと変わる… どうやら途中から私の存在を忘れてしまっていたらしい… …彼の中では私の存在なんて…本当に小さなものなんでしょうね… それでも願わずにはいられない… 彼の…絶望と背中合わせの心を少しで良いからも癒してあげれたら…と… (どうか…悲しいこの人に生きる希望(理由)がみつかりますように…) 「!」 突如聞こえてきた声に驚いた。 なんてこった…彼女の存在をすっかり忘れていたなんて… (………) どこかで…遠い昔に見た、懐かしい眼差しで俺を見ている彼女… 寂しげだけど…どこか暖かい眼差し… あれは…誰だったのか…? 視線を…ガラスに写る自分へと戻す。 悲しい強さ…彼女はそう言った… (悲しい…悲しい…か… そうかもな) 不思議と…彼女の言葉がストンと自分の心に落ちてくる。 これが島や他の奴だったらどうだったのだろう…? 闇が…確かにあると確信した闇がどこか遠くに離れていくように感じるのは気のせい…か…? それは…彼女のせい…? (………) 誰もいない…自分… …でももし、この先俺に新しい家族ができる事があるとしたら…その時は… …まるで…何かに導かれるかのように、古代の視線は隣に並ぶ彼女に向けられた… ------------------------------------------------ オリジナルのPart1の二人です。 |