フランとわん太はクロムに会いました。クロムはベンチに座り、呆けた顔で町並みを見ています。彼は友達であるセレネの用事が終わるまで待っているのだそうです。

「クロムさん、クロムさんはまほうつかいですよね。まほうでわん太とお話することはできますか?」

 クロムはフランとわん太を交互に眺めました。

「その犬と話せる様になりたいの?」

「そうですそうです! わん太はあたしの友だちなんです。だからおしゃべりできたらきっと楽しいと思います」

「そっか。って言っても、オレも修行中の身だから、大体の大まかでざっくりとした意思しかわからないよ。それでもいい?」

「かまいません」

「じゃあ早速」

 クロムは袖からお札を取り出すと、呪文を唱えてわん太の頭上に浮かべました。お札はクルクルと回ります。
 フランは固唾を飲んで見守っていました。
 しばらく無言のまま時が過ぎ、ややあってクロムが頭を掻きました。

「ああ、しまった。この犬の言葉はフェンデルク語だから、オレにはわからない」

「クロムさん、しっかりしてください! あなた今ちゃんとしゃべれてますよフェンデルク語!」

「日常会話なら聞き取れるけど、細かい文法でしかも早口となるとちょっと……」

「まってくださいクロムさん、わん太ってそんななんですか!?」