話題:いままで と これから。

二回泊まって尚何も出来なかった私に、誘いを掛けたのはひーちゃんの方だった。
んー、我ながらなんと無く情けない。

朝起きて水を飲んだ私がベッドに戻ったらぎゅうっとくっついて、
「今夜も一緒に居たいです」って。

ホテルのフロントに電話して連泊の旨を伝えたら快く承諾してくれた。
一度一日分の食料を買いに出ただけで、あとはホテルに戻ってまったりしていた。
……ひーちゃんが、一緒にお風呂に入りましょうって言うまでは。
ビックリして口から心臓が出るかと思ったけど、とりあえず頷いた。

一緒にお風呂に入っていちゃいちゃして、ベッドに戻ってからもらぶらぶして…と、18禁になりそうな話はまた別の機会に。


その時、私はひーちゃんに対してちょっとした疑いを持ってしまっていた。
誰とでもこんな風に、すぐにコトに及ぶのかって。
可愛くてふわふわしてるなぁとは思ってたけど、まだひーちゃんの事を全然知らなかったから。

それから一週間、毎日逢っては毎日肌を重ねた。
ひーちゃんはセフレが欲しかっただけなのかと思い始めた頃、コトに及ぶのが普通になりつつあった頃、ひーちゃんが唐突に私に聞いた。
「瑛さん、私と瑛さんの関係って何ですか?」
私は曖昧な事しか分からなかったから、
「ひーちゃんはどんな関係になりたいの?セフレ…なのかな?」
って聞き返した。

ひーちゃんは目を潤ませて首を振って
「瑛さんの恋人になりたかった」って。

恋人なら順序が有るだろうし、肌の相性は知ってても中身はお互いあんまりよくわかってないよね?って返したら、
最初はセフレでも良かった、一目惚れだったから。でも、触れ合う内にどんどん好きになって、セフレじゃ足りなくなっちゃった。順序は違うけど、私と付き合って下さい。
泣きながらそんな風に言って嗚咽混じりに細い肩を震わせてるひーちゃんが愛しくなってしまって。
「私も出来れば恋人になりたいって思ってた」って言ったら、また泣いちゃって。

暫く抱き締めて背中をトントンしてたら漸く泣きやんで、
「順序が逆になっちゃってごめんなさい」
「毎日逢ってたら瑛さんを独り占め出来ると思ったの」
まだ少し鼻をぐすぐすさせながらそんな風に言われて。
見事っていう位に心を鷲掴みにされて。

私は顔がユルユルになっちゃって、ひーちゃんを思いっきり撫で回してずっと伝えたかった事を伝えた。

「初めて逢った時から一目惚れで、ずっと好きだったんだよ。恋人になりたいって思ったのも、独り占めしたいって思ったのもおんなじだったよ。ずっと言えなくてごめんね」

ひーちゃんはまたちょっと泣いて、でも嬉しそうに笑ってくれた。
その日、初めて心もくっついたまま寝た。


次の日、即行で合鍵を作りに行って渡した。
それから今に至って。
これからもひーちゃんの寝顔は独り占めしたいし、ずっと大事にしていきたい。
あの頃からずっとずっと大好きだから。
いや、…あの頃よりも、もっと大好きだから。