「ちおりん、どんど焼きをするわよ!」

真冬だろうとなんだろうとルカは元気だった。マフラーとコートの裾を靡かせ飛び込んで来る。

「何ボサッとしてんの!? 神社に行くわよ!!」

「寒いからイヤ」

突き放すように答えれば、ルカの口角が弧を描いた。

 ※ ※

それで結局、オレ達は神社に来ていた。境内ではあちこちに火が焚かれ、人だかりが出来ている。オレは焚き火に手をかざした。

「こんなに寒いのに外出だなんて」

隣から即座に声が返る。

「鍛え方が足りないのよ!」

思わずジトリとした目になってしまう。なんでこいつは真冬だろうと真夏だろうと元気なんだ?
さっき家を出るまでの攻防を思い出し、そっと溜息を噛み殺す。「今日は一日中あんたとのんびりしたい」と囁いたら指差して笑われた。解せぬ。
火の粉が爆ぜる。燃えているのは門松やしめ縄などの正月飾りや、書き初めだ。数日前にルカの下の弟イサクが回収に来たから、自宅のそれも一緒に燃えているはずだった。