帝都は植物と鉱石の混じった建築が並び、昼夜を問わず活気に溢れています。直線状に並んだガイトウノキが夜毎ぱっ、ぱっ、と燐光を上げて一夜限りの花を咲かせるため、夜も驚くほど明るいのです。
皆様はご存知ですよね。わたくしが田舎より出てはじめて皇都に来たときに、祭でもないのに明るくて喧噪に溢れる都会を目の当たりにして腰を抜かさんばかりだったことを。皇都の夜はじわりとして湿度と熱があるのですが、帝都の夜はどこまでも乾いています。それでいて爽やかです。
わたくしは夜歩きの楽しみを得ました。冬場は外出もままならなかったのですが、今の季節は夜が最も爽やかになる季節だそうです。
だからこそ、住人達は飲み、歌い、歓談し、また孤独を愛するために触れ合うのでした。

そんな折に見付けた珈琲店は、珈琲とともにピアノの演奏も味わえるという趣向でした。